「今の私は、藤林すずであって藤林すずでない存在、伊賀の藤林長門守の擬似サーヴァントとして呼び出されたのです。」
「擬似サーヴァント?」
アーチェと凛は、すずの言葉を聞いて少し困惑した。
「はい、サーヴァントは本来
ゴーストライナーというのは、早い話が人類の歴史を映画とした場合その一部分を抜き取って形にした存在というわけである。
クラスについても、その英霊がどんな逸話があったかという部分で当てはめられ、例えるならば鉄砲や銃の名手らがアーチャー、殺し屋がアサシンとして当てはめられるということだ。
「そんなサーヴァントの形もあったなんてね、ある意味英霊の座の裏技か...」
元々サーヴァントがどのようなものであるかという知識のある凛は、その説明を聞いて納得をした表情をした一方で、アーチェには別の疑問が浮かんでいたようで。思案げな表情を浮かべ口を開いた。
「でもすずちゃんは、藤林長門守としてその霊基を調整してる訳なんでしょ?すずちゃんとしての人格はあるの?」
「本来ならば、英霊と依り代の人格を足して2で割った別の人格として呼び出されることの方が多いのですが、今回は私、藤林すずの人格をベースとしてもらいました」
「すずちゃんの人格を?」
「その辺りの決定権は、英霊と依り代の間で決められるところもあります。最も神霊クラスになるとその限りではないですが。」
「そうだったのね......じゃあサーヴァントも呼び出せたことですし、教会に報告に行きましょうか。」
それを見届けた凛は2人に話しかける。
「いや、今日は薬草の調合してからもう寝るつもり。これから用意してくる。」
そう言うとアーチェは、棚から手慣れた手付きで鍋や薬草を用意しようとする。
一方その言葉を聞き、ようやく遅れて理解した凛は、「はぁ!?」と声を荒げて眉間にシワがよって興奮して怒っていた。
「ちょっと待ちなさいよアーチェ!サーヴァント召喚して報告行かないで寝るってどういう了見なの!?私も着いていくから、これから教会に行くわよ!」
いつもの優雅さを、どこかに捨てて呼び止める凛だったが、振り返ったアーチェは神妙な顔をしていた。
「遠坂さん、確かに聖杯戦争も大事だけどね?大人って仕事も大事なのよ?ましてや何やろうにも先立つものは必要だからさぁ。」
そう言って奥に行くアーチェの背中には哀愁が漂って見えた。
「世界を救うって、友人助けに無断で仕事すっぽかしたら前の学校で問題になり転勤前に色々ゴタゴタがあってさ.....大人って面倒なのよ」
微妙に経験に裏打ちされた一言が重かった。
アーチェはなおも、凛のほうを向かずに、黙々と棚から鍋と薬草を持ち出して鍋に水を張っていく。
「.....勝手にしなさい!じゃあサーヴァント召喚は終わらせたので私はもう帰ります!」
そう言うと凛は荷物をまとめて帰っていった。
魔方陣に使った宝石を残したまま......。
「しかし、アーチェさん。本当にこれで良かったんですか?あの方大分怒ってましたけど」
「良いのよ、それに確かめたかったこともあったし。」
「確めたいこと?」
用意を終わらせるとアーチェは鍋をコンロにかけて、沸かしていた。
そして、顔だけをすずのほうに向けていた。
先程うって変わって、表情は少し不安そうになっていた。
「聖杯戦争の資料は一通り確認したんだけどさ、聖杯は東洋の英霊を召喚できないってのが大原則だし。擬似サーヴァントとは言え、東洋の英霊が来たってのが気になっちゃってさ.....細工か何かあったの?すずちゃん?」
友人を疑いたくはないが、聖杯戦争の原則から外れてる召喚が妙であったため尋ねることを決めたところもある。
そう言うと、苦笑しながらすずは口を開いた。
「やはり、アーチェさんには隠し事は出来ませんね。確かに藤林長門守の擬似サーヴァントになったのは本当です。ただし、選ばれたのはある方の意思があったからです。」
──召喚される少し前の事だった。
すずは白い空間に飛ばされて目の前に、黒い服に銀髪の青年が現れた。
直感で敵と判断し、身構えたが青年は厳かに口を開いた。
「お前が藤林すずか?」
「その通りですが、貴方は一体何者なのですか?敵というならば容赦はしません」
すずは、忍刀に手を掛けようとするが青年に止められた。
「待て、お前に話すことがあってきたのだ。そう身構える必要はない。」
「話すこと?」
「まず我が名はオーディン....アースガルズの神だ。最もお前の世界のオーディンとは違うがな。」
「オーディン、あの超古代の終末戦争ラグナロクの?」
「そうだ。そして話したいことというのはお前の友についてだ、実はある世界で召喚術の失敗の事故がありその者の魂が閉じ込められてしまった。」
「その友というのは?」
「アーチェ・クラインとミント・アドネードだ」
それを聞いて、すずは動揺していた。
「本当なのですか!?」
「信じるも信じないもおまえに任せる。だがあの2人の魂はその世界だ、しかも聖杯戦争という魔術の儀式が行われるが.....他の世界からの亡霊が介入してきているようだ。放っておけば他の世界にまで影響が出る。」
「私はどうしなければならないのですか?」
「まずお前をサーヴァント、つまりその儀式で呼び出す使い魔として呼び出すよう細工をする。通常の状態では無理だが、ある英霊の力を宿した依り代として呼び出せるようにする。そして、お前の友の魂を助け介入を完全に断ち切るのだ。」
すずはその言葉を聞いて驚いた。
「そんなことが出来るのですか?」
オーディンは軽く詠唱をすると、すずの後ろに緑と黒の装束をした忍者が召喚された。
「拙者は、伊賀の藤林長門守じゃ......本来ならば英霊にも至らぬものじゃが、お主の力になるとしよう。」
「ありがとうございます長門守様!」
すずは感謝を込めて頭を下げようとしたが、長門守は制した。
「じゃがすず殿、疑似サーヴァントは依り代側と下ろす側の人格そのままと言うわけにはいかん。両者の人格が混じった新しい人格となるがらいかがいたす?」
長門守の説明を聞いて、すずは少し考えると口を開いた。
「分かりました.....ならば、人格のベースは私でもよろしいでしょうか?アーチェさんやミントさんなら私の人格ならば安心するはずです、力をお借りします長門守様。」
「ならば決まりじゃな、オーディン殿もそれでよろしいか?」
長門守はオーディンの方を向くと確認をとった。
オーディンも頷いていた。
「藤林すず、世界の事頼んだぞ」──
「まあオーディンの機転もあったけど私を連れ戻しに来てくれたわけか、すずちゃんは」
「はい、そして聖杯戦争を歪ませようとする者を突き止めろと」
「ならお互い頑張ろう、すずちゃん!」
アーチェはすずに対して、右手を差し出した。
「改めてよろしくお願いいたします、アーチェさん」
すずは、それに応じて右手を差し出した固く握手をする。二人の絆を象徴するように。
ちなみに調合は無事成功した。
その頃別の場所では。
「サーヴァント、セイバー。召喚に応じ参上したわ」
「お主にしてはいい札を当てたものじゃな。これは期待できそうじゃの」
またある場所では。
「サーヴァントライダー.....救いの声に応じて参上しました。聖杯戦争でこのクラスとして呼ばれるとは思いませんでしたが、共に戦いましょう。マスター。」
「ありがとう。君の力を僕に貸してくれ!ライダー」
それぞれ最優のクラスであるセイバー、騎手であるライダーが召喚された。
開始まで残り4騎。
ライダーとセイバーが何者かは追い追い明かされていきます...ここまで難産になるとはおもなかった。
元々キャスター、クー・フーリンのようにオーディンの差し金である事は決めていたのですがどのように明かそうか悩みました。
次回もお楽しみに。
用語紹介
疑似サーヴァント(Fateシリーズ)
ある特定の英霊が依り代を使うかたちで現界するサーヴァント。
人格のほうは依り代と英霊が交ざりあった別の人格(例えるならばドラゴンボールの合体戦士のようなもの)となる。
ただし英霊と依り代側の話し合いによって決まることもあるらしく、依り代側の人格がベースとなることもある。
当作品では、藤林すずが該当。