運命の行く末   作:島田正二

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今回からは2日目に突入します。


第2章 嵐の前の静けさ
アーチェ達の過去


 アサシン(藤林すず)を召喚した翌日。 

 アーチェは出勤のために、荷物をまとめていたところに電話が鳴っており内心忙しい時に電話なんて何事だろう、と思ったが電話に出る。

 

「はい、アーチェ・クラインです。」

 

──もしもし、私だ。クラースだ。

 

「ああ、クラースか。どうしたの?」

 

 電話の相手は、イギリスにいた頃から組んでいた魔術師のクラース・F・レスターのことである。

 数年前にとある事情から魔術と縁を切っていたが、それでも変わらず交友は続いていた。

 

──昨晩サーヴァントを召喚するときに、私の召喚術の詠唱までいれたそうだな?遠坂凛から私に苦情の電話かかってきたんだ。

 

 クラースからそう言われて焦ったが、アーチェは気持ちを抑えながら答える。

 

「あぁ...あれね、ちょっと試したいことがあってさ。」

 

──試したいことか?

 

「サーヴァントの召喚も降霊術の一つだから、思ったサーヴァントを呼び寄せるために1小節変えて利用しようと思ってね。」

 

──ほぉ....で、結果はどうだった?

 

「もちろん、いい結果よ。」

 

──私はどのクラスを召喚したか、まで一応聞いたぞ?その結果が、アサシンか....しかし、召喚術の詠唱入れたからといって思った通りの英霊を呼び出せるとは思ってはいないよな?

 

「も、もちろん?」

 

 そのクラースの一言を聞いて、アーチェのほうは内心冷や汗が止まらなかったが、平静を保って答えた。

 

──召喚術は、特定の精霊を示す言葉を入れて始めて召喚することが出来るんだ。もし次があるとしたらもう少し練ったらどうだ?

 

「分かったわよ。あらいけない....出なきゃならないから、そろそろ切るわよ?」

 

時計を見たらバスの時間ギリギリだったため、急いで出なければならなかった。

 

──分かった。朝忙しい時間にすまないな、今回の聖杯戦争は気を付けろよ。

 

 そう言うと、クラースは電話を切った。

 少し腹を立てていたアーチェの顔を見ていたのか、すずが心配そうに話しかけてきた。

 

「アーチェさん、誰からの電話でしたか?」

 

「クラースよ....何もこんな忙しい時間に電話してくるなって思うわよ」

 

 ぶつふつ文句を言いながら、荷物を準備するアーチェに対してすずは少し考えると声をかけた。

 

「クラース....というと、クラース・F・レスターのことでしょうか?」

 

「そうよ、こっちだとあいつ科学者やってるの。意外でしょ?」

 

「クラースさんが科学者ですか....」

 

 すずはアーチェの言葉を聞いて、頭のなかで点と線がつながらずうーんと考えていた。

 

「すずちゃん、この町の偵察行くなら途中まで一緒に行かない?」

 

 準備が出来たようで、バッグとスーツに身を包んでいた。

 

「そうですね、私も色々聞きたいことがありますから...この世界のことや、アーチェさんたちのことも」

 

 そのことばを聞くと、慌てて家を出てバス停までまっすぐ行く。

 大体歩いて10分、バスにはなんとか間に合い席にアーチェは座ると念話で話し始めた。

 

「まああたし達なんだけどさ、魔術協会っていう組織に所属してたのよ」

 

「魔術協会....たしか、魔術についての法や研究の中心となっている組織でしたよね。」

 

 魔術協会については、中心となっている組織が3つほどある。

 イギリスのロンドンの時計塔、エジプトのアトラス院、所在不詳のバルトアンデルスである。

 

「その中でも、イギリスの時計塔に所属してたんだ。イギリス隠居生活していたあたしをクラースのやつが引っ張ってきてさ....しがない研究者だったあいつが、恩師のために実験を成功させたいから助手として雇いたいって言ってきてたのを聞いて、変わり者だったけど友情とかのためにってところで協力したいと思ってあたしは着いていったわけだけどね。」

 

それを聞いてすずは、笑いながら

 

「アーチェさんらしいですね、その後どうしたんですか?」

 

 と言い、アーチェもさらに続けた。

 

「それからは、決して予算とかの不足もあったけど、時計塔内で精霊種との契約と召喚術の研究続けて、契約も成功、軌道には乗ってきたんだ。でも、順風満帆とは行かなかった」

 

「順風満帆じゃなかった?」

 

「10年前、つまり前回の聖杯戦争で当時クラースが客分として所属していた派閥の当主ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが死亡して、その後釜を狙う魔術師同士の暗闘に否応なく巻き込まれてね。一時的にエルメロイ派閥内で大勢力となったユグドミレニアって勢力に入ったの」

 

「そのユグドミレニアというのは?」

 

「北欧神話の世界樹ユグドラシルとミレニアムを合わせた、ダーニックって魔術師が自分の血筋がいつまでも続くようにと願って作ったお家だったんだ。千年黄金樹なんて言ってたけど、中身が伴わなければ金メッキよあんなもん。」

 

 しかし仕方なく身を寄せたが完全にクラースを屈服させることで召喚術の技術をごっそりもらい地盤固めをしようとしたダーニックに目をつけられてしまう。

 幸いユグドミレニア内でも、若手の育成もあり何人か弟子は取ったもののクラースの一派を完全に潰そうと動いたことでダーニックと敵対し結果としてユグドミレニアを弱体化させてケイネスの親類だったライネス・エルメロイ・アーチゾルテ及び彼女の代理を推薦することに成功した。

 

「まあこの一件で勢力争いに嫌気が射して、ユグドミレニアを離反し親友のいるこの日本へと渡って研究を続けていたの。」

 

「ならばどうして科学者になったんですか?」

 

 そう聞かれると、アーチェは申し訳なさそうな気持ちになって答えを言った。

 

「あることがきっかけで、研究を捨てざるを得なかったんだけどさ.....ただ親友の研究を続けるために、あるコネ使って科学省に入って科学者になったってわけ。」

 

「クラースさん、らしいですね。友人のためか....」

 

「ちなみにあたしが表向き教師になったのは、たまたま日本に先に来たときに出会ったある先生に感銘を受けたからよ、日本も生活が豊かになっても児童虐待やネグレクトはあったから。思いやりや正義ってやつを教えてすこしでも心豊かにしたいっておもったの」

 

 まあガラッと世の中が変わるなんてそこまで自惚れちゃいないけどねと、言ってアーチェは笑った。

 話がはずんでいくうちに、バスは駅へと着きすずはデンサンタウン方面へ、アーチェは秋原町へと向かう。

 

「正義と思いやり....子供たちにもしっかり届いているかな?」

 

 アーチェは、改めて教師生活を振り返って呟いた。

 すずにこそ言わなかったが、感銘を受けた教師は妹の手術費を工面してくれた恩を返すためにネットワーク犯罪組織WWW(ワールドスリー)の協力者となっており、情状酌量はあり無罪放免とまで行かず監視付きらしい。

 自分も断腸の思いで、彼を問い詰めて正義とはなんだと悩んでいる。

 

「生きている限り悩みは付き物、考えることを止めたらそこで終わりだ」と言われたこともある。

 まだ悩みについては、答えは出ていないがいずれ自分なりに答えは出すべきだと思っている。

 

 思い返しているうちに、電車は秋原についた。

 

「さて行きますか!」

 




用語紹介

魔術協会(TYPE-MOON作品)

魔術の研究、発展だけでなく魔術世界の法を司る機関で神秘の秘匿の違反などを処罰することもある。
キリスト教のカトリック派の裏組織である聖堂教会とは、水面下で争っている。

時計塔(TYPE-MOON作品)

魔術協会のなかでもロンドンの時計塔を本拠地とする勢力で、魔術の研究と勉学を主とする機関。
複数人の権力者同士の権力争いもあり、油断できない。(お茶会で毒を盛られた魔術師もいるほど)
上層部はともかくとして、個人の交遊は派閥関係なく上手くやっている人物達もいる。

当作品世界のクラース達はここに所属していたが、クラースのみ魔術師を廃業したためクラース一派の時計塔への窓口はアーチェとミラルドに移管した。



ユグドミレニア(Fate/Apocrypha等)

ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアが中心となって、フォルヴェッジ家、ムジーク家、アイスコル家など複数の魔術師の家系の集合体。
ファミリーネームにユグドミレニアを用いている。
由来が北欧神話の世界樹ユグドラシルとミレニアムから取られているため、黄金千界樹とも呼ばれている。
ただし、第3次聖杯戦争をダーニックが勝った世界線にしか存在しないため、別世界線でのダーニックの消息は不明。

当作品では、ダーニックが創設したもののアイスコル家は断絶。ムジーク家とフォルヴェッジ家は、エルメロイ派閥の争いで離反しているため、かなり弱体化してしまった。

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