TS金髪碧眼ロリになったのでVTuberを始めたら、ママさんの超絶有名美少女イラストレーターが家に突撃してきて「一緒に暮らそ?」と言ってきた。

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TS金髪碧眼ロリは甘やかされたい。

 

「え? 何これ……」

 

 俺の名前は手江洲(てえす)はじめ。三十二歳のおっさんだ。

 朝起きたら金髪美少女になっていた。

 ベッドから降りて、洗面所で顔を洗おうとした瞬間、自分の姿が変わり果てていることに気がついたのだ。

 

「こ、これは…………俺の好みドンピシャだ!」

 

 鏡の中の、ダボダボの服を着ている美少女が驚いた顔になる。

 多分歳は十四歳くらい。胸は……成長途中で多分Bくらいだろう。

 

「な、なんで美少女になってるんだ? まぁいいか……いや、これ夢じゃないよな」

 

 ほっぺたをつねってみる。結構痛い。

 

「夢じゃない……のか」

 

 衝撃的な出来事に現実感がないが、でも痛いってことはこれは夢じゃない。

 ぐっ、と拳を握りしめる。

 

「この夢見たいな状況、前からずっと妄想してたことをやるしかない……!」

 

 今日、美少女になった俺は改めてそう決意を新たにしたのだった。

 

 

 

 

 そして、二ヶ月が経過した。

 勤めていた会社は辞めてきた。

 元々ブラックだったのだ。この姿だと出社できないし、未練はない。

 

「会社も辞めてきたことだし、今までずっと妄想してきたことをやるぞ……!」

 

 パソコンの画面には、二次元のアバターが映っていた。

 

「VTuberに、俺はなるぞ!」

 

 ブラック企業に長年勤めていたせいで使うこともできなかった貯金を、豪快に使って、神イラストレーターや有名なモデリングをする人に頼んだ。その他諸々の機材も全部購入した。

 これが大人買いだ。見た目は中学生だけど。

 アバターは俺と見た目そっくりな、金髪碧眼、歳は十四歳くらいの美少女だ。

 

「正直に言って、このアバター……」

 

 画面に映る、制服に身を包んだアバターを見て、俺は唸る。

 

「めちゃくちゃ神だな……!」

 

 お金を湯水のように使って作ったアバターだけあって、めちゃくちゃ出来がいい。企業勢と呼ばれる企業が用意しているアバターにも負けないくらいの出来だ。

 

「ママさん、納品する時めちゃくちゃ興奮してたな……」

 

 ママさん、というのはこのアバターを描いたイラストレーターさんのことだ。アバターの生みの親、ということでママと呼ばれている。

 そのイラストレーターさんと細かい希望を口頭伝えるために何回か電話したのだが、全部めちゃくちゃ興奮していた。

 特に納品の時は「今まで一番の出来だわ!」と言っていた。ちなみにママさんは女性だ。

 機材を使わないということで、幾つかVTuber活動に使えるものを送ってもらったので、ママさんには頭が上がらない。

 

「そういえば、声がめちゃくちゃ若かったけど……もしかして大学生いや、高校生とか……はは、まさかな」

 

 ちょっと声が若かっただけだろう。いくらなんでも高校生はありえない。

 

「よし、それよりも自己紹介動画作るか! あ、その前にSNSのアカウントを作って……」

 

 SNSでアカウントを作って、自己紹介の言葉とさっき撮っておいたアバターのスクリーンショットをあげておく。

 俺のVTuberとしての名前は『古森(こもり)るみ』だ。

 

「よし、次は自己紹介動画を収録して……」

 

 そう言ってパソコンの前に座ろうとした瞬間、ポン、とスマホの音が鳴った。

 さっき投稿したSNSの通知音だ。

 

「おっ、早速反応来たのか。どれどれ……って──え?」

 

 スマホの画面を見て、俺は固まった。

 通知はママさんがいいねとリツイートを、そして俺のアカウントをフォローをしたものだった。

 

「ま、まだアカウントがどれか知らせてないのに、こんな爆速で見つけれるなんて……!」

 

 俺がママさんのサーチ力に恐れ慄いていると、俺のアカウントはフォロワー五十万人の神絵師にリツイートされたことにより、とんでもない勢いで拡散されていた。

 ポポポポッ、と聞いたことがないほどの勢いで通知がスマホにやってくる。

 

「うわっ、すご!? まずい、この拡散が続いている間に自己紹介動画を投稿しておかないと!」

 

 多分、ママさんのこの拡散は最初のお情けで拡散してくれたのだろう。

 なら、今乗るしかない、このビッグウェーブに……!

 

「うおおおおっ!」

 

 それから俺は、爆速で自己紹介動画を撮り、編集をして動画投稿サイトに投稿したのだった。

 

 

 

 

 翌日。

 

「な、なんだこれ……」

 

 俺はSNSと、動画投稿サイトを複窓で開いた画面を見て唖然としていた。

 

「フォロワー二十万人に、チャンネル登録十万人!? なんだこれ、俺は企業勢じゃないんだぞ……?」

 

 まだ自己紹介と画像くらいしかあげてないのに、まるで企業勢と同じくらいの伸びだ。

 まさか何か炎上が!? とも考えたのだが、SNSにも動画チャンネルにも、『めちゃくちゃ可愛いです!』『ママさんから来ました!』と肯定的なコメントがたくさんついている。

 なんなら一時期SNSのトレンド一覧に入っていたようで、『新人で個人勢なのにこれは快挙!』として、さらに注目が集まっている様子だ。

 

「あれ、これママさんがめちゃくちゃ拡散してくれてるのか……」

 

 ママさんのアカウントを遡ってみれば、昨日からずっと俺のアカウントを宣伝してくれていたようだ。

 

「昨日はお情けで拡散してくれただけだと思ったのに……なんでこんなに協力してくれるんだ?」

 

 アバターがめちゃくちゃ力作だったからだろうか。

 そんなことを考えていると。

 ピンポーン。

 その時玄関のインターホンが鳴った。

 

「ん? 宅配便かな」

 

 俺は特に深く考えず、玄関まで向かって、ドアを開ける。

 

「……え?」

 

 しかし、そこに立っていたのは配達員などではなく──女子高校生だった。

 しかも、とんでもなく美少女の。

 彼女のイメージを一言で表すなら、クールが当てはまるだろう。

 黒髪ロングの、キリッとした目が俺を見ている。

 息を呑むような美貌、という言葉が彼女には当てはまるだろう。

 なんでこんな美少女が俺の家に? と疑問に思いながら無言で見つめ合うこと数秒。

 黒髪の美少女が口を開いた。

 

「手江洲はじめちゃん、だよね?」

「は、はい、そうですけど……って、その声!?」

 

 その声には聞き覚えがあった。

 俺のVTuberのアバターの絵を描いたイラストレーターであるママさん、その声にそっくりだったのだ。

 

「も、もしかしてママさんのmina(みーな)先生……?」

 

 ふるふると震える手で、目の前の女子高生を指差す。

 

「やっと会えた!」

「えっ、ちょっむぐっ!?」

 

 すると女子高生は俺にいきなり抱きついてきた。

 

「ほ、本物だぁ!? やばい、めちゃくちゃ可愛い! 参考として送ってもらった画像を見せてもらった時は、こんな可愛い美少女がいるなんて信じられなかったけど、実在したんだ! 理想の美少女すぎてやばい! 死んじゃう! 金髪ロリ最高っ!」

 

 女子高生は俺をぎゅっと力強く抱きしめる。

 

「ちょっ、息が……それに胸が……!」

「あっ、ごめんね……」

 

 胸で窒息しかけていたので、慌てて腕を叩くと、女子高生は俺から離れた。

 い、いい匂いだった……。それに胸が顔に押し付けられて……正直最高だった。

 思考が犯罪者だが、今の俺は女子中学生。全く問題はない。

 

「ごめん、取り乱したちゃった」

 

 その女子高生は俺から離れる。

 そこで俺もやっと落ち着くことができた。

 

「えっと、あなたは……?」

「私の名前は水川(みなかわ)マリア。minaっていう名前でイラストレーターで活動してます。はじめたんのことは一目見た時から好きで、ずっと会いたくて……」

「ま、待って! そうじゃなくて、なんで俺の家が分かったの!? 確かに自撮りは送ったけど、ってまさか……」

 

 俺は悟る。

 

「そう、機材を送るときに、住所を教えてもらったでしょ? だから……来ちゃった」

「き、来ちゃったって」

「私ね、一目惚れしちゃったの。金髪碧眼ロリで、生意気なメスガキっぽい子、私のドストライクだから。しかも俺っ子って……最高」

「え、えっと……」

 

 マリアがさらに近づいてきた。

 俺は後ずさる。

 

「チャットでやり取りしたけど、はじめたんも一人暮らしなんでしょ。だからさ、私と一緒に暮らそうよ」

「で、でもそれは……」

「お金の心配は大丈夫。私ね、有名イラストレーターだから、とっても稼いでるの。それにさ、私と一緒に暮らしてくれるなら、とっっっっても甘やかしてあげるよ? 絶対に見捨てたりしない。どんな時でも肯定してあげるから」

「え、あの、その……」

 

 マリアは俺の耳元に口を寄せて、囁くようにそんなことを言ってきた。

 美少女になる前、女性に全く縁のなかった俺は、倒錯的なその甘い言葉で、脳みそが溶けそうになっていた。

 俺の反応でいけると思ったのか、スッ、とマリアが俺の手を握ってくる。指を絡める恋人つなぎで。

 

「私と一緒に暮らそ?」

「…………ひゃ、ひゃい」

 

 俺はついに負けてしまい、頷いてしまった。

 

「じゃあこれからよろしくね。はじめたん」

 

 マリアがクスリ、と怪しく微笑む。

 一体、これから俺のVTuber人生はどうなってしまうんだろうか。




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