森の木々がどよめく。
ぽつり、ぽつり。雨が降り始める。
薄暗く足元が不安定な道。
そこに似合わない格好の2人。手を繋いで、スカートの裾を泥だらけにして走り抜けてる。
月明かりが零れ、金色の髪をして、赤いドレスを来ている少女。白と黒のメイド服。2人の少女が駆ける2人に目が入った小さな洞穴。そこへ入り込んで。
「ここまで来れば、大丈夫でしょうか。」
白髪の少女が息を吐きながら、ひとつの洞穴へと身を休め。もう片方の少女へと目をやる。
「そう、ね。なんでこんな事になったのかしら…。ねぇ、イア…。」
金髪の少女が小さな本音を吐露してしまう。
そう呼ばれた少女は、震える彼女の小さな体を優しく抱擁する。
「なんでもありません。時間が解決してくれますよ、メアリーお嬢様。」
メアリー、そう呼ばれた少女は、顔を上げて見詰める。目の前のたった一人の従者に。
「もう、地位なんてないも同然だわ…。お嬢様なんて…。」
「では…メアリー。」
まるで、旧知の友であるかのように呼んでみる。
「イア…。私達の気持ちは、許されないんでしょうか。」
抱き締めてくる手が、きゅっとメイド服に皺を作って、少し苦しくなってしまう。
「ええ。きっと…もうお屋敷には居られませんね。」
彼女が申し訳なさそうに目を逸らしてしまう。貴女のせいでは無いと言うのに。
「メアリー、わた…」
「イア。」
ひたり。柔らかい感触と暖かい温度が、唇から伝わってくる。とくん、とくん…密着してる体から、大きい心音が聴こえる。
「私は、これでいいですわ。…貴女と最期に出会えて良かった。」
まるで最後の別れみたいに。でも、やだ。許さない。
「メアリー、貴女が死ぬのなら、最期までお供します。」
「でも、それじゃ…。」
「好きですから、だから、命を落とすのは…一緒に…」
「待って。」
また、抑止される。でも、この顔は、この瞳は…。
「では、イア…。私に、命を預けてくださらない…?」
とくん…。どっちの心音か、分からない。でも、返事は決まってる。
「はい…喜んで。」
雨が止んだ。鬱蒼とした森を抜けると
欠けた月が出迎えと言わんばかりに、照らしてくれている。
乱れきった髪の毛を整えながら歩く2人。草原の心地いい風。綺麗な月明かり。信用して、信頼しあっている2人。
命を落とすその瞬間まで、一緒の二人。
誰にも邪魔はされないこの空間で、何を思うのだろう。
国への思い。見知らぬ民への思い。
そんなものはどうでもいい。
今はただ、目の前の従者を…いえ、恋人だけに、私の気持ちを贈ろう。