ベルたちがオラリオ崩壊から世界を立て直すのは間違っているだろうか 作:フリュネの出番はもうない
外伝で世界観も広がって来たので挑戦してみた。
「【
「まだ遠くには逃げていない筈よ!?」
微かに聞こえる声につばを飲む。
姿が見えなくても確かに感じる殺気に思わず体が震えそうになって。
「……っ」
背中から、押し殺すような息の音がしたのに気が付いた。
そうだ、この人を怖がらせるようなことをしてはいけない。そう、自分に言い聞かせながら少年は己の首元に回された手に触れる。
怖がらなくても大丈夫です。
僕が守ります。
声に出さずとも伝わるようにして、すぐに失敗したと悟る。
(あ……、僕の手、今血で汚れてたっけ)
女の子をそんな風に汚すなんて。
やはり自分は気が利かない。英雄譚のようにはいかないものである。
「ベル殿、行ったようです」
「……! 本当ですか」
「ええ、気配を感じません」
そんなことを考えていると、隣で周囲の探知をしていた黒い髪の少女が追手を撒けたことを知らせてきた。
「申し訳ございません。自分の力が足りず、ベル殿に負担ばかりを押し付けてしまいました」
「気にしないでください
彼女はそう言うと、僕が背中で背負っている少女にも頭を下げる。
「春姫殿も怖い思いをさせてしまい申し訳ございません。あと少しの辛抱ですから」
「命ちゃん……」
小さく、震える声で友達の名を口にする少女の顔は見えない。
だけど、あの狐の耳と尻尾を垂れさせて、悲しげな顔をしているのだろうなと想像できてしまった。
罪悪感に押し潰されそうになっている春姫さんにどう声をかければいいのか。
分からないまま口を開きかけて。
「それより、【イシュタル・ファミリア】がいないうちに逃げちまおうぜ」
辛気臭い空気を断ち切るように兄貴分が先を急がせる。
絶望的な状況でもヴェルフはいつも通りに口角を吊り上げて見せた。
「そいつ、逃がすんだろ。ここで捕まったら全部水の泡だ」
そう、僕達は命さんの友達である春姫さんを逃がすため、この都市の外壁にいる。
春姫さんを犠牲に、殺生石というアイテムを作り出そうとしている【イシュタル・ファミリア】。
その勢力は
追手から逃れるには都市の外に逃れるしか術はないのだ。
僕達の中で一番頭のいいリリでもその結論は変わらなかった。
「壁外には人もモンスターもいません。今のうちに行きますよ」
「サポーター君、こんな暗いのに良く見えるねー。流石
「こんな時に気の抜けた声を出さないでくださいヘスティア様! リリの目は所詮レベル1の目! 上級冒険者が身を潜めていたら分からないんだから集中してください!」
春姫さんを助けることは僕と命さんで勝手に決めたことだ。
僕達を助けに来てくれた皆は、何も分からないまま巻き込こまれたのに文句の一つも言わない。
それがどうしても申し訳なかった。
「ほら、そんな顔してちゃ駄目だぜベル君」
「神様……」
「説教は後でちゃんとしてあげるからさ! あと、
静寂を切り裂く足音。
アマゾネスたちの声が近づいている。
「ゲゲゲゲゲゲゲェ! 春姫ぇぇぇええええっ!!」
あの恐ろしいアマゾネス。フリュネさんの声が近づいてくる。
「どこに行ったんだぁい!? あんな雑巾兎を連れて!」
あの人に痛めつけられた体が竦む。
けど、そんな弱気を置き去りにして僕らは壁外に飛び出した。
外壁内部に作られた部屋からだから、そこまで高さはない筈。
だけど一寸先さえ見通せない闇夜は無限に続くと錯覚。
「逃げても無駄なんだよぉ! この先のお前らの人生はずっと地獄ばっかりさぁ!」
ガツンと衝撃が走る。着地に失敗した。
春姫さんに大丈夫かと聞いたら、ただ頷く気配だけしたのでそのまま走り出す。
一刻も早く、あの声から離れるために。僕は無心になって足を動かし続けた。
この日、僕達は【イシュタル・ファミリア】から逃れるために。
オラリオ崩壊まで残り二カ月。
ゾーリンゲンの情報が出たから投稿してみた。
なおノープロットの模様。明日の自分に期待します。