ベルたちがオラリオ崩壊から世界を立て直すのは間違っているだろうか   作:フリュネの出番はもうない

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砦を再建せよ

 カーン、カーンと金槌の音があちこちから聞こえる。

 

「早く石持ってこいよ!」

「おい! 予定より遅れてるぞ! スピード上げろ!」

「馬鹿野郎! 長さがあってねぇんだよ! テメェ、壁壊してぇのか? あぁっ!?」

 

 それに負けないくらいに人々の声も絶え間ない。

 最早、怒号のぶつかり合いだ。

 

 アストレアと合流したベル達は、すぐに怪物氾濫(スタンピード)に備えなければならなくなった。

 しかし、エダスの村だけでなく、ゾーリンゲンの難民まで加えればその数は途方もない。

 

 とても受け入れてくれる国や町は思い当たらなかった。

 様々な街を渡り歩いて、少しずつ数を減らすという方法も考えたが、それではいつ終わるか分かったものではない。

 

 ダンジョンのタイムリミットがいつまでかは分からないが、決して長くないことは容易に想像できるのだ。難民自身の手で己を守る必要がある。

 

 散々議論した結果、ベル達はゾーリンゲンから南へ進み、シュリーム古城跡地に向かった。

 そこはかつて、【ヘスティア・ファミリア】が【アポロン・ファミリア】と戦争遊戯(ウォーゲーム)を行った場所だ。

 

 神時代でこそ風化し、盗賊たちのアジトになっていた場所だが、その歴史は英雄たちの時代まで遡る。

 蓋であるオラリオが完成するまでは、ダンジョンの大穴から出現するモンスターの進撃を食い止める役割を果たしていたのだ。

 

 10M(メドル)を超える城壁は易々と突破できるものではない。

 攻城戦の戦争遊戯(ウォーゲーム)を行った際、防衛側であった【アポロン・ファミリア】の手によって、要塞の補修作業は行われている。

 

 無論、攻め手の【ヘスティア・ファミリア】により、ある程度は損傷してしまっているが、十分に補修可能な範囲である。

 ゾーリンゲンの住民は鍛冶師であるが、同時に建築や物作りにも長じていたため、正に自分達向けの場所だったのだ。

 

「まさかアポロンに助けられるとは……」

「ヘスティアとしては複雑かしら?」

「そりゃあの変態陽神のことだし。要塞のどこかにあいつの石像があっても驚かないぞボクァ……」

 

 そうして到着次第、難民達はそれぞれの作業に取り掛かった。

 職人達は要塞の補修作業に。そして、元冒険者などの恩恵持ちは物資の調達である。

 

 勿論、恩恵を持たない者達も遊ばせている余裕はない。

 全員が仕事を割り当てられた。

 

「しかし……終わんねぇぞこりゃ」

 

 一緒に城壁の工事を行っていたヴェルフがぼやく。

 来る怪物氾濫(スタンピード)に備えるため、単なる修復ではなくより防衛力を上げなければならない。

 お陰で殺人的なスケジュールである。

 

 この城壁をぶっ壊しやがった奴に文句が言いたい。俺らだった。

 馬鹿みたいな思考を回しながら、作業を進めていると下から馴染みのある声が聞こえた。

 

「すいません。城の周りを掘り終わりました」

「あぁん!? サボってないで早く外堀を……もう終わったの? え、早」

 

 レベル4のステイタスを存分に活かし、他が十人以上で進める作業を一人で終わらせたと報告するベルに、さっきまで怒号を飛ばしていた建築系ファミリアの団長が真顔になる。

 

 違う場面では、食料を採取しに行った非恩恵持ちの一般人の護衛として彼らに同行した際。

 同じく山菜を集めることになった春姫が、四苦八苦しながらチマチマと籠の中に野草を入れていく横で。

 

「長期戦になるでしょうから、日持ちのいい物を中心に持っていきますよ! 冒険者さんは……」

「あっ、あっちに沢山キノコが生えていたので取ってきました。それとアケビも」

 

 どさりと籠一杯に入れられた野草やキノコ・木の実に、思わず顔を引きつらせるリーダー。

 

「そ、そう……これ全部食べられるキノコね」

「お祖父ちゃんから教えられましたから。後、ブランの木を見つけたので、釣り竿にすれば魚が釣れると思いますよ。じゃあ僕はザリガニを探してきます」

「ア、ハイ」

 

 あっという間に集まった食料に、食料班はポカンとするしかなかった。

 曰く、行って帰っただけじゃね俺達。

 

 また、ある時は城壁に使う岩を切り出すために、近くの山に屈強な男達を連れて向かえば。

 リリは巨大な岩を切り出さなければならないことに、どれだけ時間を食うのかと眩暈を起こしそうになり……

 

「おい、何かあの餓鬼スパスパ岩を斬っていってるんだが」

「はっはっはっ。ナイフでバターみてぇに岩が切り分けられてやがる……この辺の岩は柔らかいのかな(ガギンッ)あ、駄目だ硬い」

「自分で切ったの十段くらい重ねて両腕に持ってるように見えるんですが……あ、荷台までおいてすぐに戻ってきた。俺、まだ一つ目の岩も切り取れてないんだけど」

「俺達ドワーフだよな……? こういう肉体仕事が領分だよな……?」

 

 力自慢のドワーフ達の心をへし折りつつ、午前中以内での帰還を達成する。

 職人達はとても悲しそうな顔で、城壁の増設作業に合流していた。

 

 そして怪物氾濫(スタンピード)に備え、武器を大量生産するのに必要な鉱物を発掘するために向かった時に命は見た。

 

 カーンカーンカーンカーンカーンカーンカーン

 

「わぁぁぁ……希少金属(レアメタル)が一杯だなぁ。凄いなぁ()」

「こんなに簡単に集まるモンだっけ。あいつの幸運おかしくないか?」

「オラ、鉱石をこんなに集めるのに三時間はかかるんだけどなぁ。まだ十五分か。へへっ」

「ひぃいっ!? モンスターが出……あれ、もう灰になってる」

「ヤベェ、角灯(カンテラ)消えちまった! これじゃ何も見えねぇ! どうすれば「あ、これ使ってください。【ファイアボルト】」……こんな簡単に松明できて便利だね」

 

 質のいい鉱石どころか希少金属(レアメタル)や宝石をバンバン発掘して、当初よりも上等な装備が用意できることになった。

 喜ばしいが、これまでの自分たちの苦労は何だったのかと坑夫達は涙を流した。

 

 見えないタイムリミットに怯えながら作業していた一行だったが、気が付けばあっという間に準備が整っていることに別の意味で恐怖を感じていた。

 

「ぼ、冒険者とはこんなに凄い方々だったのでしょうか」

「いえ、春姫殿。普通はああはいきません。というか、何処で野草などの知識を得てきたのでしょう……?」

「あいつ妙にアイテムドロップ多かったしなぁ。ん? ってことはダンジョンいた時に発掘して貰ってれば、貴重なアレもコレも取り放題だったのか? ……ふざけろ!? やりくりめっちゃ大変だったんだぞ!?」

「ふふふ……そうですよね。ベル様は都市の外では割と有能ですからね……思い出します。初心者ぶって一緒に頑張ろう! とか言ったくせに一人置いてけぼりをくらったエルソスの遺跡までの旅路を。完全にやることがなくなって棒立ちしたあの悪夢を」

 

 【ヘスティア・ファミリア】もベルの見せた予想外の活躍に様々な反応を示した。

 トラウマを刺激されて、微妙に瘴気を発しだしたリリから距離を置きながら。

 

 ある意味未知を見せられたアストレアも苦笑気味だ。

 

「どうなるかと思ったけど……これなら怪物氾濫(スタンピード)には間に合いそうね」

「なら良かった。ボクはこういう時、役立たずだからねぇ」

「あら、難民の焚き火を一人で起こしていたのは、地味に助かったわよ?」

 

 炉の神に相応しい惚れ惚れする火起こしで、あっという間に夜を照らした絶技であったという。

 とっても無駄な神業である。

 

「まあ、余裕があるって言うなら、今のうちにやることをやろうかな」

「……えぇ。うちの眷属()達に警備はさせておくわ」

 

 そうして、ヘスティアはもう間もなく怪物の行進が始まるという予感が漂う中、眷属(ファミリア)達の更新を行うことになった。




 ここまで大変な状況が続いたけど、ベルって凄い便利な存在です。
 難民は絶対に手放したくないと思う。
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