ベルたちがオラリオ崩壊から世界を立て直すのは間違っているだろうか 作:フリュネの出番はもうない
ベル・クラネル
Lv.4
力:F301 耐久;F366 器用:G297 敏捷:F380 魔力:G226 幸運:G 耐異常:H 逃走:I
《魔法》
【ファイアボルト】
・速攻魔法
《スキル》
【
・早熟する。
・
・懸想の丈により効果向上。
【
・
アビリティ熟練度トータル1570。
相変わらずの成長率に乾いた笑いが出るヘスティア。
しかし、眷属たちの反応は鈍かった。
「割と修羅場潜ったつもりだったんだが……正直、焼け石に水な気がするな」
ヴェルフの言葉に返す者はいなかったが、全員が同じ思いだった。
これから洪水のような超大量のモンスターを相手するとなると、多少の成長は誤差のようなモノだ。
「とはいえ、その誤差こそ窮地で生死を分けます」
「ですね。……できればスキルや魔法が出てくれればよかったんですけど、虫が良すぎますか」
「私も新しい魔法が覚えられれば良かったのですが……」
全員が更新されたステイタスを確認する。
ここは玉座の塔。
先の戦いでベルの魔法によって崩壊していた建物だったが、職人たちの手で最低限の復元が完了している。
あの時のような華美な内装こそなく、大きな空間には机とその上に置かれた蝋燭だけだ。機能だけを優先された無機質な空間は、ここが命懸けの戦場だと意識させる。
この状況であっても……もしくはこの状況だからこそ、ファミリアの情報は他者に知られてはいけない機密事項だ。
それを配慮したことにより、ここには【ヘスティア・ファミリア】しか存在しない。
「ここの修復が完了したのは良いですが、そろそろ
「うん。どれだけ用意しても、きっと難しい戦いになっちゃうよね……」
ダンジョンから生まれる無限のモンスター。
まだ冒険者になってから半年にようやく届くかといった具合のベルであるが、その脅威はイヤというほど知っている。
それらから非戦闘員が千人以上いる難民達を守りながら戦う。
要塞があるとはいえ、厳しい戦いは避けられないだろう。
そう改めて考え、緊張を走らせるベルをリリはじっと見ていた。
「本当は決して難しくはないんですよ。ベル様」
「え?」
「【ヘスティア・ファミリア】だけなら……いいえ、もっと言ってしまえば、ベル様だけなら簡単に生き延びることができます」
ぎょっとした空気が玉座を漂う。
「り、リリ? それって……」
「難民を見捨ててしまえば、どうとでもなるってことです」
「リリ様それは……」
「事実ですよ。ベル様はレベル4。それも世間を騒がせた
例え平時でもレベル4の戦力は魅力的だ。
オラリオ都市外であれば、レベル4が一人いるだけでその地域の覇権ファミリアとなることだってできるだろう。
軍事国家である
将軍格がレベル3で隊長格はレベル2。
ベルと同じレベル4など、王子であるマリウス以外に名を聞いたこともない。
「確かにベルなら諸手を挙げて歓迎されるだろうな。前のゴタゴタがあっても……いや、寧ろあの諍いがあったからこそ、ベルの実力を現状どこよりも評価している筈だ」
元
家の事情で
それを疑う余地はない。
「極東でもベル殿の存在は受け入れられるでしょう。現在、群雄割拠の時代となっておりますので、国を統一したい朝廷ならばベル殿を利用して……ということも考えると思われます」
極東出身の命も同様に首肯する。
これが平常時でのベルの価値。
オラリオが崩壊し、
「はっきり言ってしまいますが、今のリリ達の動きは全く賢くありません。今は
じとっ、という視線に思わず顔を背けてしまうベル。
「どんどん難民と合流して、足手まといを増やし続けているのが現状です。こうなってしまえば、何処の国もベル様を受け入れてはくれません」
「……まあ、単純に食い扶持が凄いもんね今」
リリの言葉にヘスティアも頷く。
誰の目から見ても今の【ヘスティア・ファミリア】は不健全だ。
「既にリリ達の処理能力を超え始めているのが現実です」
「……ごめん」
リリは決して意地悪でこのようなことを言っているのではない。
【ヘスティア・ファミリア】を思うからこそ、団長であるベルに釘を刺しているのだろう。
「まあ、今から難民の皆をポーン! する訳にもいかないしね。そもそも、サポーター君の言うような計算高い動きなんてボク達できないっていうか、無理にやってたら胃に穴が開いて倒れる気しかしないよね」
シン、としかけた時に空気を変えたのはヘスティアだった。
ベルの背中を叩き、ベルの顔を下から覗き込む。
「君は助けたいと思ったんだろう?」
「……はい」
「なら、背筋を伸ばすんだ。やると決めたなら、虚勢だろうと自信満々に、だぜ?」
ヘスティアの言葉に他の団員達もそれぞれの形で追従する。
ベルは言葉なくそれに頷いた。
「さあ、そろそろ休もうか。特にベル君とヴェルフ君! 二人とも全然寝てないだろ!?」
「いやぁ~。どうも時間が足りないもんで」
「僕レベル4ですから全然平気ですよ」
「ハイ言い訳禁止! 主神命令だぞ!」
話はこれで終わりだとベル達を仮設テントに押し込む。
ランクアップを果たした眷属は肉体的に頑強になり、多少の無茶は通せてしまうが、それでも無茶は無茶だ。
ここの所、働きづめだった眷属達を強引に休ませたヘスティアは、ふぅと溜息を吐く。
「皆、責任感の強い子達だからなぁ……あんまり無理はさせないようにしないと」
もしかしたらそれで気が紛れているのかもしれないけど、と独り言を呟き、ヘスティアはベルが置いていった更新用紙を拾い上げる。
「相変わらずの成長率、か」
ベルに飛躍的な成長を促し、遂に前人未到のランクアップ所要期間一カ月という記録を打ち立てさせたスキルを撫でる。
愛しい眷属の力だが、同時にとても忌々しいとも思わせる効果があった。
「【
ベルの懸想相手は知っている。
アイズ・ヴァレンシュタイン。【剣姫】の二つ名を持つ第一級冒険者。
「懸想が続く限り……なのに、今まで通りの成長率?」
オラリオは崩壊した。
その街ごと住民達は消滅したのだ。
アイズはベルの懸想相手という意味以外でも特別だったのだろうが……
あの爆発を生き延びているとは思えない。
彼女は死に、ベルの恋は終わった。
スキルの説明を信じるなら、既に【
にもかかわらず異様な成長。
「ベル君。もしかして君は……」
この想像が正しければ。
ベルは目で見えている以上に危うい状態なのかもしれない。
「いや、今は目先のことに集中しないとだ」
嫌な予感は日に日に大きくなっていく。
神の勘以上に根拠がなく、説得力を持つモノは存在しないのだ。
「多分、
更新用紙を蝋燭の火に当てる。
チリチリと用紙は面積を失っていき、そこに記された情報が完全に消えたことを確認し、つまんでいた指先を開いたヘスティアは、フッと蝋燭の火を消した。
極東の情報はまだ断片しかないのが困りもの。
エピソード春姫で語られたりするのかな?