ベルたちがオラリオ崩壊から世界を立て直すのは間違っているだろうか 作:フリュネの出番はもうない
棘が生えた球状のモンスター、クリスタロス・アーチンが回転を始めようとする。
しかし、ベルはそれが攻撃と呼べるまでの回転数を得る前に切り裂いた。
「ガアアアアッ!!」
怒れる怪物の咆哮があちこちから聞こえる。
仲間意識など皆無であろうに、人間がモンスターを害するという事実はそれ程までに不快だということか。
ベルは構わず、こちらに向けて襲い掛かるダークファンガスを迎撃する。
キノコ型のモンスターが飛ばそうとする胞子は強い毒性。
喰らってやる義理はないと横に飛び、即直進。
胞子の範囲外である背後に回り込む。
「ピギィッ!?」
「アギャ!?」
その流れで何体かを解体しつつ、ダークファンガスの魔石を一突き。
初見の相手であったが、胸部にある魔石を運よく砕くことができた。
手ごたえを確認すると同時に跳躍。
数合の打ち合い、分が悪いと考えたリザードマンエリートは、花の形をした盾で身を守ろうと亀の姿勢。
それに対しベルはドンッと全身で押し込んだ。
思わず自然を崩し、一歩二歩後ずさるリザードマンエリートの頭に、ミノタウロスに大斧が叩き込まれる。
猛接近するミノタウロスの進路にリザードマンエリートを誘導したのだ。
「ヴォッ……!?」
突然の邪魔者に勢いをなくし、困惑の声を猛牛は漏らす。
隙だらけの首にスパァンと紫黒の一閃。
牛の頭が宙を舞った。
「ふっ……!」
灰になって倒れ込むミノタウロスの体。
それを避けようと僅かに開いたスペースに身を割り込ませ、ベルは独楽のように回った。
二色の斬撃が無数の軌跡を産む。
瞬く間に五体のモンスターを仕留めたベルは再度跳躍。
その後、ベルが立っていた場所に針が数本突き刺さった。
蜂型のモンスターであるデッドリーホーネットの群れだ。
それを確認すると、ベルは【ファイアボルト】の連射で反撃。
空中で消し炭にした。
『魔剣による威嚇が終わった後は、できる限り
戦いながらリリの指示をリフレインする。
これほどの数のモンスター。数を減らしたとはいえ、シュリーム湖場跡地に到達させずに皆殺しにすることはできない。
故に、リリは優先順位をつけるようにと言った。
他の者では対応できない程強力なモノ。
遠距離攻撃を持つモノ。
或いは、群れに指示を出す立場であるモノ。
(次は何だ、何を狙えばいい!?)
他の眷属達で対応できる雑魚は無視。
ベルは兎に角大物を削っていく。
強敵を一体倒すごとに、仲間達の生存確率は格段に……例え小数点を切るような、微々たる変化だったとしても上がっていくのだ。
「うっ……!?」
脳内に赤色の危険信号が走る。
その直感に従い、その場を飛び退けば火柱が立った。
(砲撃! 何がっ)
射線の先にいたのは竜の姿。
大型のドラゴンが口の中から火の粉を散らす。
(知らない、初めて見るドラゴンだ)
ベルは勤勉な冒険者であったが全てのモンスターを網羅していた訳ではない。
まだ、足を踏み入れるには時期尚早な下層・深層域のモンスターについては、知識が不足しているのだ。
だが、竜種とは如何なる階層であっても高ステイタスを誇る。
ベルの知識にないということは下層か深層。その竜種。
出し惜しみはできないと【
(こいつが一番不味い。すぐに仕留めないと)
放たれるブレスを紙一重で躱す。
少し距離がある以上、撃たせず討つのは難しい。
ならば、撃たれるのは仕方ないと諦め、それを利用するまで。
「「「オオオオォォォッ!?」」」
厄介そうなモンスターの近くを通り、ブレスを誘発。
あのドラゴンに同士討ちをしてもらう。
流石竜種というべき火力。
レベル4となったベルでも手こずる、或いは敗戦しかねない相手が次々と減っていく。
(このまま利用するか……? いや、徐々にブレスを避けるのがキツくなってきている)
バロールの時にも感じたが、深層クラスのモンスターは頭がいい。
既にベルの動きに慣れ始めているのだ。
欲張れば命取りになる。
四十五秒の
ブレスを背中スレスレで回避しながら砲声する。
「【ファイアボルト】!」
炎雷が走る。
燐光に包まれ、増幅された一撃はドラゴンの胸部に直撃した。
「ギャオオオオオオオオオオオオッッ!?」
竜の絶叫が響く。
しかし、倒れない。
胸は抉れ、紫の魔石は見えているが健在だ。
焦り過ぎた。
まだ十分な力を溜め切れていなかったのだ。
「くっ、もう一度!?」
再度攻撃を試みるが、スパルトイ達が斬りかかってくるのを応戦する。
骨の剣と牛角の短剣が火花を散らす。
第三級等級武装が悲鳴を上げるが、ベルは流し込むように刀身を滑らせ、スパルトイの魔石を砕いた。
(不味い、時間をかけ過ぎた)
ドラゴンを見れば再び口に火を溜めている。
それがベルに向けて放たれようとした瞬間、無数の矢が降り注いだ。
「弓隊! 撃ってください!」
リリの号令により、城壁から次々と飛ばされる矢。
更には投石器やバリスタを恩恵を持たない男達が操作し、次々と発射していく。
慌てふためくモンスター達。
上を見上げる彼らに対し、ベルを身を低くしながら疾走した。
「はああああああああああああああっ!!」
今こそ千載一遇の好機。
モンスター達の胸部や首元に次々とナイフを滑り込ませる。
黒の群れの中に灰の道が一筋。ドラゴンへの道が造られていく。
時折反撃を喰らいながらも、ベルは愚直に最大の脅威を目指した。
「ヴォオオオオオオオオオオッッ!!」
ドラゴンが怒りを向けるのは、うっとおしい矢の雨を降らせる矮小な人間達。
そのブレスで何もかも焼き払ってやると吠える。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」
それに対し、ベルも叫んだ。
お前の相手はそっちじゃないと、そう主張するように。
全身から迸る戦意。
グングンとモンスター達を狩りながら愚直に進む人間の姿に、ドラゴンは改めてブレスを放つ。
砲撃が着弾する前にベルは飛ぶ。
爆発の勢いを利用して竜までの距離を詰めると、その手に持っていた鎖を解き放った。
「グオォォッ!?」
長い首に鎖を巻き付けると、そのまま跳躍の勢いでドラゴンの周りをぐるり一回転。
すると鎖を空中回収し、元来た道をUターンして見せる。
「【ファイアボルト】!」
そして空中で回転しながら三発の魔法。
剥き出しの魔石は砕け、砲撃を放つ竜……
更に空中で魔法を続け、次々と群れの統率を取っている個体を撃破。
これで高度な連携はモンスターにはできない。
モンスター群れの深くまで切り込んでいたが、ここでベルは群れの先頭がいるあたりまで飛んで戻ってきた。
城壁までの距離はもう100
「ベル様のお陰でモンスターは有象無象になっています! ここから迎撃しますよ!」
リリの指示の下、城壁から十数人の影が飛び出す。
10
【ヘスティア・ファミリア】は勿論、【アストレア・ファミリア】を始めとしたゾーリンゲンの
そのレベルは1~2。ここまで奮戦したベルとは比較にもならない。
しかし、全員が覚悟を決めた目をしていた。
「魔剣隊の指示があるまで待機! 何時でも撃てるようにしてください!」
城壁に残るのは恩恵を持たない一般人の男達。
各々が魔剣を握り、地上を血の気が引いた様子で凝視する。
ベルがお膳立てをする時間は終わった。
ここからは、全員で抗う時。
レベル7だったら一振りでモンスターの群れを吹っ飛ばす模様。
ベルはレベル4だから一体一体やるしかないけど。