ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出 作:ミハイル・シュパーギン
「強引に突入してきましたね」
砲塔側面ハッチから乗り出していた優花里が目を点にさせながら言った。
Ⅳ号戦車の横にはヘッツァー、その後ろにはB1と八九式が並んでいる。
「あ、出て来るよ!」
沙織の言葉にみほが双眼鏡を覗くと、ちょうどスーパーギャラクシーの後部扉が開き始めたところだった。
こちらから見て輸送機の尾部は正面にあり、貨物扉の中の様子は窺えない。
しかし強行不時着の影響か、半分程が開いたところで何かに引っ掛かったかのように停止した。
上に少し戻して再度開こうとする行為を2、3度繰り返して失敗した後、焦れたらしい貨物室内の戦車が圧し掛かったらしく、金属が歪み擦れ合う不快な音と共に扉の上に乗ったティーガーⅠ重戦車が姿を現し、そのまま前進してスーパーギャラクシーから降り立った。
その後からパンター、IS-2、T-34-85、M4A1シャーマン76mm砲搭載型が続く。
「計5輌・・・」
敵戦車の数をカウントした後、ティーガーⅠの車長ハッチが開いてまほが顔を出し、後続の戦車を振り向きながら何事かを指示している様子を見て、みほの体がショックで強張る。
優花里の表情も険しくなり、同じく車内からまほを確認した華、沙織、麻子も目を離せないでいた。
実の姉が殺しに来ているという事実がみほの首をじわじわと絞め上げ、苦悩させた。
話に聞くのと、実際に肌で体感するのとでは実感が違う。
姉と対立している事は角谷から聞いて知っていたが、実際に戦う相手として目にすると実感が電流のように体を駆け巡った。
『西住くん、作戦は?』
緊張しているが落ち着いた角谷の声がみほに指示を仰ぐ。
みほは自身を落ち着かせる為に息を静かに大きく吸い込むと、咽喉マイクに手を触れた。
角谷からは事前に、チーム名はさん付け禁止と伝えられている。
「あひるチーム、発砲して敵を引き付けて下さい。敵を誘導しつつ、射撃場に逃げ込みます。射撃場に入ってからは散開して、敵戦力を分散させるように」
『了解!』
八九式中戦車がⅣ号とヘッツァーの間を通って30m程前進し、停車すると慎重に狙いをつけ、
「撃て!」
車長の磯辺典子の合図で57mm戦車砲が火を噴き、隊列を整えていた強豪連合の手前に着弾した。
「・・・来たか」
肩越しに振り返ったまほは、手を振って後に続くよう指示する。「来い!」
ティーガーⅠを先頭に、後から4輌の戦車が傘型のようなパンツァーカイル隊形を形作って大洗チームに迫り始めた。
「敵部隊、こちらに向かって来ます!」
「反転!あんこうチームが殿を務めます!」
優花里も車内に引っ込み、みほは被弾を避ける為に頭の上半分だけを外に出す状態にしつつ双眼鏡で敵軍を観察した。
(これは試合ではなく、戦闘だ)
現実を直視する為に、みほは内心そう言い聞かせた。
「劣化ウラン弾は?」
「大丈夫でーす!」
「ダブルチェックしました!」
宇津木と山郷が返事すると、澤は車体をよじ登って車長席に収まる。
「よし。どさくさ紛れにあんこうを血祭りにあげるわよ!」
「そうなりゃ隊長に昇進!」
阪口が眼光鋭くそう言ってM3リーのエンジンを始動する。
「澤ちゃん、あの時の事まだ怒ってるの?」
大野が昨日の拷問の件を聞くと、澤は鼻を鳴らした。
「フン。私を売っておいてよくそんな現を抜かせるわね」
「しつこい子は嫌われるよ~?」
宇津木がからかうような口調でそう言うと、
「せいぜい用済みにならないよう頑張る事ね」
「ウサギチームが出るようだな」
左衛門佐の報告に、エルヴィンが
「奴らに取られる前に、こっちが先にあんこうを仕留めないとな」
「これだから賄賂は持っておくに限る」
カエサルの頬には、昨日まで無かった新しい切り傷が生生しく刻み込まれている。
みほの暗殺未遂事件の犯人がうさぎチームの自白でカバチームである事が露呈し、寝込みを風紀委員に襲われて一斉摘発され、追って沙汰あるまで幽閉されてたのだが、賄賂を見張りの生徒会員に握らせて脱走していた。
カバチームは、こう言った不測の事態に備えてそれぞれが密かに賄賂用の現金を隠し持っていたのであった。
「裏切ったウサギの連中を先に始末するぜよ!」
鼻息荒くおりょうが言うと、カエサルが
「いや、先にあんこうだろう」
「柔軟に行こう。仕留められる方を先に仕留める。どのみち、2輌とも生かして帰さないんだろう?」
エルヴィンの言葉で満場一致となり、三号突撃砲も発進した。
続く