ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出   作:ミハイル・シュパーギン

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暴言注意。


こちら側の世界

その頃、『こちら側の世界』では。

 

「エンジン始動!」

 

みほの勝ち誇った声に呼応するように、Ⅳ号戦車のエンジンが唸りを上げた。

 

昨日の謎の爆発で『こちら側の世界』のあんこうチームと入れ替わった鏡像世界のあんこうチームは、鏡像みほの横暴な命令に困惑する仲間・・・鏡像みほにとっては仲間というより駒だが・・・の様子に気付き、あの謎の爆発で何かが起こった事に勘付いた。

 

機転を利かせて只のジョークとかなんとかでその場をごまかした鏡像みほは、その晩にあんこうチームを自宅に集めて話し合いを行った。

その結果、何もかも自分達が知る家族や大洗女子学園でない事から、ここが平行世界で尚且つ同じような人物が生きており、似たような歴史を歩んできた鏡像世界であると結論付けた。

 

なんとも突飛な発想だったが、状況からそう推測するしか無かったのである。

 

そして翌日に角谷から呼び出しを受け、自分達が鏡像世界からやって来たあんこうチームだろうと言われた。

その場はとぼけてみせたが、幼少期に負った一生消えない背中の傷を偶然見られた事で、角谷に確信を与えてしまったのだった。

これは間もなく、大洗女子学園戦車道チーム全体にも知れるところとなった。

 

角谷は交渉を持ち掛けた。

例の謎の爆発を起こせば、元の世界に送り返す事が出来る筈だと。

 

あんこうチームが入れ替わった時、空は奇妙な天候で、それがまた入れ替わりポイントで発生しつつあり、そこで謎の爆発を再現させようという作戦である。

 

鏡像みほは角谷の提案に乗ったが、それは演技だった。

実を言うと、角谷の話を全く信用していなかった。

確かに奇妙な天候は、自分達がこちらの世界に迷い込んできた時と同じ地点で発生しようとしていたが、送り返そうと言う発想が気に入らなかったのである。

そんな都合の良い話など、鏡像みほには信じられなかった。

 

この世界に来たのも何かの縁だ。

であれば、ここで一旗掲げてはどうか。

鏡像みほの提案に、4人は二つ返事で賛成した。

 

まあ、この世界のルールには従うしかない・・・あまりに横暴に振る舞えばあっという間に計画がおじゃんだ・・・が、角谷や大洗チームが自分達を厄介払いするつもりならば上等だ。

 

調査の結果、自分達はどうやらこの世界では尊敬されているらしく、ならばその名声を利用して、自分達の独自チームを立ち上げてやろう。

 

大洗女子学園など、くそくらえだ。

とっととずらかるのがいい。

 

そして今回の脱走作戦に至ったというわけだ。

 

 

 

「でもどこに行こうってんです?」

 

その質問とは裏腹に、鏡像優花里もすこぶる今の状況を楽しんでいるように見える。

 

「どこだっていいや!榴弾装填!」

「はいよ!」

「まずはここから逃げ出して、どこかに隠れるというわけですね?」

 

鏡像華の言葉に、鏡像みほは口の左端を釣り上げた。

狐のようなずる賢い目つきが手伝って、見られた者の背筋をひやりとさせる笑みだ。

 

「装填完了!」

「早く開けろ」

 

と、鏡像麻子のぶっきらぼうな声が要請し、鏡像華がスコープを覗き込んでハンドルを回す。

砲塔が回転し、主砲が僅かに仰角を取った。

 

「照準完了!」

「発射!」

 

75mm砲が榴弾を吐き出し、格納庫の出入り口を閉じている鉄製の扉を吹き飛ばした。

 

「ヤッホー!自由への扉が開かれた!ようこそ新たな人生!開け、私達の新時代!」

 

と、鏡像沙織が大袈裟に言った。

 

「発進!」

 

鏡像みほが人差し指を立てた右手を前に向かって振ると、Ⅳ号はひと際大きな轟音を上げて踏み出し・・・停止した。

 

「冷泉、何やってんのよこのウスノロ!」

「うるさい黙ってろ!エンジンがおかしい!」

 

鏡像みほの罵声に罵声を返しながら鏡像麻子は何度も操作を試みたが、エンジンは言う事を聞かなかった。

 

「チキショーめが!」

 

と、鏡像みほが地団太を踏みながら喚く。

 

「ダ、ダメです・・・砲塔も操作出来ません!」

 

狼狽えながらそう報告する華の頬を、鏡像みほが手の甲で思い切りはたいた。

 

「痛っ・・・!」

「んな馬鹿なわけあるか!」

 

それから血走った目で鏡像優花里を見る、「秋山!なんとかしろ!」

 

「きっと連中、燃料に水混ぜやがったんですよ」

「くそお!!!!」

 

鏡像みほは目を見開きながら歯噛みして、鏡像優花里の顔面を殴りつけ、ダメ押しに唾を吐きかけた。

八つ当たりされた鏡像優花里は、鈍い痛みに呻きながら唇の端から滲み出る血を拭い、その指を鏡像みほに突き付けて怒鳴り返す。

 

「おおいてえ・・・次やりやがったらてめえの両目を抉り出してやる!」

「うるさいわね。いいからとっとと戦車を替えるわよ!」

 

そう言い捨てると、鏡像みほはハッチを開けてⅣ号を捨てようと外に出たが、様子に気付いて動きを止めた。

 

Ⅳ号の格納庫の正面に、ポルシェティーガーとⅢ号突撃砲と三式中戦車とヘッツァーが待ち構えて砲をこちらに向けていたのだ。

 

拡声器を持った角谷の声が呼び掛ける。

 

「ざんねーん!自動車部が燃料に水混ぜちゃったみたい!」

「あのあばずれ、撃ち殺してやる!」

 

鏡像沙織が半狂乱になって喚き立て、それから機銃の銃床を肩に当てた。「みんなくたばっちゃえ!」

 

機銃から弾丸がばらまかれたが、角谷はすぐに身を引っ込めたので誰も傷つかなかった。

弾切れになってから、角谷が命令する。

 

「撃て!」

 

格納庫の中に煙幕弾が撃ち込まれ、たちまち白煙が充満した。

鏡像みほは咳き込みながら車内に戻ってハッチを閉じたが、もはやどうしようもない状況だった。

 

「ねえ、どうすんのこれ?」

 

鏡像沙織がみんなの考えを代弁した。

 

一方角谷は、

 

「全車、あんこうに照準!」

 

配下の車輛から準備完了の報告が入ると、笑いを堪えながら「やめろと言うまで撃て!」

 

Ⅳ号の車体に何度も砲弾が撃ち込まれ、白旗が立っても死体蹴りが続いた。

その間、鏡像あんこうチームは車内を襲う衝撃と黒煙に咳き込み、悲鳴を上げたのであった。

 

こうして鏡像あんこうチームは鎮圧された。

 

 

 

続く

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