ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出 作:ミハイル・シュパーギン
「Ⅳ号の主砲はⅢ突の主砲を転用しました」
レオポンチームリーダーのナカジマが右手のスパナを修理仕立てのⅣ号戦車に振った。「幾ら我々でも一晩で主砲の修理は無理ですからねえ」
実際、隅に追いやられているⅢ号突撃砲の主砲が抜き取られて哀れな姿になっていた。
「有難うございます」
「おや、隊長が礼を言うなんてどういう風の吹き回しです?」
みほは咄嗟にごまかして、
「偶にはいいかなって」
「ふ~ん・・・でもなんだか嬉しいな、ハハハ」
続いてまほが話題を変えて、
「ティーガーの方はどうだ?」
「ん-と、まあ、あれは徹夜すれば何とか直せそうです」
ナカジマがティーガーⅠに視線を向けると、エンジンを修理するスズキとホシノの姿があった。
「ウサギチームが結構派手にやってくれたけど、まあ我々の手に掛かれば余裕ですよ」
「頼もしいな」
「でもどうして明日までに直したいんです?演習なのは知ってますが、急用じゃないでしょ?それに一戦交えた後だし・・・」
「早くここの空気に慣れておきたいからな」
「ふ~ん・・・ま、西住流が2人とは心強いねえ?」
とある飛行場。
航空自衛隊のC-2輸送機の貨物室に向かって、10式戦車がゆっくりとランプドアのスロープをよじ登って行く。
しほと蝶野亜美の2人は、その様子を格納庫の傍に立って見ていた。
「家元、本当に・・・」
躊躇いがちな蝶野の質問に、しほは頷いた。
その目は宇宙のように冷え切っている。
「あなたは指示に従っていればいい」
蝶野はそれ以上話しかけるのをやめた。
出発はまだだが、その時が永久に来てほしくない気持ちであった。
そして早朝。
クラーラやカバチームが投獄されている営巣の入り口では風紀委員のパゾ美が当直に当たっていた。
「あと1時間頑張ったら寝れる・・・」
眠い目を擦りながら自分自身を励ますパゾ美。
傍らには眠気覚まし用に飲んだエナジードリンクのロング缶が2本立っている。
と、そこへ足音が近づいてきた。
「交代?」
にしては早いなと思いながらパゾ美が振り返ると、磯辺だった。
「や、おはよう」
愛想よく挨拶する磯辺に、パゾ美はなんとなく不審な感じを覚えた。
この世界ではどんな策略や陰謀が働くか分からない。
パゾ美は自然と警戒態勢に入っていた。
「差し入れにも見えないし、交代はあと1時・・・」
瞬間、磯辺はバレー部で培った瞬発力を活かしてパゾ美に向かって飛び出し、その間に後ろに隠していたスタンガンを引き抜くとパゾ美の脇腹に押し当てた。
「ぐえ!?」
パゾ美は一瞬悲鳴を上げたが、すぐ白目を剥いて失神して横に倒れた。
それを合図に、同じチームメンバーの近藤、河西、佐々木もやって来る。
「ちょろいなあ」
磯辺はパゾ美の腰に掛けられていた鍵の束を奪い取ると、彼女をまたいで営巣の入り口に近付き、ロックを解除して鉄格子の扉を開いた。
その後ろでは3人が手際よくパゾ美を縛り上げて脇に寄せる。
磯辺は1つの牢屋の前に立った。
それはクラーラで、早速パゾ美の短い悲鳴を聞きつけて目を覚まして様子を窺っていたようだった。
「ねえ、取引しない?」
磯辺の言葉に、クラーラは興味を惹かれた。
「何?」
「ここから出してあげる代わりに、協力して」
続く