ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出   作:ミハイル・シュパーギン

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接近

アヒルチームと脱獄者たちは営巣送りになった。

黒森峰組はまほと合流しており、その場でまほの直属の部下として大洗学園艦に留まる事が決まった。

因みに脱獄に最初に気付いたのは営巣に向かったまほで、すぐに風紀委員に通報したのであった。

 

「不甲斐ないであります・・・」

 

病室で止血処置を施され、包帯を巻いた優花里が痛みに顔をしかめながら言った。

左腕ごと固定されており、動かす事は出来ない。

 

「弾丸が貫通していて良かったわね。摘出手術をしていたら時間に間に合わなかったわよ」

 

園が掌に9×18mmマカロフ弾を転がしながら言った。

そこへみほ達が入って来て、

 

「優花里さん、大丈夫?」

「西住殿、ご心配をお掛けしました。でも、大丈夫です!」

「その恰好でよく言うわね」

 

と、沙織が腕組みして言った。「ゆかりんは当分ローダー厳禁よ」

 

すると優花里はベッドから飛びあがるように立ち上がり、

 

「いえ、何のこれしき!あと90分あるであります!それまでには動かせるようになるであります!」

 

これに園がじろりと優花里を睨みつけて、

 

「血管破けるわよ」

「え・・・やっぱりそうですか・・・ハハ・・・」

 

決まり悪そうに苦笑する優花里に、麻子が

 

「装填手は沙織がやる。優花里さんは沙織の席で休んでいるといい」

「そんな、私も指くわえて見ているわけには・・・!」

「言う通りにしないとここに残って貰うわよ」

 

園の言葉に優花里も大人しくせざるを得なかった。

 

「とにかく、優花里さんはギリギリまでここで休んで貰った方がよさそうですね?」

 

華がそう言うと、みほも首肯した。

 

「優花里さん、体力を温存していて下さい。時間が来たら呼びますから」

「逃げようとしたらマイナスドライバーで傷口抉るわよ」

 

園の脅しは鏡像世界らしいものだったが、効果はてきめんだった。

優花里がすっかり大人しくなったところで、みほは

 

「あの、ところでレオポンさんチームの方は・・・」

「ああ、4人とも今は動かせないわね。後遺症は無いけど」

 

園の返答に、みほ達は困ったように顔を見合わせた。

 

ティーガーⅠの修理は終わっていないのだ。

 

 

 

「我々がポルシェティーガーに乗る」

 

あんこうチームの悩みに、まほはあっさりとそう言った。

既にまほの部下達はポルシェティーガーの整備に取り掛かっている。

 

「お姉ちゃんが・・・?」

「我々で不足か?」

「いや、そうじゃなくて、びっくりしただけ」

「同じドイツ戦車だ。1時間もあれば慣れるさ」

 

その時、車庫内の壁掛け電話が鳴った。

華が手近な受話器を取り、

 

「はい・・・ああ、園さん?え、分かりました」

 

華はみほに振り返り、「みほさん、園さんからです」

 

みほは受話器を受け取ると、

 

「はい、西住です」

「悪い知らせよ。レーダーが艦影を捉えたわ。聖グロの学園艦よ、こっちに向かってる」

「え?」

「磯辺を尋問したら・・・ああ、拷問してないから安心して・・・聖グロと内通していた事が分かったわ。きっと混乱を狙って来たのよ」

「聖グロは・・・どうするつもりなんですか?」

「戦車隊を乗り込ませる気よ。昔の海賊の真似事をするつもりね」

 

セントグロリアーナ女学院の学園艦は、大洗の学園艦を凌ぐ大きさだ。

そんなものが体当たりなどしてきたら・・・

 

園の声が言葉を続ける。

 

「とにかく、今の戦力で迎撃しないとダメよ。帰還を妨害されたくないでしょ?」

「で、でも、また殺し合いを・・・」

「甘っちょろいわね・・・」

 

そこへまほがやって来て、受話器をみほから強引に毟り取った。

 

「どうした・・・そうか。分かった」

 

それだけ言うと受話器を元に戻した。

 

「お姉ちゃん」

「安心しろ。我々がサポートする。なに、聖グロには負けた事がない」

 

その時、また電話が鳴り、まほがみほに体を向けたまま受話器を取る。

 

「なんだ・・・何、島田流家元が・・・輸送機だと?なるほど・・・そうか・・・有難う。それじゃあ」

「何?」

「たった今、島田流家元が、我々の家元が輸送機でこっちに向かっていると知らせてくれたらしい」

 

みほの目が見開かれた。

 

「じゃあ、偽の報告は・・・」

「バレた。磯辺が聖グロに密告して、その情報を聖グロが家元に流したらしい・・・蝶野教官が密かに島田流家元に教えたとの事だ」

「でもどうして・・・」

「島田流は戦車道の現状に反対派の人間だ。元々は我々と同じだったが、娘の愛里寿が飛び級で大学選抜に行ってから人が変わった」

 

元いた世界では、島田愛里寿は小6程の年齢で大学選抜チームに飛び級している。

この世界でも同じだとすれば、まだ幼い大切な我が子が生命の危険に晒される試合に赴くとなっては、心境の変化があっただろうというのは頷ける話だ。

 

「お姉ちゃん、私が元の世界に帰っちゃったら・・・」

「飛来するのは、お前達が帰る時間の直前だ」

「え」

「厄介ごとが増えた。こいつは面倒だぞ」

 

みほが言葉を失っている中、まほは尚も言った。「私一人ではどうしようもないが、今は大洗がついている。だから何とかなるだろう、そう思っているし、その後の当てもちゃんとある」

 

みほは姉が何を言おうとしているか気付いた。

 

「ひょっとして・・・島田流に・・・?」

「ああ。お前の考える戦車道、実現してみてもいいかもしれんな」

 

 

 

続く

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