ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出 作:ミハイル・シュパーギン
そしてセントグロリアーナ学園艦が現れた。
この船と比べれば、大洗学園艦など小型艦に見える程の巨艦だった。
わざわざ船べりに行かなくとも、こちらに向かって来るのが見えていた。
まほが双眼鏡を下ろした。
「すれ違いざまに戦車隊を送り込んで来る」
「上等じゃない。全部鹵獲してやりましょう?」
B1の砲塔後部のハッチを開いていた園が言った。
まほは首を回して平行世界の妹を振り返る。
「みほ」
「お姉ちゃん」
「ポイントまで20分だが、聖グロは10分でニアミスする。それまで耐えなければならない」
「聖グロの戦力は?」
「ルールを守るとは思えん。ありったけの数を送り込んで来る筈だ」
沙織と麻子の手を借りて通信手の席に足を入れた優花里が顔を上げた。
「大部隊だという事ですか?
まほは一瞬の間を置いてから、
「こういう道場破りはルール無用である場合が多い」
優花里は息を呑んだ。
「え、そんな。数で圧倒されちゃいますよ!」
「必ずお前達を元の世界に帰す。それが私の任務だ」
「お姉ちゃん。絶対に死なないで!」
「みほ。そんなにお前の所の私は頼りないのか?」
「・・・いや、そんな事は・・・」
「だったら、こっちの私も信じてくれ。どうだ?」
「・・・分かった、お姉ちゃん。信じるよ」
「よし。みんな乗り込め!」
大洗女子学園の戦力はⅣ号戦車、ポルシェティーガー、三式中戦車、B1重戦車、M3リー、八九式中戦車だが、裏切ったアヒルチームは営巣入りなので実質5輌だ。
しかもⅣ号とポルシェティーガーはポイントの傍をあまり離れるわけにはいかないので、自由に動き回れるのは3輌だけである。
「各車報告!」
まほがそう言うと、すぐにみほを筆頭に各車の車長から報告が矢継ぎ早に入った。
『あんこうチーム、準備完了!』
『カモチーム、準備完了!』
『ウサギチーム、準備OKです!』
『アリクイチーム、大丈夫だにゃあ』
「よし。7分後に衝撃が来るから、気を付けろ」
『こちらカモチーム。艦橋から輸送機接近の報告!同じく7分後にここをフライパスするわ!』
「了解」
それから7分後、聖グロの学園艦はぐんぐん舵を切りながら大洗学園艦に幅寄せしてきた。
まるで壁が迫ってきているような圧迫感だ。
上空には高度を低める航空自衛隊のC-2輸送機の姿がある。
「衝撃に備えろ!」
まほの警告の数秒後、聖グロ学園艦と大洗学園艦は船体同士を擦り合わせるようにしながらニアミスした。
船体同士が擦れ合う時の衝撃が大洗学園艦を震わせ、戦車道チームもその場で踏ん張って衝撃に耐える。
それと同時に、C-2が大洗学園艦をフライパスし、その際に開かれたランプドアからパレットに乗せられた10式戦車が投下された。
すぐに減速用のパラシュートが開き、パレットに乗った10式戦車は住宅街の中に姿を消す。
一方聖グロ艦では、船体側面にある幾つかのハッチが開かれると、そこから次々と英国戦車が飛び出して大洗学園艦に着地していった。
その様子をみほやまほが双眼鏡で視認していた。
「マチルダⅡ、クルセイダー、チャーチルⅦ・・・ブラックプリンスにクロムウェル、コメット・・・嘘だろ、チャレンジャーⅡだと・・・!?」
戦車の種類を特定していたまほは、戦車道に使われる戦車の性能を遥かに凌駕する未来兵器、チャレンジャーⅡ主力戦車の姿を見て驚愕した。
『チャレンジャーⅡ!?』
「くそ、ここまでルール無用で来るとはな」
『これじゃ勝ち目ないよ!?』
「黙ってろ」
まほはカモチームを呼んだ。
「園!チャレンジャーⅡが来る。有効な武器は?」
『ドローンで爆撃が出来るわ』
「すぐにやれ!あれには勝てん!」
『了解。すぐ取り掛からせるわ』
すると猫田から通信が入り、
『10式、参上だにゃあ!』
指差す方向を見ると、校庭にずかずかと入り込んで来る10式戦車の姿があった。
と、その時。
10式戦車が何かに気付いたらしく砲塔を右に旋回させた。
その砲塔の傾斜部に、何かから放たれた砲弾が当たったがそのまま受け流されて虚空に消えて行った。
まほに何かの正体の見当はとっくについていた。
チャレンジャーⅡだった。
車長ハッチが開くと、、中からダージリンが現れた。
ダージリンは大洗チームに顔を向け、にこりとして言った。
「ごきげんよう」
続く