ガールズ&パンツァー/鏡像世界からの脱出   作:ミハイル・シュパーギン

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降伏勧告

チャレンジャーⅡは全部で3輌いた。

大洗チームの無線機にダージリンの降伏勧告が入る。

 

『こちらダージリン。大洗女子学園戦車道チームに告ぐ。直ちに降伏せよ。今なら命を助け、セントグロリアーナの戦力として組み込む用意がある』

「答えるな。そして信じるな。連中の三枚舌外交戦略を忘れるな」

 

まほがすかさずそう言った。

Ⅳ号戦車では慣れない手つきで徹甲弾を抱える沙織が首を傾げる。

 

「三枚舌外交戦略?」

 

ダージリンの声が再び降伏を促す。

 

『もう一度言います。大洗女子学園戦車道チームに告ぐ。直ちに降伏せよ』

 

降伏勧告を聞く間に麻子が言う。

 

「きっと殺されるんだろうな」

「ええ!?」

「確かめるには降伏するかないがな」

「そんなのダメダメ!」

「そうです。我々は元の世界に帰らないと」

 

痛み始めた左肩を押さえて顔をしかめながら優花里が言った。

 

すると、ダージリンの降伏勧告に割り込むようにしほの声が入る。

 

『セントグロリアーナ、我々の邪魔をするな。そこをどけ!』

「お母さん・・・」

 

鏡像世界の人物とは言え紛れも無い母親の声にみほの表情が動揺で震える。

ダージリンの声がすぐにしほに言い返す。

 

『あなたこそ、ルールに定められてない戦車で乗り込んで来るとはいい度胸ですわね?』

『ほう?チャレンジャーⅡを持ってきておいてよく言えるな』

『あなたの考える事は分かっています。だからチャレンジャーⅡを持ってきたまで』

『もう一度言う。そこをどけ!』

『あなたこそ下がっていなさい。嫌ならチャレンジャーⅡでお相手して差し上げます』

 

沙織がみほを心配そうに覗き込む。

 

「みぽりん?」

 

呼び掛けられたみほは、すぐに気を取り直して表情を引き締める。

 

「え?ああ、もう大丈夫だよ、沙織さん」

「そう?」

「うん、安心して」

「西住さん、頼んだぞ」

 

麻子がそう言った直後、しほの声が、

 

『・・・どうしてもどかないのだな?』

 

不審にもダージリンの声が答えない。

違和感を覚えたみほがチャレンジャーⅡを見ると、出し抜けにダージリンの車輛の120mmライフル砲が火を噴いた。

 

「あ・・・!」

 

標的は10式戦車だったが、ダージリンの意図を直感で察したらしく、しほは発砲直前に10式戦車を全速後退させていたのでチャレンジャーⅡの不意打ちを免れていた。

ここはさすが現代戦車と言うべきか。

 

『よくも!』

 

10式戦車が車体をくねらせて後退させながらダージリン車に撃ち返したが、チョバムアーマーで防がれた。

ダージリン車以外の2輌のチャレンジャーⅡがすぐに対応して発砲し、10式戦車はそれらの砲弾を回避しながら車庫の後ろに隠れた。

車庫に向かって用心しながら前進していく2両のチャレンジャーⅡ。

 

ダージリンの声が再び大洗女子学園チームに呼び掛ける。

 

『これが最後のチャンスです。降伏しなさい』

「ダメだ」

 

と、まほの声がもう一度キッパリと大洗チームを戒める。

返答が来ない中、ダージリンが笑い出した。

 

『おほほほほほ!ならいいですわ。ここで西住流と心中するがいい!』

「随分と威勢がいいですね」

 

と、華が他人事のように言った。

どうやらチャレンジャーⅡが10式戦車の抑止力として投入された事を知って少し余裕が出て来たらしい。

 

とは言え、肝が据わっているとしか言いようがないが、これはみほ達を落ち着かせるにも役立った。

 

『では、わたくしは西住流家元のお相手をしてきますわ。これ以上泣きついてきても、機銃弾のハチの巣になるだけですから、念の為。それでも死に損なえば、踏み潰してあげますから』

 

ダージリンのチャレンジャーⅡは実際、10式戦車に向かって動き出した。

『ルール適用内』の英戦車隊もみほ達の包囲網を狭め始める。

 

『10式はダージリンが引き受けるらしい。みほ、準備はいいか?』

「うん。でもお姉ちゃん達は・・・」

『伊達にここまで生き残って来ていない。今度も生き延びてみせるさ』

『私達を甘く見ない事ね!』

 

と、園の声が割り込む。

素っ気ないが、確固とした口調だ。

 

「・・・分かった。あと・・・4分20秒持ちこたえるだけだね」

『うむ、その意気だ。各車、一応チャレンジャーⅡには注意しろ。戦闘開始!』

 

こうして元の世界に帰る為の最終決戦が始まった。

 

 

 

続く

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