黒歴史が追ってくる   作:かりん2022

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黒歴史がやってきた

 清廉で美しい天使の騎士が、剣を構えて告げた。

 

「終わりです。ハートモンワールドの扉は、今年も守られる」

「クククッ 俺達に倒せねぇハートモンなんていねぇんだよ」

 

 巻物を周囲に浮かばせた、美しいローブと靴、帽子が見えない口で嗤う。

 追い詰められた竜は、血を吐くかのように叫んだ。

 

「くっ 絶対正義の勇者、夏油傑! パーフェクトヒーロー、繰屋 匠!!」

「ダークドラゴモンっ」

「下がってろ、灯里!」

 

「止めだ、アークエンジェモン! ホーリーキャノン!」

「行け! マジカルグレイモン! マジカルキャノン!」

「「トドメ!! 絆バースト!! ハートキャノン!!!」」

 

 少年二人の命により、2体のモンスターは必殺技を放った。

 そうして、竜は吹き飛ばされて卵になる。

 

「ダークドラゴモン!!」

「お姉さん。貴方が、何を思って世界の滅亡に手を貸そうとしたのかはわからない。でも、世界って多分、そんなに捨てたものではないよ」

「貴方達に何がわかるのよ!!」

「わからない。だから、話そう」

「俺ら勇者だからね。助けるよ」

 

 手を伸ばすと、躊躇の後、お姉さんは私の手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見た。

 随分と懐かしい夢だ。

 

「懐かしいな……」

 

 小さい頃の、想像力がなせる大冒険である。

 匠は……猿だから、関係はないか。

 

 幸せな気分で、ニュースを見る。

 

『大変ですっ 首都上空に、巨大な浮遊大陸とてもいうべきものが現れました!! 多数の竜のような物が飛び交っています!』

 

 ぶーっ!!!

 

「せ、世界の終わりだ!?」

「……カメラに映っているってことは、呪術ではなさそうねぇ」

「夏油様なら楽勝だし!」

「そうだよ、夏油様ならエイリアンだってやっつけられるよ」

「ええ……。ええ……!?」

 

 テレビに齧り付いて見る。

 どう見ても子供の頃に戦ったハートモンワールドの扉が全開だった。

 今代の勇者が負けてしまったのだ。

 夏油の頭に、セピア色に塗ったまま忘れていた記憶が溢れ出す。

 

「寝よう。まだ夢を見てるみたいだし」

「傑ちゃん、気持ちはわかるけど、これ現実よ?」

「はっはっは。そんなまさか。私は寝る」

「お言葉ですが、夏油様。こんな時こそ猿共に説法すべきです」

「それは」

 

 話していると、空間に穴が空いて、某竜の任務のゲームに出てくるスライムのような、超有名落ちものパズルに出てくるぷよっとした生き物のような、まあるいぷよぷよっとしたものが夏油に体当たりを仕掛けた。

 

「すぐるー!」

「スラモン!?」

「呪霊!?」

「違うようですね」

「えっ 夏油様知り合い?」

「おやぬいぐるみが落ちた」

 

 無理筋だ、と思ったが、夏油傑は押し切った。

 

「ぬいぐるみ?」「そう、ぬいぐるみ。最初から私が持っていたぬいぐるみ。そういうことで私は寝るよ」

 

 そうして、私は寝室にスラモンを拉致して鍵をかけた。

 

「どうしたんだ、スラモン! 今代の選ばれし子供達は!?」

「負けた……。今こそ、君の力が必要なんだ、歴代最強の勇者、絶対正義の勇者、夏油 傑!」

「やめろ!? 希望の力なんてもう持ってないぞ!? そもそも、モンスターを進化させられるのは子供だけだろ!!」

 

 ハートモンは、子供の未来を信じる心によって進化する。

 今の夏油傑にそれをしろというのは酷で無理な話だった。

 

「君なら出来る! 絶対正義の勇者、夏油 傑!」

「だからやめろ! そういうのは悟に言えよ!」

「誰だよそれ! 僕のパートナーは、君だけだ、夏油 傑! そして世界を救えるのは、君と匠だけだ!!」

 

 激昂してプルプルと震えるスラモン。

 

「〜〜っ そういうのは学生時代に卒業してんだよねぇ……!」

「今、歴代の勇者を歴代のパートナーモンスターが迎えに行ってる。急いで結界を張らないとなんだ。行こう、すぐる!」

「私は行かない……! 行けないよ」

「すぐる!」

「私はもう、あの頃のキラキラしてた生き物じゃないんだ……!」

「すぐる!」

 

 そこで、夏油はあえてにこりと笑った。

 

「私は、両親を殺した。沢山の人を殺したんだ。これからも殺す。その果てに、選ばれし者だけの楽園を作る」

「え?」

「言ったろ。変わったんだ。昔友だった情けで、今は殺さないであげる。行きな」

 

 スラモンは、叫んだ。

 

「見くびるな! すぐるが傷ついたのなんて、わかる! 僕は君のパートナーで、ハートモンスターだぞ! それで、君の中に、大切に隠した清らかな想いの欠片が残っているのもわかる! 君は戦える! 必要なんだ! 君が!!」

「ふざけるなよ。私は二度と君とハートコネクトなんてしない」

「すぐる……」

「帰ってくれ」

「すぐる。悪かったよ。でも、この世界が終わるなら、最後の時は君といたい。ずっと、ずっと会いたかった。君を思わない瞬間なんてなかったよ。僕をそばに置いて」

「スラモン……」

「君がつけた名前で呼んでよ」

「……ミライ。私は君を忘れていたよ」

「すぐる」

「それに、私といれば辛いものを見るよ」

「それでも君についていく」

 

 夏油は、戸惑いがちにスラモンを抱きしめた。

 そして、深い深いため息をついた。

 

 ドアの前には気配がたくさん。

 これ、説明しないって無理だろうなぁ……。

 

 でも、火が出るほど恥ずかしい過去なのである。

 

 子供の頃、異世界で勇者やってたなんて言えるはずがない。

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