ウェスカーを頂点にする   作:記憶破損

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主役登場

 私の人生を楽しむにはウィルスという存在は不可欠な要素だ。未来において種類に限らずウィルスという宝石に導かれた者達を知っている身としては当然ともいえる。すぐにでも研究したい好奇心が刺激されるが、現状作れるウィルスはT-ウィルス関連のみ。

 

 ウィルスには原型が存在する。G-ウィルスならリサ・トレヴァーの細胞、C-ウィルスなら始祖ウィルス+t-Veronicaを組み合わせたt-02+G-ウィルスという過程がないといくら知識があっても作れないのだ。T-ウィルスは始祖ウィルスとヒルのDNAからT-ウィルスもどきが必要だが私は省略できる手段を確立させた。

 

 マーカス博士が1978年から研究し、多くの研究者たちが約十年かけてウィリアムがT-ウィルス計画でタイラントを作りある意味完成にこぎつけた。その過程を省略できるのは強みだ、そして今後に起きる事を知っている身として行動方針を定めておけば人生バラ色というものだろう。

 

「ああ本当に楽しくないな畜生―-工事長かよ私は!なんで私が図面まで書いてるんだ!」

「何でもできるからです。凄いですね所長…次はダクト配管平面図の見直しです。データに重要部分はマークしてあります。それと研究スタッフ達から新型ウィルス案のレポートとB.O.W.開発の被験者を増やしてほしいと要望多数。良かったですね、頼られる所長になれてアンブレラでの評価も上がって」

「面倒だなおい!ジョン工事長がやってくれよ。私は空調配管系統図書いてるから!これマジで間違った図書くと酸欠で死者でるから!地下施設で酸素無しとかヤバいから!」

「俺は本来関係もない仕事に付き合わされてるのを理解してますか?あと自業自得でしょ。所長が我々に関係もないラクーンシティ郊外に地下施設を作りたいとか言うから。まあ受領されるという事はそれだけ信頼されているという事です」

 

 

 私が未来基準の重機やワクチン製造機などの案をスペンサーおじさんに製造するようにお願いメールを送った。有用性とアンブレラ強いてはウィルス研究も飛躍的な速度で進むよ。とメッセージ付きで、オマケで「しわとりクリーム」も送った。

 

 しわとりクリームってなに?という方もいるだろう。これは映画版でのバイオハザード、この世界に繋がる可能性がある世界においてチャールズ・アシュフォード博士…たぶん別人だと思うがジェームズ・マーカスという博士(スじゃないズ)の後を継いで娘の為に難病の特効薬を作成する。だがその薬は細胞の活性化、いわゆるゾンビになる可能性を秘めた物だったと。それをアンブレラが目を付けて、表向きしわとりクリームの材料として研究する。簡単に言えばT-ウィルスの原料になる代物だな。映画版において始祖花の存在自体が無い、つまり完全なる薬品のみの配合で完成するという事だ。

 

 現時点において現存する薬品だけの配合でT-ウィルスの原料なんてもの聞いたことがない。つまり私が作ったやり方以外存在しない!そもそも始祖花から始祖ウィルスを抽出して他のDNAと配合する過程を置き換えることができる物。それだけでどれだけの価値があるかわかるだろう。しかも効果を調整できるから始祖ウィルス同様、細胞活性化に伴う対処方の確立・派生させる工程も容易になる。その代わり感染速度・変異が通常のT-ウィルスよりも早いようだが、t-Veronicaのような速度の細胞変化でT-ウィルスの性質…最高だな!

 

 あと映画版のT-ウィルスは死んだ生物にも感染する。ここが大きな違いだ、ゲーム版と呼称するがゲーム版のT-ウィルスは感染後に生物として死んでゾンビになる。死んだ後に感染しても細胞に変化が起きない、潜伏期間中に死ぬとかでない限りゾンビ化しない。映画版はその縛りがない、簡単に言えば死んだ細胞を蘇らせる事ができるのが映画版なのだ、故に難病の治療薬にもなる真の意味で万能なウィルスなのだ。

 

 ウィルス目的で考えても有用性が多い代物だが今回は名前の通りの性能に調整した完全版しわとりクリームとしてプレゼントだ。塗ったところだけクリームに遺伝子登録された若い細胞が作り替わり昔の姿を取り戻すアンチエイジングの現時点での最先端、簡単に言えば超高性能な人工皮膚パック。だけど作り替わる時に痛みがある、まあヒリヒリするぐらいに抑えたけど数分待てば昔の自分に早変わりという魔法にかかったような体験ができるわけだ。副作用もない、強いて言えば時間経過で徐々に皮膚がポロポロと剥がれていく。

 

 あくまで魔法、魔法は解けるのも定め。見た目だけ若返らせても徐々に年齢相応に戻る、それでも結構持つけど。塗った付近の筋肉以外はそのままだから本当に見た目だけ若返る効果しかない欠陥品。オマケだからこれぐらいでいいでしょ、と軽いノリで送ったんだが…スペンサーおじさんから絶賛と資金増額などしてくれた。秘密裡にこのクリームを最優先に研究してくれと命令も来ちゃったよ。1988年で貴方まだ57歳のはず、その歳から不老不死を求めてたの?まあ疑似的な不老不死もできるけど…スペンサーを不老不死にしても楽しくない。

 

 でも…何だろう。しわとりクリームについての項目でまるで見たことがあるような書き方があった。

 

『このクリームの効力は素晴らしい。こうも論理的な回答(・・・・・・)が出て来るとは―ーー…』

 

 小さな違和感。まるで私が開発したクリームを知っていたが作れない状態であるかのような…考えすぎか?まあいいや!老人の顔を思い浮かべて楽しいほどできた人じゃないからね私!

 

「資金はあるのに人手が足りない、そもそも何でアフリカでアメリカの研究所について考えているんだ。私がラクーンシティに行けばいいだけでは」

「所長でしょ貴方は、自覚してください。資金があるのもスペンサー卿からの研究費と施設改修費などの入金です、それらを差し引いても今までの倍以上ですが... 人手はこれでも増加しています、ここは始祖花を取り扱っている事を忘れずにお願いします」

「私が作ったT-ウィルスがあるだろう!それがあれば今までのように始祖花に固執することはないはずなのに」

 

 配合のみで作ったT-ウィルス、正確にはもどき?そのままT-ウィルスと呼んでいるが既にアフリカ研究所内で調合・実験を開始させている。流石の私も一人で研究し尽くすのは時間が足らないのでスタッフ達を頼った、それに面白い結果が出るかもと期待もしてる。私は配合と感染速度など重要な部分は理解できているが、細かいウィルスによる変異まで知らない。

 本来のT-ウィルスからなる感染・変異の知識はあるのに映画版のT-ウィルスの方だけ知識量が少ないのだ、これを伝えた際〝革新だ〟とか騒ぎ出したが、数分で研究に没頭し続けるマッドに早変わりしてた。この矛盾を解決するのにここのスタッフが大活躍中、そして私の人気もうなぎ上り!良いことづくめである。しかも何故かウィルスの配合なら失敗が少ないのでスタッフに丸投げできる。アンブレラ研究員はウィルス限定で優秀になるのかもしれない。

 

 工事長に、はぁ...、とため息をされた。私が始祖花に固執することはないと言った辺りで何言ってんだこいつみたいな態度で見てきた。

 

「…俺は研究者じゃないので詳細はわかりませんが、所長が代用品を作ったんですよね?だから今まで栽培してたあの花の必要性は減ると」

「そうだよ、扱い方も簡単で量産にも適している。私が作った物の方が良いだろう?」

「長い目で見たらそうかもしれませんがね、人間は急激な変化について行けませんよ。所長のようにドンドン先に進む奴について行けるのも同じ目を持ってる奴しか無理です。少なからず俺は新しい重機に慣れるのと部下たちに覚えさせるので一苦労してますよ、いくらマニュアルがあってもその通りにできる奴なんて一握りです。俺は今しか見えませんよ」

 

 子供を見るような眼で私を見つめるな、何故かわからないがその眼を見ていると不愉快だった。

 

 そういえば、ジョン工事長とは施設拡張うんぬんの話やブランドンがどんな奴だったかとか話してたら何か意気投合してた。ブランドンを理想しか見えない野郎とか言ってたけど、どれだけジェームス博士に心酔してたかわかったし、例え優秀でも研究者としてジェームス博士やウィリアム博士並ではないというのも理解した。私が所長になって前より金が手に入るとか笑ってた工事長はやっぱり俗だなって思ったよ。今では私の助手?のような立場だ、他のスタッフは遊び(研究)に夢中で制御不能なんだ、そうしたのは私だけど。

 

 ブランドンがいつ頃コネクション(闇組織)を創設したかどうかは知らん、H.C.F(ライバル会社)とも接点があったようだがどっちもわからん。特異菌の件もあるしマザー・ミランダが絡んでいるなら私はマークされたかもしれない。

 まあ敵対しなければいいし、仲良くできれば特異菌も手に入るかもしれない。ミランダさんは娘を愛してる母親だからね。娘さん復活に手を貸せば無問題だろう。

 

 …それから黙々と作業に没頭していると腹が減ってきた、レーションが支給されているが美味しくない、高カロリーの栄養剤を口に入れると独特な味に顔が歪む。工事長は平然と食べているが慣れているようだ。

 

 知っていたことだが下手に研究所を外れて移動するとンディパヤ族が襲ってくる可能性がある。アンブレラが根城にしている研究所付近はいないが、まだあいつらはこの遺跡、強いては始祖花(太陽の階段)を諦めていない。無理やり追い出したのもあるが、神の作物であり食すと神に近づく事ができる。と信じている連中だ、諦める方がおかしいだろう。

 

 やっぱ駄目かなあいつらを雇うのは... 表向きでも上手く付き合えたらと思ったが怨みが強すぎる。研究員は無事だったが警備兵が殺害される事件が過去にあったらしい、最近は牽制し合って大事にはなっていないけど逆にいつ襲ってくるかわからないから警備兵は緊張を強いられているようだ。

 

 そして物資の輸送も奴らが邪魔をするから効率を考えレーションが主になると…よし消えてね♪

 

 ウィルスの被験者として使うとしよう。バルド君に哀れな戦士達の配置を聞いた方が楽に狩れるが…まだ彼の教育が途中なんだよな~村に帰さないで教育したいけどそれだと怪しまれるし、終わった後フォローしないと…‥

 

 私の脳内に電流走る。白いヨーグルトのようなレーションを見て思った。

 

 〝豆腐〟

 

「あいつらを豆腐にしてやる!」

 

 私が突然叫んだせいで工事長が咽たがそれどころではない。研究スタッフ達の案もついでに試すとしよう、てゆーか参加させるか。新しいB.O.W.しかも自分たちの開発したウィルス結果を間近で見れるんだ嬉しいだろ。

 

 

 

 

 

 静かになった部屋の中で残された者は言う。

 

 

「気でも狂ってんのか?」

 

 一瞬、ストレスによるものかと心配したがやめた。天才の事を考えるだけ無駄である、特にあの所長の考えはずば抜けて理解できない。金払いは良いので贔屓するが深く関わるとろくなことがないと理解した。手伝ってる仕事も、話し相手になってくれと言うから来てみれば押し付けられた。

 

「図の見直しはやっておくか…豆腐ねぇ... あの臭い食い物にされたら泣いて逃げ出すだろうよ」

 

 鼻で笑い、白く四角い日本食品を思い浮かべながら思い出す。アメリカのスーパーで買い物をしている時、ヤスオ・クモダとか言う日本人が豆腐を食べてみてくれと願ってきたのを。あの時はタダだからと思って食べたが…

 

「味もないし、健康にいいとか言われても不味いっつうの。そういえば豆腐シェイクがアメリカでブームとかテレビで見たな…世の中何がブームになるかわからないねぇ」

 

 もしかして、あの時のヤスオ・クモダが?…‥まさかなぁ。それより仕事だ、工事も進めなきゃならん…食べ物の事なんて考えるんじゃなかった、口の中が最悪だピザが食いてぇなぁ畜生。

 

 ♦

 

 

 

 

 

 豆腐と聞いて思い出す事は?そう『豆腐 Survivor』だ!俗に言う豆腐モードは印象に残るだろう。かくいう私もゲームとしてプレイした際『何で豆腐なんだ』と思いながらも面白かった記憶がある。楽しいと感じていたなら実践あるのみだ!ついでにゴミ(ンディパヤ族)の再利用とスタッフ達の要望(実験)も叶うという一石二鳥である。

 

 ウィルス案や被験者くれ、と言ってきたスタッフに人狩り行こうぜ!と誘うと驚愕したような顔になり、理由を聞いてきた。ふむ、理由付けが必要か?よしやりましょう!みたいな反応するかと思った。

 

 始祖ウィルスを使用しない私が開発したT-ウィルスは感染速度や変異が早いのは理解しているだろう?お前達の案を早く試すに越したことは無いから。それと新しく私が開発するウィルスを試したいなど、それらしい事を伝えると今度は自分たちが襲われる危険があるとかごねる。

 

 実験自体はやりたいそうだが…‥なら警備兵より強い護衛を用意しよう。一応、警備兵はU.B.C.S.の部隊員なのだが質が悪い、単なる傭兵のような連中だ。活躍はあまり期待できない所詮はモルモット部隊というわけだ。

 

 護衛はやはりB.O.W.かな?なんて考える必要は無い!友であるアネットから大量の〝大豆〟が届いている。私が送った手紙で植物をくれと書いたが、まさかの大豆だった。流石にB.O.W.として豆腐は…と思って普通に豆腐を作ったりしてたがスタッフの好き嫌いが激しすぎる。直接的に豆腐が不味いとか言った奴は顔を覚えている。これを機に全身で豆腐を感じてモラオウカナ?

 

 それにしても何で私は豆腐が好きなんだ?―-どうでもいいな!

 

「アネット、君は未来が見えているのか?使わせてもらう!」

 

 そもそもな話、豆腐 Survivor で出てくる豆腐は何なんだ?メタ発言は控えるとして…バイオハザードの世界として考えたらやはりウィルスによる変異だろう。T-ウィルスには無限の可能性がある、時には人を助け、時には奪い、時には豆腐になる。ナイフや銃が空中に浮いたり、豆腐が豆腐を食ってるとか全てT-ウィルスの進化によるもの。そして豆腐は美味しい、ハンクさんも湯豆腐にして食べてる。つまりT-ウィルス万能論で矛盾は解決する以上・・・ハッキリ言って直接見なければ判断できん。

 

「アルフォート所長、何故大豆を見ているのですか?」

「これをB.O.W.にする」

「え」

「これをB.O.W.にする。君たちも準備してくれ、準備が出来次第狩りに行く。数日後だろうけど」

 

 何を考えているかわからん。という目だ、別に変ではないと思うが?プラント42(B.O.W) などの植物系もあるし、T-Veronicaでも植物遺伝子使ってるじゃん。

 

 あ... どっちも世に知れ渡ってないか。T-Veronicaは資料を取り寄せればわかるけど、プラント42の方は偶然できたB.O.W.だったわ。

 

「私の考えでは面白いB.O.W.ができる。君たちのウィルスも見せて欲しい、今回の被験者は生きがいいぞ」

 

 ンディパヤ族の人たち元気があっていいですね~ 先ずは遺跡に残ってる奴らから~ 切って、刻んで、磨り潰す ♪ 一部のスタッフからマジかよみたいな感じが読み取れる。楽しいだろう?君たちも私に意見を言ってくる連中並みにマッドになってくれよ。その方が面白い。

 

「…所長、ケルベロス(MA-39)の臨床試験も同時に行ってもよろしいでしょうか?」

 

 臨床試験と言っていいのか?まあ、ゾンビ犬もといケルベロスも1988年だと実戦投入はまだできていないからデータが欲しいのだろう。ゲームならウザい連中だが現実だと犬笛一つである程度操作できてしまう初見殺しに過ぎない。ドーベルマンを一匹使用してできたのが犬の本能を覚えている攻撃的なゾンビ犬。耐久度とウィルス感染のリスクに加えて人間の死角から近づいてくる俊敏性…武装していようと普通の人間に対処は難しいだろう、普通の人間ならね。後の世にBASSやらどこかのエージェントなどからしたら片手間で処理される個体に過ぎない。クリムゾンヘッドのような特殊個体になるなら考えを改めるが…私が作ればいいじゃん!

 

「いいですとも!」

 

 

 そうだよ、私なら何でもできる。豆腐を作るついでにその因子を感染させる個体も作る。面白くなってきた!設計図書いてるより圧倒的に楽しいわ。でも私考案の地下施設ができたら…頑張るしかない。それはそれとして後で頑張ろう。

 

 移動の最中、動物系担当のスタッフ君がケルベロスの良さとか意見を聞いてくる。▽が表示されてロッテ・クラインと表示された。一応スタッフ達の名簿も確認しているがほぼ覚えていない、私の場合▽で名前が確認できるから問題ないと思ってる。

 

「それにしても雰囲気が代わりましたね所長。ここに来た当初なんかすぐ個室で研究を始めて会話もしない、通路で会った我々に対して被験者を見るような目でしたのに」

「そんなに酷かったかい?」

「ああまあ。今だから言いますがブランドン前所長が解任されてアルフォート所長になる際、我々は反対する者が多かったです。上層部に移動願いも多数あったそうですが許可が下りずイラついてる連中もいましたね、あんな小娘がとかよく耳にしましたよ」

 

 でしょうね、私でもそんな奴が上司とか嫌だわ。記憶を失う前の私は駄目だな、まあ安心したまえ今の私はパーフェクトだから。

 

「で。どうだい?私が所長になって」

「評価が真逆になりました。それどころか前所長と比べて、どれだけ凄いか話題が尽きませんね。前所長はジェームス博士が亡くなってから落ち目でしたし・・・培養液もそうですが、何よりウィルスです!まさか始祖ウィルスを使用しないでT-ウィルスと同様な性能…違いますね、身体に与える影響を調節できる分、所長のT-ウィルスが優秀です。定期的に摂取する必要があるとはいえ難病の筋ジストロフィーすら治せる薬として使用できるとは思いませんでした。それを我々に平然と伝えた所長を今でも思い出しますよ…‥それと予算が増えたことも人気を押してますね。研究者にとって予算は命綱、それを太くしてくれるなら文句も無くなります」

 

 研究者としてのプライドは大事。だけど世の中、金、金、金。何かやりたい事があっても予算が無いから、とか理由付けによって却下された研究や会社の都合で研究できない連中はアンブレラに大量にいる。

 

 そもそも、表向きは製薬会社としての側面から入社する連中が大半だ。裏に関わっている連中の親族とかスカウトでもされない限り表から裏になる過程を歩むのだ。アンブレラ流入社式(絶対服従の誓い)を経て必ず。確か未来で『アンブレラ ジャパン』の公式サイトから内容が見れたはずだ。

 

 例え恐怖や忠誠心を植え付けようと人間の本質は変わらん。俗に言う〝善人〟思考の連中は裏切りはできないから表向きの薬を中心に研究してるふりをして『デイライト』なんてヤバい物を作る奴もいる。善人に限らず自分の研究が上手くいけば裏切る連中のたまり場、それがアンブレラ社である。これも全てスペンサーおじさんの卑劣な指導によるもの…

 

「ロッテ研究員、君から見て私はどう見える?」

「研究者としても上司としても尊敬できる人物かと。何よりフレンドリーなのが良いですね」

「ありがとう。じゃあ質問を変えるが…私のンディパヤ族を狩る事に思っていることはないかな?」

 

 気づかないとでも思ったのか?ケルベロスの話で流そうとしたけど、目が一瞬非難するようになってたぞ。お前も同類だろ?

 

「…いえ」

「本音を言ってくれ」

 

 不安材料を残すと面倒だから早く言え。スペンサーおじさんの末路を考えたら小さな芽も潰しておいた方が良い。私の真剣な眼差しを見て覚悟を決めたのか、文字通り彼の本音を聞いた。

 

「私も研究者としてウィルスの魅力に囚われています。被験者に投与してB.O.W.にしている私は傍から見たら狂っている」

「そうだな。私もそうだ、我々全員そうだ」

「だからこそ私は割り切っているのです。被験者は被験者、一般人とは違うと…それでもどこか今更かもしれませんが良心でしょうか?それを感じて人を扱うB.O.W.から犬やその他生物などから作成する班に移りました」

「自分の作成したB.O.W.で人が死んでも何か感じるかい?」

「…強いて言えば無駄に痛めつけるような行為をさせないように殺傷能力を高めたいとは思っています…‥ハハ、やっぱり変ですよね」

 

 同じ人間に対して行うという逃避感、罪悪感のようなものに苛まれると…‥あほくさ。と発言してもいいがそうだな…

 

「ロッテ君、君には家族はいるかい?」

「ええ、2歳の息子が一人」

 

 ぼくのおとうさんは ひとをころす へいきをつくってます…‥私的にはもっと作れと言っておこう。子供の見本となる大人になれと世間はいうが、それは俗に言う信念が強く、己の進んだ道を恥なく伝えられる人物になれという事だと思う。だから私がお前もその仲間に入れてやるってんだよ!

 

「慣れというのは恐ろしいな、人を殺めるという行為を平然としている我々は正気じゃないのだろう」

「…そうですね」

「だがそれを恥じるというのは違う。ましてやその行為に対して逃避感を感じるなどお門違いと言っておこう」

 

 …良い感じに聞き入っているな。悩みがある者に対して第一に伝えることは理解だ。貴方の行いは間違ってないですよ~でも考え方を変えてみましょう…‥心理誘導なんて所詮、論点を別角度から見せればいいだけだ。

 

「我々が行っている行為は人助け(・・・)と考えてみなさい」

 

 理解できないという顔だ。まあ、B.O.W.を作ってそれが人助けです。は意味がわからないだろう、だがそれでいい。

 

「そもそもの話だが、現時点、現時刻をもって人は何人死んでいる?戦争、紛争、動乱、内戦…‥我々が関与しなくても人は死んでいる。必死に守るはずだった物達が蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ。人が人を殺し、怨み憎み…その連鎖が今もなを続いている。人間は実に愚かしい、人が人を殺めるという行為が無くならない限りこの連鎖は続く。止められないのは悔しいでしょうね…‥」

 

 論点のすり替えとは、思い詰めている事象に対する感情の融和である。別の目標を持たせるのではない、事象を構築する要素を変える。視点を変えてみましょう、ということだ。それに冷戦時代を体験している我々からしたら今の世が偽りの平和と感じ取れているだろう。後の世を知っている身として、本当に偽りの平和なのを知っているが。実際冷戦後は紛争・内戦が絶えなかったからな。

 

「…その連鎖を止めるのがB.O.W.だと言うのですか」

「なに深く考えることはない、考え方次第という事だよ。私なりの考えを述べただけさ…嫌々やるより目標を持って励んでくれというささやかな願いだよロッテ君。私は君もここにいるスタッフ達全員も自分たちが携わっている事に対して負い目を感じてほしくない」

 

 人の感情はすぐには変わらん。私流セラピー(仮)を一度行ったぐらいでは時間と共に元に戻る、その人物に少しの変化をもたらせば成功だ。今回の場合はB.O.W.に対する逃避感?が弱まれば成功とする。

 

 ぶっちゃけB.O.W.作ってる時点で負の連鎖を作ってる。戦争の道具を我々が作って売って儲けてまた作る無限ループ。私が言った真の意味での人助けとは、戦争を止める側じゃなく、行う側を助けるためさ。それに私は嘘を言っていない、文字通り考え方次第だよ。

 

 私と話してから彼は何か思い詰めているようだが長話は丁度良い時間つぶしになったようだ。実験室もといペットショップに着いた…

 

 

 

 ワンワンワンワンワンワンワンワン…‥

 

 

 うるせぇ!大量の犬がオリの中で叫びまくってる。防音のせいで扉を開けるまでわからなかった。野生の勘か、このままだと何かされると感じ取ってるせいか落ち着かなようだ。精神安定剤的な物摂取させないのかよ…ロッテ君に聞くと摂取させてこれでも落ち着いてるそうだ。ここにいる全頭が成功するわけじゃないから多めに予備を注文しているのだと。注文数は把握してたけど改めて見ると圧倒されるないろいろな意味で。

 

 

 

 

 B.O.W.の個体を選別していると、妙なスタッフを見つけた。というより…‥めっちゃアンダーソン君って言いそうなスタッフが何食わぬ顔で作業に参加していた。しかも黒いグラサン…おいィ?

 

「失礼、お手伝いをと思いましてアルフォート所長」

 

 ▽アルバート・ウェスカー

 

「噂は聞いております、尊敬する限りです。私はリチャード・ノア。最近来たばかりのスタッフですがよろしくお願いします」

 

 映画版のウェスカーじゃないか何でここにいるし!なに映画基準なのゲーム基準じゃないの…それよりお前まだこの時期だとT-ウィルスの二次感染を調査中だろうが!しかも偽名だしスパイ活動かよ、スペンサーおじさんからの依頼か?混乱するなチキショー。

 

「所長、リチャードはとても優秀な新人ですよ。所長のT-ウィルスの利便性を理解するだけじゃなくすぐに応用案もいくつか提案してます」

「あ、ああそういえば…ここのチームから実践したいと思う案があったね」

 

 自分の趣味に夢中であまり見てないけど…『T-ウィルスの効果を調整できるなら変異させないで強化もできるんじゃないか?』という案を見たのが印象に残ってる。私が作ろうとしてたウィルスを当てるとは優秀なスタッフがいるなと思ってたけどさ…‥よりにもよってお前の案かよ!

 

「ところでアルフォート所長、ケルベロスにご興味が?」

 

 それはこっちのセリフだ。何でここ?ウィルスに興味あるなら私が担当してる調合班もといウィルスを直接扱う班に来ればいいのに…逆か、スパイ活動なら人目の少ない場所に出入りできる方がいいのか。ケルベロス自体の価値というか、細胞の変化?進化の過程?それらは粗方済んでるし重要視されてない。

 

「ケルベロスに新たな特性を加えようと思うんだ。私が新型B.O.W.を作るに当たって感染を広げる役割をね…良ければンディパヤ族を狩る事に君も参加するかい?」

「あの部族を狩るのですか?よろしければ参加させて頂きます」

 

 即答かい。やっぱりウィルス調査と兼ねてるのかな、まあいいか。それにしても違和感が凄い、ウェスカーが敬語で話してくるのもそうだが単純に見た目が浮いてる。いやゲームのムービーとかでも浮いてたけど…グラサンに白衣そして濃い顔に謎の威圧感、全てが似合わんな君は。やっぱり黒ジャージとかの方が良いよ。そして椅子に座ってドヤァァ顔でいれば究極のラスボスが出来上がり。

 

「スタッフ達のB.O.W.も狩りに参加させる。共同演習、B.O.W.同士の共和制を確かめて実践を考慮して行わせるぞ。どうなるかな?」

「演習ですか…あの部族は実戦には値しないと」

「?B.O.W.は人間を殺すための兵器だ。既に殺せることがわかっている兵器を使うだけなのだから演習だろ」

「…」

 

 当然のことを聞いてくるとはボケたの?だから前髪がハゲてるのかい?そんなだからネタにされるんだよ。

 

 なんかこいつの事…哀れに思えてきた。そういえば私、こいつの血液や細胞が欲しかったんだった…‥待てよ、今のこいつが成長して究極のラスボス(笑)に最終的に進化予定なんだよな。ゲーム版みたいにダークヒーロ―的なカッコよさがない状態で…カッコよさが無くなったウェスカーなんて単なる強い小物じゃないか、そして私はそんな奴の力で超人になってヒャッハーしようと思っていた。

 

 

 めっちゃカッコ悪い!

 

 

 ゲーム版と映画版が混ざって私自身も把握できない部分が多々ある。だがウェスカーという存在が地位の無いモブで終わることはないのは運命が確定している。つまり後の世で何かしらの事をして重要人物(クリスなど)と敵対関係になってグラサン投げて超人アピールをする未来が見える見える。

 

「…なにか」

 

 なにかじゃねーよ。このままだとお前人生ネタになる確率が高いぞ…お前は運がいい何故なら私がいるからだ!感謝しろよ、私が本当の究極のラスボスにしてやる。

 

「君の提案について少し話し合いたいことができた。B.O.W.の調整や演習に向けた計画に数日かかるだろう、この後私の部屋に来れるかい?」

 

 ちょっと急ぎ足かもしれないがお前を究極のラスボスにしてやる。と伝えたところで警戒されて終わる、そもそも超人薬の案を出したから手始めにお前を超人にしてやる!は誰でも拒否するだろう。

 

「わかりました。私の案に不備がありましたか」

「いや逆だ。あの案は君だからこそ成功すると確信している」

 

 …スペンサーおじさん。貴方をハートキャッチしに行く息子?さんの憎悪的な何かがやや増大するかもしれませんが申し訳ございません。生きている間、資金を湯水のごとく入金お待ちしております。

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 男が首回りを爪で搔いている。それに伴い、皮膚が徐々に剥がれていく様は傍から見たら痛々しいものと感じられるだろう。だが血が出ていない、それどころか剥がれた皮膚の下から別の男の顔が見えてきた。

 

 仮初の顔を脱いだ人物は、やや赤みのある目を隠すように黒いサングラスをかけて椅子に座る。内心を読み解くことはできないが充実感と怒り、それとも別な感情か…彼はただ声も出さず笑うだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『アルフォート・S・レッド を調査せよ。彼女の研究成果並びに研究途中の物品、不審な行動は速やかに報告せよ』

 

 

 

 

 

 

 スペンサーの考えが読めない。その疑問を持ち始めながらもT-ウィルスの二次感染を調査していた。T-ウィルスだけでも十分採算が取れるにも関わらずB.O.W.の開発、感染リスク等は既に周知済みでありながら宿主と成り得る生命が溢れた森の中に研究施設を置く…最近ではラクーンシティ郊外に新たな地下施設の計画を進行中と聞いた。リスクの観点からラクーンシティに執着する意味も読み解けない、地下大規模施設NESTを建造している現状で新たな施設が必要なのか、それともラクーンシティに隠された何かがあるのか…

 

『あの女より私の方がクソッ!G-ウィルスさえ完成すれば…もっと濃度を上げろォ!―--』

 

 …ウィリアムの癇癪は今に始まった事ではない。興味を抱いたのは対抗心を持った女の方だった、アルフォートがアフリカ研究所主任となってからすぐにT-ウィルスに対応した培養液の開発・周知。利益を考えないやり方は読めない人物と重なるところがあった、奴の調査命令はタイミングを計っていたように舞い込んできた。

 

 

 

 

 

 今のアルフォートはまるで別人であるかのような変わりようだった。幹部養成所時代から見てウィリアムより他者を人と認識しているか不明、実験記録の改ざんに無断で実験をしていた可能性まである。それでも所長に推薦される人物。頭の回る狂人ほど面倒な輩はいない、その時は資料だけの判断で接触比率が低い班を中心に回っていた。評価はどの班も似たような反応、一部を除いて今では尻尾を振る犬である。

 

 当初は新たな所長に対して不信感が見られていたが評価を改めざる得ない事柄の連続により不信感は消えていった、それどころか前所長の悪評が出てくる始末。人間の浅はかさを感じられる良い施設である。アルフォートが新たに作成したT-ウィルスについては既に他の施設にデータが回っている為割愛する。本来のT-ウィルスと同様な働きをすると確認しているが、作った本人はどこか納得していない様子が見られる。

 

 接触する機会を伺っていたが丁度良いタイミングで奴から誘われた。数多の実験に基づくウィルスによる肉体強化案、ウィリアムに提案予定だったがアルフォートならすぐに実現可能かもしれない。その答えは文字通りすぐだった…

 

『あの案は君だからこそ成功すると確信している』

 

 奴からの誘いを文句は見事なものだった。俺だから成功する…その時点で奴の計画は始まっていたのだろう…‥

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウェスカー計画を知っているかい?』

 

 

 

 

 

 

 

 スペンサーが他の者に話す訳がない情報を知っている。何故お前が知っているのか、それは事実なのか、今の状況も奴の掌の上なのか、疑心が心を満たす中で奴の…アルフォートの言葉が脳に響く。

 

 

 

 

『スペンサーは所詮…先の時代の…… 敗北者』

 

 

 敗北者…‥アルフォートは嘲笑う、言葉ではスペンサーの事を言っているが…‥

 

『やめろ……』

 

 言葉を発するのが意外だったのか、一瞬驚いたように口を閉じた。挑戦的な口元で再度続けた。

 

『何十年もの間 世界に君臨するも 「王」にはなれず…何も得ず……!!終いには口車に乗ったウィルスという名の希望にすがり…!! それらを得る為に死ぬ!!!実に空虚な人生だと思わないかい?』

 

 アルフォートは部屋の奥からウィルスだと思われる試験管を見せて言うのだ…

 

 

 

 

 

      だが君は違う

 

 

 

 

 君は王になる為に生まれてきたのだ!!!

 

 

 

                         

 

 

 

 拳に力を籠める…全身から感じる鼓動、己という存在が全くの別の存在になったかのような解放感。意識すればまるで時が止まったように感じるほどの意識の外側、何でもできるという万能感に酔いしれそうになる。

 

『君の力に弱点は無い。でもだ…油断・傲慢はしない事だ。力とは所詮道具、使い方次第で良くも悪くもなる』

 

『…お前の望みは何だ』

 

『そうだな…君という存在を頂点にする社会構築。それが望みだよ本当に、君を頂点にすることで私の望みが叶う。それまで君をサポートしたいんだが―ーああ君は私を利用し続ければいいだけだ、手始めにアンブレラを乗っ取ろうか?』

 

 

 

 

 

『…いいだろう』

 

 

 その言葉に満足したアルフォートは<頂点>という曖昧な言葉を改め―ー

 

 

 

 …‥君は世界の王になる男だよ…‥

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 

 

 

 その日も普段と変わらず平穏とは違うが変わらない日常が過ぎようとしていた。

 

 

 

 男たちは体中に戦士の模様をペイントをし、遺跡の各所で獲物を待っていた。奴らは銃で武装している、正面から立ち向かっても狩られるだけと戦士たちは理解していた―ー正確には彼らは戦士ではない、戦士のように勇敢になろうと盲目になっている一部の者達である。

 

 ンディパヤ族は古くからアフリカの奥地で暮らしてきた先住民族として誇りがある。この遺跡も彼らの先祖たちから代々受け継いできた遺産。それが今や侵略者に土地も、太陽の階段も奪われ蹂躙されている。

 

 奴らと戦う!その考えに至るのも必然、何度も奴らと戦い仲間が死んでいく。奴らの武器は我々の使う武器よりも優れているなぞわかり切っていた。だが止められなかった、当初のような突撃も今や行われず奇襲による一撃離脱を繰り返す毎日。

 

 油の詰めた壺を上から落とし火をつける、爆弾を矢に括り付け狙撃する、物資を奪う…そんな毎日、しかし徐々に戦う戦士達が減っていく。死んだからではない、戦士たち自らが戦う事を止めていくのだ。村に戻り平和に過ごす、怒りこそ感じるが止めはしない。皆感じているのだ…

 

 

 疲れた…‥

 

 

 仲間が、侵略者が…多くの者が様々な形で、この遺跡で死んだのだ。獣を狩るのではない、人を狩る…その行為は果たして戦士に顔向けできる事なのか?どちらの血かもわからない汚れで遺跡を犯す。奴らは侵略者だ、確かにそうだ。憎むべき敵なのだ、攻撃してきたのも奴らだ。だが本当に戦うだけで良いのか…自分を納得させる理由を考えてしまった者から帰っていく。

 

 彼らは気づいている。このまま戦っていても問題は解決しないと、今も戦う物達は最早維持である。または戦いの中で親しい者を狩られた憎しみかもしれないが、一つ言えるのはここに残った者達は戦う意思のある者しかいないのは確かだ。

 

 

 殺してやる…‥

 

 

 息を殺し今日も獲物を待っている。空を飛ばれると何もできないが空を経由するのも限界があるのだろう、必ず奴らはこの遺跡を通る。前からそうなのだ、今回もそうだろう…精神を研ぎ澄ませ待機していると妙な音が聞こえてきた。まるで水に濡れた何かを引きずるような…

 

 

 

 な、何だあれは白い怪物!?…‥

 

 

 

 ―ー物陰から見える何かは、表面が水で湿っているかのように半透明な液体で薄く覆われている。おびき寄せる為に設置した松脂の明かりに照らされてどこか神秘的であるとさえ感じられる。己は美的に思える知識強いては美学なんて学んだ事は無い―ーなのに―ー

 

 

 

 ふつくしい…

 

 

 

 四角い肉体に白い体、手足は無く、下半身を前後させて滑るように移動している。その度にピチャピチャと水滴が飛び散り、隠れていた自分にも僅かに当たってしまった。自分は恐怖心を持っているはずだ、人並みに大きく白くて四角い化物なんて見ているなら未知なる恐怖によって逃げるなりするべきなのだ。冷静に状況を判断できているのに…何故かあの化け物は完成された芸術品であると心で理解してしまって目が離せない。微かに匂う自然の匂いが己を吸い寄せようとしているのを理性で我慢する。このまま本能で前に出れば我慢できない…

 

 

 たべたい…‥

 

 

 まるで極上肉が歩いているかのように、自身の好物が目の前にあるかのように涎が溢れてくる。理解した、自分は今、前に出ようとしていた―ー鏃の先端に触れる、ほのかな痛みにより理性を取り戻し状況を見る。

 

 

 目や耳もないように見えるのに、人のように上半身を左右に向けて確認しているかのように振舞っている。だが見た目通りなのか索敵能力が低い、物陰に隠れていた自分を見つけられずに来た道を戻っていく…怪物が離れていくにつれて徐々に頭の靄が晴れていくように感じた。

 

 

 何だったんだ…

 

 

 どこか冷静じゃなかった自分を認識し、ここは危険だと改めて判断した。仲間を連れてすぐに逃げるべきだ、男は一目散に、しかし気づかれないように静かに移動を開始した。

 

 

 変だ…仲間がいない…‥

 

 

 どこを探しても見当たらない…移動したであろう跡はある、しかし仲間に知らせる印がない。計画が変更になる、敵が来たなど何かしら問題があれば印で教え合う事にしているのに…もう逃げたのか?

 

 その考えに行き着くのに時間はかからなかった、自分が背にしていた壁側から影が見えた。振り返りその正体を見た時、前身の筋肉が硬直したような感覚を覚えた。

 声も出せず動けない、野獣を狩る際に生命の危機を感じ取った事はある。これはその感覚に似ているが逆なのだ、理解してはならないという危機…それを目にしてはならなかった。

 

 ―ー全身の皮を剥がれたらこうなるであろう―ーどこか冷静な思考で新たな怪物を見てしまった。長い舌を出しながら周りを探るように頭を動かしている、長い爪で器用に壁に張り付いてゆっくりと降りてくる。顔に当たる部位には眼がない、頭蓋骨ごと剝ぎ取られたように脳と顔に位置する部分が結合している。その悍ましさ故に戦うという選択は最早存在しなかった。

 死の音が聞こえるたびに僅かに舞う埃が不愉快と初めて感じた。普段は気にならない遺跡の土埃でその姿を少しでも見逃してしまったら自分という存在が無くなるかのような感覚が支配する。

 

 

 侵略者たちは邪悪なる神の使いだった!関わるべきじゃなかったんだ…‥

 

 

 最早どうしようもない、邪悪なる怪物が動くたびに心の中で神に祈る。これは罰なのかもしれない、次は私がこのようになるのか、仲間達は本当に逃げられたのか…‥不安が徐々に募るのを感じる。

 幼き頃から信仰する神は答えない、だが信じる者は救われる。恐怖で縛り付けられながらも心の在り処に己を置いたが故に。…祈りは届いた…震えて動けなかった自分に気がつかず邪悪なる怪物は行ってしまった。

 

 遠く離れていくのを確認しながら戦士としての在り方なんぞ知らんと一目散に出口に向かった。自らが助かればいい、仲間も逃げたはずだ、この際理由なんてどうでもいい。とにかくこんな怪物の住処にいたくない!

 狩人として日常的に動物を狩っていたが故に本能で理解していた。さっきの怪物は目がない、近くに獲物がいるのに襲いもしなかった。気づいていないのなら音を頼りにしているのではと。最初の怪物も…あれは…どうなのだろう。

 そんな事はどうでもいい。村に戻り一刻も早くこのことを伝えるのだ…‥ゆっくりと、しかし確実に移動していると出口の方から仲間の叫び声が聞こえた。助けに行きたい気持ちも出るが…近くの窓がある場所から様子を見た。

 

『あちゃ~失敗したな』

『ある意味成功ではないでしょうか。B.O.W.の誘導に適しているとわかりました』

『まあ…本来の需要と変わらないけど相手が違うんだよ。もっと人に食べて欲しかった』

『どちらにも需要があると考えれば…ハハ、私は豆腐が嫌いになりましたが』

『それはいかんな。豆腐の良さを知るために講義でも開こうか』

 

 奴らだ。何人も互いに笑いながら…何故動いているのかわからないような傷だらけの犬そして白い犬の近くで観察している。

 犬は一心不乱に最初に見た白い四角い怪物を食べ続けている。

 

『それにしても所長の新型は凄いですね。豆腐もそうですが、ケルベロスに同じ特性を追加するなんて』

『意外と苦労したよ、豆腐はいいとしてケルベロスはね。植物のDNAを取り入れたのはいいけど量を増やし過ぎると完全に植物になってしまう。成功した個体も本来のケルベロスより動きは鈍いし耐久度も低いときた。別個体で再度挑戦だな』

『それを差し引いても強力だと思いますよ?ひと噛みされれば豆腐になるなんて何ですかあの性質。T-ウィルスの力だとしても体中のゲノム情報を書き換えるなんて規格外ですよ』

『その規格外を今後も作るのが我々だよ。期待してるよ君たち!』

 

 

 白い四角い怪物…あれは…

 

 

『ハハハっ任せてください。そうだ豆腐を食べさせたB.O.W.の知能向上効果ですよ!いっそのこと全ての個体に試してみませんか!ケルベロスで感染前程度の知能回復が見られたのなら別のだって…あれだ、タイラントでしたか?あれにでもどうでしょうか。資料だと知能面に問題があるようですし』

『向上させすぎも問題なんだがな…裏切りのリスクを高める行為はしたくない。それに教育にも時間がかかる。現状は我々のB.O.W.バリエーションを増やすとしよう』

『ハハ、裏切りって所長。それだとB.O.W.に意思があるようじゃないですか』

『フフフ、さあどうだろうね。兵器となった存在に意思があるか…ないか。どっちにしても面白いだろ?』

 

 今も中心となって話している存在。少女とわかる容姿でありながら他の者達を先導するような立ち振る舞い、奴がここの親玉と思うのに時間はかからなかった。

 闘志が…いや殺意が蘇る。まだ自分は武器を捨てていない。ここから狙い撃てば混乱するはず、弓に矢を構えゆっくり引いていく…人を人として見ない連中。真の意味での怪物共に鉄槌を!

 

 

 

 

 

 ベチャ―ー…小さな音だった。顔のすぐ横に落ちるように水滴が垂れてきた。遺跡故に雨漏りなんて自然に起こりうる事なのだ。気にすることはない―ーーだが水にしてはとても…重い音だった。

 

 

 

 

 ―ー肩に生臭い液体が―ーー

 

 

 

 

 

 

 

『そこの君もそう思わないかい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1989年と言えば東欧革命が有名だろう。東ヨーロッパの諸国が共産主義から抜け出したことである意味ではソ連崩壊を暗示する出来事の一つとして後の世に語られる。

 それらを成功させた要因は主にテレビの力とされている。規制はしていたが情報拡散速度が手紙や言伝などの比ではない、結果的に革命の増長を許してしまった。それからベルリンの壁、数多の革命強いては独立などを経て冷戦の終結となる。その過程の話は色々とあるが共産主義という悪を市民や弾圧を受けていた国々が立ち向かい倒した美談で占められている…本来ならね。

 

 この世界においては我々ことアンブレラがいる。こんな美味しい状況下で動かないわけないでしょ?民主化革命を増長させた民主派・改革派が実権を握る裏にはアンブレラがいる…今までの歪なバランスが崩れて革命という名の内戦時代に突入させる。そして武器を売って儲けて補充してを繰り返す楽園に早変わりさせる、正確にはこれからそうなる予定。

 

「これから地図を覚えるのに苦労するぞバルド君。頑張って覚えようね!世界史が終わったら数学の勉強、そして科学、物理学、経済学に帝王学、心理学に…うん!全部ね。細かいけど食事のマナーとかもやるから」

 

 目の前の少年は目が死んでる。しかし覚えようとする意志は死んでいないようだ。今もなおパソコン上に出された問題を解いている。

 

「…全部できるようになったら皆を救えるんだよな」

「そうだよ。無知は無力だと思い知っただろ?バルド君はあんな奴らを出さないように頑張って知識を蓄えるんだ」

 

 豆腐の実験から2~3週間経った。バルド君の情報から人数もわかってたしスムーズに狩りができた。その後にバルド君やンディパヤ族の集落にお邪魔した…B.O.W.は連れて行ってないよ、護衛はいたけどね。まあ、今後のお話を少々しました。現実的にお互いに協力できる関係、石油施設作るので雇われませんか?と言う話だ。ぶっちゃけ未来でトライセル社がやってた表向き起業を先取りする形だが。

 

 結果だけ言うと…微妙な反応だった。当然だけど敵が突然仲良くしましょう的なことを伝えに来たらね、遺跡で歯向かってきた連中は射殺したことにしたし(回収したけど)…信じられるわけがないよね。バルド君を仲裁役で入れてみたけど警戒心が取れないから、お土産だけ渡して帰ってきたよ。バルド君は正式に私の助手?見習いという事でお預かりさせてもらった。バルド君の家族は病死していたからスムーズに話が進んで楽だった、バルド君自身も変わりたい意思を伝えてくれたから私も頑張っちゃうぞ~

 

「アルフォート、俺はなれるのかな…アルバート・ウェスカーって奴に」

 

 そう!私はこのバルド君を第二のアルバート・ウェスカーにしよう計画を実行しているのだ。そもそもウェスカーって個人を指す名じゃなく、プロジェクト・ウェスカーから取っただけだしね!私が人工ウェスカー作っても問題ないやろ。問題はこのバルド君が少し優男ぐらいかな?優しいアルバート・ウェスカー…まあええやろ、時が経てば腐る腐る、人間は腐る生き物だから問題ないな!

 

 ああそうだ、本物のウェスカーはベロニカを取りに行っているよ。書類上はスペンサーの依頼云々でゴリ押しするけどね…当初はルーマニアに飛んでマザーミランダからE型特異菌奪取でも頼もうかと思ったけどさ、ぶっちゃけ無理じゃねと思ったわけよ。だって菌だぞ、普通に対策しないで突撃させたら侵されて終わりだ。あの最強のママを目指す彼女に勝てた、最強のパパはある意味特別だったから例外中の例外だろう・・・推定47~48歳のゴリラが暴れてたけどあれも例外ね。あのゴリラは何なんだろうね?方や吸血鬼擬き達とホラー的なRPGしてる中でスーパーロボット大戦したり、腕の骨が折れるどころか心臓が取れたりしてる中で銃火器とその肉体でゴリ押し攻略してる怪物…どっちも怪物じゃねえか!

 

「ふぅ、バルド君…君も怪物の世代に生まれたようだな」

「突然なんだよ」

「我々の同期は身体能力で数々の怪物を殴り殺し、ダイヤモンド並の意思でゴリ押しするゴリラだからね…」

「アルバート・ウェスカーって人はそんな」

「あ、ウェスカーは暗躍するけどどこか抜けてるタイプの強化人間だから」

「本当に俺は大丈夫なの!?」

 

 

 大丈夫、大丈夫だよ?…あのゴリラのDNAからB.O.Wでも作った方が強くなれるかもしれん・・・いや、アルバート・ウェスカーとゴリス…じゃない、クリス・レッドフィールドは未来永劫ライバル的な立ち位置でいてほしい人物同士だ。私個人的な意思であるが、そうあってほしい。だから魅力的でも使わんぞ…たぶん。あれ?でもどうなんだろう、顔やオーラが悪系にしか見えないゴリスだと檻に収納されちゃうのかな?檻の用意しておこうか、ゴリラの筋力なら檻ぐらい壊しそうだけどな!ウホウホ!

 

「まあ、少なからずゴリラより筋力を上げようか?100t以上の大岩を動かせるぐらい」

「俺に人間やめろってか!?てかゴリラでも無理だろ!」

 

 できるんだよな・・・ppp…お、雑談していたら我らの主役から無線だね。早くT-Veronicaが欲しい、アレクシアは寝てるんだから楽だったろ?

 

『…どういうことか説明してもらう』

 

 何が?T-Veronicaについて?虫のDNAと植物について説明しないと駄目?…そんな事を考えていると

 

『ああ運命の人!お待ちになって!』

『離れろ・・・アレクシア・アシュフォードは生きていた』

 

 ・・・は?

 

 

 





 この物語を動かすのが、いつオリ主一人だと錯覚していた?
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