ありえない現実を見ると人は動けなくなるんだ。いや、何でアレクシアが起きてる…それよかウェスカーさん、10歳ぐらいの子にナニをした!お前はエクセラとか胸がある奴と…は!そういえばレベッカの写真を大事にしまってる奴だった。でもあれはS.T.A.R.Sメンバーとの…待て待て脱線してしまう。
「こちらが聞きたいんだが、そのお嬢さんはどうした」
『…南極基地の潜入は問題なかった。ベロニカを探して』
『私がベロニカよ、一緒に愛の』
『黙れ』
イラついてる声と少女の声が混合しているように聞こえる。相当近くに張り付いているのだろう…マジでどうなってんの?アレクシアは自分以外の存在は下僕か奴隷、下手すれば人とすら見ていないような残虐的思想を持って生まれた存在だったはずだ。それに今の時期なら冷凍睡眠状態で動けない…例え時期がずれていたとしてもここまでの性格の変化はありえない。
『ちょっと、アレクシア通信の邪魔よ…ミレーニア』
…また別な女の声がする。イレギュラーが多すぎるぞ!
『ミレーヌ!離しなさいよ!』
ミレーヌ?…どっかで聞いたような…今はいいか。まだ騒いでいるようだが、やっとウェスカーと通信できる。
『…こいつらは何だ』
「まるで意味がわからんぞ」
『基地最深部まで特に問題無く進めた。館のような場所出たらこいつらだ…』
こいつらだじゃねえよ!館ってえのはわかる、南極研究所の最深部だ。そこまで行けたのは流石だと誉めてやろう、だがその後はギャルゲーよろしく女の子たちがお出迎え?意味わからねえ、こちらの情報が漏れてるだと…私の近くに裏切り者がいる?いや、今回の事を知る事なんて誰もできないはず、例え移動するウェスカーが誰かに監視されていたとしても先回りできるはずがない。だって冷戦状態だからゲーム時のようなジェット機なんて使えないし、ロシアまで入国後は船を経由した侵入だ。
『私達が何故いるか、貴方のオペレーターではわからないわ。アルバート・ウェスカー…代わってくれる?』
ミレーヌと呼ばれていた、声からしてアレクシアぐらいの歳の女の子から伝えられた・・・思い当たる人物を今思い出したけど…いや、だがあり得るのか?ウェスカーは彼女に無線機を渡したようだ・・・いや何普通に渡してるの貴方。まあいい、私の想像通りの人物なら更にカオスな状況になってしまう。いやもうカオスだけどね?
「…ミレーヌ・ビアズレーか?」
『あら?知ってるのね、姉さんが思ってたより賢いのかしら』
クスクスと笑う小さな声…ミレーヌ・ビアズレー、細胞レベルから遺伝子工学で生まれた天才であり、ある意味ではベロニカの原型となった小説に出てきた人物の筈だ。だがありえない!『北海の妖獣』はどの時系列とも嚙み合わない話だったはず、例えこの世界にいたとしても1989年の現在の時点では7~8歳…無線故に姿は確認できないが、そんな歳でわざわざアレクシアと、しかも南極基地にいるだと?更にありえない…それに・・・ミレーヌ・ビアズレーに姉は存在しない。
私が存在する故の変化か?だとしたらギリアムもいる可能性がある…スペンサーが送った?ありえないな、クソッ、そもそも姉とは誰だ!ビアズレー家が存在すると仮定した場合、他の小説上のメンバーがいると考えた方が良い、だとするとスペンサーの脅威度が桁違いに跳ね上がることになる…もしかして私と同じ存在が暗躍しているのか!?
『貴方のような皮を被っただけの存在と一緒にしないでくれる?』
先読みして答えやがった。てかふざけんな!私が凡人と同列だとォォんんんんんーーー許るさーん!!生意気なガキィィが…だから『脳みそだけ不気味に発達した失敗作』何だよお前は!私はパーフェクトなアルフォート様だぞォおい!もう許さねえからな?
「目的は何だホムンクルス?人間の真似事がお好きのようで何よりだ」
『私は人よ…貴方みたいなまがい物と違う…』
完成された人間を作る実験により生まれた存在、それがミレーヌ・ビアズレーだった、少なからず小説では…反応からしてそこは変わらずのようだ。だとしたら、姉と呼ばれる人物は作る時期を早めただけかもしれん…そもそも小説版まで取り込んでる世界なんて想像できるか!スキルでも無かったぞ・・・姉という存在が生み出したとでもいうのか…なら個人の才能・・・・・はぁ?悔しくねえし。
『口だけは回る愚者に教えてあげる…アンブレラは搾りカスでしかない。貴方が動くより前から姉さんは動いていたのだから』
つまりアンブレラの人材は粗方取られたと。その割に技術的進歩が進んでいないが・・・あ、スペンサーの反応ってもしかしてその姉が関係していたのか?今の発言が本当なら姉とやらはアンブレラに潜伏していた時期がある…調べてみるか。
『情報規制ぐらい考えられないのかしら』
あー…何年か出遅れてるな私。そもそも私という存在自体を認識する術を持っているようだなその姉は、厄介極まる。それよりまた先読みしやがって!…この調子なら電脳技術も持ってるか…姉とやらの人材は何なの?ドリームチームでも作ってるの?
「で、結局目的は何だ、ウェスカーに会いたかったのか、うん?」
私とのコンタクトなら直接会いに来るなりすればいい、マジで南極基地で待ってる理由を考えるとウェスカーとかしかないぞ…他にあるのか‥‥T-Veronicaの実験?冷却気管に問題があるB.O.Wか?レールガン…いやだがクソが!わからん。
『運命の人との私が結ばれる日の為に待ってたのよ!』
『ミレーニアの拘束を!?』
『アッハハハハハ!私の完成されたウィルスの力はどんな存在にも止められない!』
原型が迷子のアレクシアが拘束から逃れたらしい…嘘だろ、ミレーニアはミレーヌのDNAから作られた女性型タイラントみたいなものだ。完全に制御可能という現存しているタイラントよりネメシス融合体に近い…暴走も特にしないからネメシスより優良個体だな。ならN・Tウィルスもあるのか…それとアレクシアが完全適応状態だと!?姉とやらは何がしたいんだ、ヤバい奴を更にヤバくしてどうする!?
落ち着け、落ち着くんだ…ウェスカーが動かないのも納得だ、流石に化物クラスが二体+頭脳面で化物がいる状況だ。見た目は子どもでも油断できん、私に連絡を入れる前に何かしらのアプローチを受けたんだろう…私はどうする…こちらの行動はほぼ読まれている現状、ウェスカーに指示を送っても無駄に近い。てゆーか…無線から聞こえてくるアレクシアの声の距離からウェスカーに抱き着いてるな完璧に…
「ウェスカー…お幸せに」
『ふざけるなッバケモノが!』
ですよね~ウェスカーも剥がそうとしてるようだが、アレクシアに敵わないようだ。完全体のT-Veronicaですねこれは…
『私の運命の人…アルバート、共に世界を掴みましょう?私もついて行くからね、私が欲しかったんでしょ?』
「…あ~少しいいだろうか」
『何よ無能、私と彼の間に入らないでくれる』
このクソガっ・・・今ここでウェスカーが取られるとマズい。現状ウェスカーに対して並々ならぬ思いを持っているアレクシア、及び手を出してこないミレーヌから見てアルバート・ウェスカーという存在を重要視しているのは明白、ここでウェスカーを連れ去られると私の対抗札が消えてしまう。何より…私が楽しめないだろうが!!
「…私は彼を世界の王にすると約束している」
『私と彼だけで十分よ』
「なら共に行動するのはどうだ?」
『足手まといは不要よ』
恋は盲目レベルじゃねえぞこいつ。アレクシアがウェスカーに惚れる…洗脳教育?無理だな、この様子なら性格面はあまり変わってない。ウェスカーに対する愛情面の増幅処置を受けたみたいだ・・・遺伝子に刻んだのか?どんな教育でもここまで盲目になるのはありえんぞ…下手な刺激は逆効果。ならもう一人しか交渉相手が残っていないが…
『別にいいわよ、アレクシアを連れて行きなさい。元より姉さんからアルバート・ウェスカーに有益なら問題ないと言われているから』
…なら最初から言えよ。そして先読みするな!
「一つだけハッキリさせたい、お前達の姉の目的は何だ?」
…彼を手助けすること、それだけよ…
現状を報告しよう…ウェスカーがハンサム顔になってる。いや、私と会ってた時は変装で実はゲーム基準だったっていうだけだけどね。まあ、そんなことはどうでもいい。アレクシアについてだ、奴はその後ウェスカーと本当に来やがった…死亡してた報告は誤情報で病に伏していただけとされた。アシュフォード家が貴族的価値観から隠蔽したとして当主のアレクサンダー・アシュフォードは責任を取る形で引退、アルフレッドが引き継いだ・・・アルフレッドいたんだ、アレクサンダーが生きていたのも驚きだがさ…これアンブレラ掌握されてね?なにこのご都合主義な情報の数々、これがまかり通るのおかしいだろ。スペンサーどうした…逆らえないのか、情報が手元まで来ていないのか…どっちにしろオワコンじゃん。スペンサーの奴、形だけ現存で実は逃亡してるんじゃないだろうな…20年ほど早えよ。
いや、だが完全に掌握されている訳ではないか…ここまで暴れてもスペンサーが現存している事態がおかしい。姉とやらの目的は不明だが、アルバート・ウェスカーについての事柄に関係するのは明らか、生かしていると想定外な爆弾になりうるスペンサーを実質放置しているのも理由があるのか?まあいい…目の前に集中するか。正確には頭が拒否反応が起こって現実を見たくないのだ。
こちらをあざ笑う目をしている少女、アレクシアだが…なんで…似合ってるよ?金髪だし、顔も良いし、スタイルも年相応だが整っている・・・でもさ、どう見ても魔法少女マミさんの服装やんけ!姉の趣味か!ほんとに何考えてるんだよ!?いくら性格とかを調整できてもアレクシアにそんな恰好をさせるなよ!?ウェスカーと来た時の職員達の目が…グラサンで見えなかったけど、あのウェスカーが背中で語ってたぜ。ウェスカーはその後、任務故ラクーンシティに向かった・・・
で、案の定ついて行こうとしてたけど…こいつはウェスカーからのお願いならある程度聞いてくれるみたいで、一応ここアフリカ支部に残っている、残された?まあ、私が対応する事になった。書類上だがこいつは私の部下、研究員なのだがまあ、私の言う事聞くわけがない。はぁ・・・ウェスカーの野郎、あいつ私が見捨てる風に喋った事を根に持ってやがった。知ってたけど、だからお前はウェスカー何だよ!
「…アンブレラにいる意味が薄れたな」
「やっと理解できたの無能、アンブレラは形だけ存在している抜け殻よ」
「・・・そのようで、姉のおかげか?」
「姉さんは貴方と違うのよ」
姉への忠誠心が強い、ミレーヌの奴も同様の処置がされていると見ていいな。性格を一方面だけ変えて思考を誘導されている…認めるよ、私は掌の上で踊っていた。何年早くとか言い訳は言わん、あえて言うなら…なめんじゃねえよ、アンブレラを支配してるだぁ?だから何だよ!こっちだって遊び抜きでやれば暴力的支配ぐらいできるんだよ、楽しくないからやらないだけでな。
ハッキリわかった…姉とやらは私の敵だ。私の楽しみ方と真逆なのだ、私はあくまでその個が持つ性能を活かして遊びたいんだ。対して姉とやらは完璧を目指すワンサイドゲームが好きな奴、性能が足りないなら足りるようにするのではなく、元よりそのような基準に満たない存在は許さない過程を省略して結果を求めるタイプ。アレクシア達を見ればわかる、元より性能が良いと決まっているから自分に都合がいいように書き換えたのだ…くだらねぇ、苦難あってこそ結果が楽しめるのにおままごとをして楽しめる精神は理解できん!苦言を吐きつつも、求める夢に向かって行動し、近い結果を求め続ける事こそが楽しいのだ!都合が良い物しか受け入れないやり方は許せん!
「そうかい…それはそれとして仕事は?」
例え形上でもここ、アフリカ支部において私の方が上司だ…それと、私が姉とやらを嫌う理由はすぐにわかる。
「アルバートに言われてなければこんな事しないとわかっているでしょ?身の程を知りなさい」
悪態を受け流しつつ、書類を受け取る…アレクシアがアフリカ支部に来て他職員と問題を起こすと思っていた。だがそれは姉の教育によって防がれた…
『あら、ありがとう』
『新しい新薬の開発ですね、お手伝いを』
…普通の対応だ、ああ他の職員からもアレクシアの評価は良い、私の前だけ正体を出してくるがそれはいい。でもな・・・こんなのアレクシア・アシュフォードではない!他人に優しく振舞う?ああ確かに元のアレクシアもするかもしれん、言動も猫を被る事だってするかもな、だがそれは彼女が全てを塗りつぶす為の布石故に行う行動だ!こんな表面上だけでも姉の為、ウェスカー為など取り繕う薄っぺらな感情で流される行動をするだと?どれだけ彼女を汚す気だ!
私とて他者を害する行動はする。しかし、存在そのものの否定はしない…被験者は被験者、科学者は科学者、存在とは矛盾があってはならない、私は彼女を否定する。目の前の存在はアレクシア・アシュフォードを語る何かだ。
「…ああ、良くできている」
「当然な事を言う必要は無いわ」
私は考えている。現状アンブレラは姉とやらの息がかかった連中が上にいるのは明らか、私の思い当たるような存在・組織についても先回りしている、あるいは取り込んでいる可能性が高い。
「なあ、何か悩んでるのか?」
「…いいや、バルト君は勉強を続けて、ああ最近アレクシアから何か言われたりした?」
「あの変な服の?いや・・・勉強を褒められたぐらいかな」
「そう…」
唯一手が届かないのは私が突発的に動いた事象のみ…それだけでは太刀打ちできない。っ面白くない!
『あの嬢ちゃん良い奴だな、服装は独特だが気が利く』
『アレクシア研究員は素晴らしいですね!彼女が手伝ってくれて研究速度が』
『彼女はとても』
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どいつもこいつも・・・・・そうか、これが規則性なのか?姉とやらが求めているのはこの普通…だとしたらウェスカーに固執する意味がわからんが試してみるか。私の予想が当たっているのなら、手は出してこないはず。
「ハハハ、久々に楽しくなってきた!」
姉とやら、お前が求める価値すら見いだせない存在がこの世で価値を見出した時…私の前に姿を現すかな?
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1990年 ソビエト連邦は国家解体の危機に瀕していた。元々多民族国家だったソ連は独裁的な指導者により歪ながらまとまっていたが、米国との軍拡競争、物価の低落など経済状況の悪化に歯止めが付かない状況が続いている。民族間での独立する動きも活発となり、それを防ぐために戦う内戦が勃発、それに伴う国家に対する信用の低下…最早国家継続は不可能と誰しも言葉にせずとも感じ取れる程であった。
祖国を救いたい。そんな儚い願いを持ちながら今日もその手は祖国の血で濡れている。
ある一人の大佐は祖国の今後を見据えていた。民族間での戦に狩り出されるのは常であり、相手を殺し、傷を受け…その痛みは愛する祖国を傷づけている己を蝕んでいた。自ら受ける痛み、相手に与える痛み、その全ては祖国に帰ってくる。高等教育を受けたが故に理解してしまう痛みに晒される。その痛みが全身に回りながら、今日という日を生きていると感じるのだ。
「セルゲイ大佐」
己を呼ぶ部下に対応し、薬効が臭うテントに入る…その中には足が千切れた者、心が折れた者、泣き叫ぶ者、同じ同士達を眺める事となる。
「…やはり西側諸国から密入された武器でした。どういった経由で来たのかは
「今の祖国でどこを拠点としているかもわからぬ蟻塚を排除できるか?金の為なら意思すら捨てる者達の企みをッ」
「同士…」
「すまんな、私には今を挽回する力が無い…これほど祖国の為に動く同士を失いながら」
力が欲しい…祖国がステーキの如く切り裂かれていく様は我が身を切り裂く痛みとして受け止める。己自身は祖国に忠誠を誓った戦士であり、祖国は肉体なのだ、断じて金という帳で動かされていい訳がない!
抑えきれぬ怒りのあまり近くにあった机の一部を握り潰してしまう…瞬時に冷静になり、ボランティアや赤十字の者達に謝罪する。自国内の者達でさえ支えきれなくなりつつある中での救いの手、肩に見える赤十字のマーク、そして傘のマークを身に着ける者達は日夜祖国の為に動いている。自分の言い訳で損失させるわけにはいかない。
「いいえ、大丈夫です…大佐殿に申し訳ありませんが輸血する血液が不足気味です」
「私のを使いたまえ」
アンブレラは全国に支部を持っている大手薬品企業である。近年では雑貨類、重機など幅を広げており冷戦状態でも例外なくソビエト連邦内で動いてくれる切っても切り離せない存在になっている。今もボランティアで検診や薬剤の投与を率先して行い、金銭に関係なく動く様を見てセルゲイはこの助け合い精神を西側は学べと思ってしまう。
「…はい、ありがとうございます」
採血が終わり、採血個所から血が漏れ出す…慣れた手つきでアルコール消毒を行い、とあるスプレー缶を吹きかける。辺りに独特なハーブの匂いが充満し中の緑色のガスが傷口に当たった瞬間むず痒い感覚が一瞬したと思ったら傷口が塞がっていた。
「相変わらず手品のようだ」
「グリーンハーブを改良しガス状にした物です。『救急スプレー』と言われますが、これは性能を落とし量産するタイプの緊急用の物となります」
「どちらにしても多くの同士が助かっている礼を言わせてほしい」
「いいえ、我々アンブレラは傘で人類を庇護する為に日夜動いておりますので気にせず」
グリーンハーブもアンブレラからその価値を教えられた一つだ。寒い環境故、西側より育ちずらいが数があれば食用以外にも軽い傷であれば手当にも使える万能ハーブとして一家に一面はハーブがある。時に環境の変化でブルーハーブ、レッドハーブなる特殊なハーブが出現した際は食料などと交換してくれる。
「…セルゲイ大佐殿、少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか。我社の者でお話したいと連絡が来ております」
「私と?」
一軍人でしかない自分にコンタクトを取る…意味がわからない。何かの間違いではと聞き返すと、前に行った検診で気になる事があったそうだ。奥に通され、他の者を寄せ付けないように警備兵まで現れた・・・アンブレラは独自の特殊部隊を保持している、それは事前に知っていたがこうも露骨に動かれると勘繰ってしまう。聞かれたくない話なのは間違いない、奥のテントに無線機が置かれ繋げられていた。
『やあやあ!初めましてセルゲイ大佐、お話できて光栄だ!早速本題に入ろう、私が作る新起業に参加してほしい』
声の主は女性、無線故に判断が難しいが年若い声であった。開幕早々場違いな雰囲気を出しながら、手案してきた内容も理解できなかった。
「少し待ってくれお嬢さん、私とは縁がない」
『祖国を救いたいよね?力をあげる』
その言葉を投げかけられ思考が止まる。何を言ったのか、何故ここで祖国が、力だと・・・
「…何者なんだ」
『私はアルフォート。今はアンブレラのアフリカ支部所長をしている、こちらの事情で私について来てくれる者を募っている…形式上は違うけど』
どうやら腹芸をしない、いや、するほどの余裕がないと感じ取れた。
「信用できないな、それに何を私にくれるんだね?祖国を立て直すほどの何かを君が持っていると?それにアンブレラはオズウェル・E・スペンサー氏が経営している企業の筈だ」
『そのスペンサーも今では何もできない老人になっている…アンブレラは謎の人物によって実質支配されている状態だ。私が協力者を集めているのはその人物に対抗する為だ』
…企業内の派閥競争でも起こっているのか?運営責任者を蹴落とすほどの勢力がいるのなら、まだ決まっていないが軍人の私一人が入ったところで無駄としか思えない。武力面でも独立した部隊を保持しているアンブレラで他を募る時点で負けが濃厚に漂っている。
「それで?そちらの事情はわかったが、力とは何だ」
『T-ウィルスをご存じかな?』
「聞いたことないな」
『うん!それはよかった!では説明しよう』
話を聞いていけばいくほど…アンブレラという企業の闇を知っていく。それよりも!我々の戦いに介入している存在が目の前の企業であることの方が問題だ!
「貴様らが!我らの祖国を汚す害虫だったとは」
『元より我らが介入せずとも滅びる運命だった』
「そのような理由で!」
『だからこそ…欲しいだろ?君の肉体は特別なんだ、私は特に君の行動は縛らない。私が必要な時だけ協力してくれればいい…どうする』
ふざけている…我が肉体は1000万人に1人のウィルス完全適応者だった。それだけの理由で私をスカウトするのもそうだが、祖国を食い物にしていると自ら吐きながら私に伝えてくるドス黒い精神性、その全てが己の理解を拒んでいる。
『本来であれば君の祖国が滅びた後に介入した方が良かった…だが先ほどの理由から私には時間が惜しい。君としても悪くないのではないかな?』
冷静に物事を判断するのにここまで苦労するとは人生で初だ…アルフォートが提示した内容、現アンブレラロシア支部に対する命令権及び・・・B.O.W、ウィルスを始めとした物資の使用権利。私のDNA情報及びクローン体の量産許可…私に利しかない内容、怪しまないはずがない。この条件では一部とはいえ祖国の為にアンブレラを酷使できるという事だ。
『アンブレラを支配する存在はね、何か正義の味方気取りらしいのよ…マジふざけてるよね』
「どういうことだ」
『善であれ…奴の基準を満たした善性持ち、かつ優秀な人材だけ集めた派遣を作られてるのよ。ああ、ここでの基準は命令に忠実でどんな事でもしてくれる人って意味ね』
「貴様と対して変わらん」
『はぁ!?全然違うわ!私は個人の夢を応援するのに全力で支援するし、結果的に私に手助けしてくれたらいいという優しさの塊だろう』
「はっ…」
『何わらッとんねん!』
アルフォートにしても支配している奴にしても…他者を何とも思っていない連中に違いない。自分の好き勝手に暴れ、虐げ、信念もないただの野蛮な連中でしかない。
…悔しくはある。今の自分が祖国の命令通りに動いても祖国を救えないのは理解できている。それ故に力を求めていたのだから、例え害虫だったとしても力となりえるのなら取り込むしかない。
「アルフォート…私の部隊、仲間を入れる事に関しては問題ないか」
『別に構わない。紛争や内戦にB.O.Wを使用するなら』
「使用しない、そして即時介入を止めろ。使用するのは祖国以外で行う、食料及び薬品は引き続き続けてもらう」
『…了解。ああそうだ、まだ少し先だけど新しい社名だけ伝えるね』
…ネオ・アンブレラ…
「結局介入はして来なかった…私の予想通りと言うべきか、私の行動を予測してあえて介入していないか。いいさ!徹底的にやってやるよ」
自室でT-Veronicaの研究をしながら、マルチタスクで物事を進めていた。今のアンブレラで使える人材は限られている、優秀なネームドと呼称するがゲーム等で紹介されるような奴は基本先回りされていると予想される。マイナーな奴は知らんが、優秀で奴のお眼鏡に適う連中に介入は危険である。
結局、姉とやらの選考基準は優秀で善性、または介入によって善性よりにできる人材なら取り込んでいると予想される。アレクシア達の場合は遺伝子による調整が可能だったという理由だろう。なら私はその逆を行くまでの事…善性なんてクソだ。自分優先?結構、他者なんて知らん?結構、欲のまま突き進む?大いに結構だ!現にセルゲイ大佐には介入した様子は無かった、優秀な人材であるのは事実なのにだ…祖国大好き人間だから危険視したのだろう、だがそれが良い!私にとっては常に裏切りの危険性があるが故に繋がりを感じていられる。
この調子で人材を募り、姉とやらのドリームチームに対抗する私だけのドリームチームで相手してやるよ!
「スペンサーと仲良くしないといけないのが面倒だけどね」
いくらアンブレラが使えないと言っても個人の力は別だ。スペンサーのコネ関係をより密着しないといけない為、仕方なく連絡をした。まあ直接会えるわけではなく、連絡係を通しての通信だけどね。いい加減、姉の正体も知りたいから聞いてるんだけどさ…話さねえんだよなこいつ。
『アンブレラの現状は理解している…知り合いの紹介はする』
…スペンサー経由の紹介は受けれるようになった。でも、姉の正体は頑なに言わないんだよ!何となくわかるけどね、どうせ不老不死の薬云々でどっちにも可能性があって傾けないのだろう。だからこそ私も好き勝手できる権利を得たのだが。
「ウェスカー・・・お前をどうすればいいのだろう」
私は成り行きだが、相手の目的はアルバート・ウェスカーが中心のように感じる。やってることは気に入らないが、善性の人物を集めている中でウェスカーだけ異物どころじゃない、あいつはどんな教育を受けてもアルバート・ウェスカー以上にも以下にもならんしな…アレクシアの服装といい、姉は重度の夢女子あるいはオタクか何かか?ウェスカーに魔法少女コスでも着せてみるか!ひひっある意味正解だったりして!
ラクーンシティに向かってから連絡がない。連絡したくないのかな?わかるけど、私みたいに知識を持ってないと現状把握も難しい状況だからね…ウェスカーからしたら、スペンサーの掌で踊っていたところ、私という存在によって気づかされた上でT-ウィルスの力を得て気分上々状態で南極へ行ったら少女たちから愛の告白を受けて他の者達から白い眼を向けられた状況な訳だから…意味わかんねえな。
「お前さんを悪の王様にすればいいのか、どんな立場にすれば正解か」
ぶっちゃけこのまま上手くいけば映画版みたいなウェスカー社長ルートに進む。まあそれでもアンブレラの看板が大きいから世界征服も達成できそうなのが何とも言えない…相手側にウェスカーが行ってもたぶん活躍できないだろう、ウェスカーが慈善活動とか天地がひっくり返ってもやらん。ウェスカー善性ルート…ギリS.T.A.R.Sで隊長続けてるぐらいしか思い浮かばんぞ。
『頑張れクリィィィス!』
『ウェスカーァァ隊長!』
手を取り合い助け合う二人…ありえないな。そういえば今だとゴリスはアメリカ空軍に所属してるんだっけ?そして特殊部隊S.T.A.R.S入りか、凄い経歴だよなあいつ。
…コンコンと扉を叩かれる。
「所長、アフリカ内でのインフラ整備に伴う資料です」
「ご苦労さん…さて、頑張るか」
「もう少し休まれてはどうですか?」
「いいや、国際情勢が混乱している今だからこそアフリカを抑えたいのさ」
1990年のアフリカは脱植民地化や独立闘争が多発する時期だ。国内が内戦で荒れるからこそ我々が動く必要が出てくる…未来知識がないと理解できないよな。冷戦が溶けて各地で争いが勃発するなんてありえない気持ちの者達が多数派だったのだ。それだけ米ソの力が強大だったと言うべきか…
まあそんな事はいいや。私が動く理由はアンブレラの手を伸ばすことにある…例え私の物でなくても看板はでかい、結果的に頂くことになる予定だから一社員として働くとするさ。それに結果的にだが、ネームドとの接点もきずけたりするしな、どこの町工場かはしらんが第57プラント付近なのは間違いない。
「ちょうどいい、バルト君にも一皮剝けてほしかった」
お父さんとお母さんが走ってる…私はお父さんが抱えてくれていて、暖かい胸の中でうずくまっていた。大きな音が耳に響く、爆弾って言うらしい。
「はぁはぁ、大丈夫か…シェバ、怪我はないか?っ迫撃砲をこんな街中で使うなんて」
「どうすればいいの貴方!シェバはまだ4歳の誕生日を迎えたばかりなのに!」
「落ち着け、アンブレラの人たちが避難所を作ってくれているらしい、そこまで行けば」
音が響く…今度は拳銃の音だ。何かが潰れる音が聞こえて、人の叫び声が聞こえてきた。
「ああ神よ!」
「っ見境なしか!急ぐぞ、ここは入り組んでる…早く静かに行くぞ」
この内戦は未来においても続いている。54もの国が合わさっているアフリカ、全体的に貧困であり、天然資源に恵まれていながら学を受けられず過ごす家庭、汚職を繰り返す政治将校など腐敗した者達が上に居座り続けるサイクルができあがり、また新たな火種に引火する火薬庫…それがアフリカ内戦である。
そんな中でも救いはある。全世界の人々の保護を目標としている自愛に満ちた企業、アンブレラの存在だ。アフリカ国内54の国全てに店舗・工場を持っており、仕事場の提供、食品・薬品の提供など地域との密接した取り組みに近年力を入れている。
「大丈夫ですか!アンブレラの者です、さあこちらに」
道路、水道、電気…あらゆるインフラに関与しているとされるほど最近のアンブレラは活発的だった。気前よく物資を提供する為、腐敗した上の者はほくそ笑んで受け入れる。こんな戦場の真ん中まで輸送トラックを回すお人よし共であれば喜んでと…
「すまない、助かった!…君は若いな」
「最近14になったばかりですから」
「ありがとう、ありがとう」
「いいえ…それでは私はこれで」
「!君は避難しないのか」
トラックから降りた少年を引っ張ろうと手を伸ばすが、その少年は困った笑みを浮かべながら顔を振った。
「やることがありますので!お子さんを大事になさってください!」
トラックが走り出し、見えなくなるほどの距離が離れた時…物陰から武装した集団が現れる。
「乗らなくてよかったのか坊主?ここは所長の加護もない戦場だぜ」
「その所長から言われたんだよ、男になってこいってな」
「そうかい、なら殺らないなんてなしだぜ」
「わかってる、わかってるさ…」
「久々の傭兵任務が内戦干渉とはな、俺らの雇い主はお優しい事で」
「そういうなよ、その分駄賃は貰ってんだ。それに俺達は英雄になれるぜ!」
部隊の連中にもみくちゃにされながら肩付近にワッペンを張り付ける。
「それを張ったからにはお前も今からU.B.C.Sの隊員として扱うぞ、いいな?」
「俺はこんなところで止まらねえからよ…俺は先に行く」
「その意気なら問題ねえな…じゃあ始めるか」
部隊のメンバーが銃火器を片手に覚悟を決めた。
「人殺しをな」
見て頂きありがとうございます。休みの日に書いているのでペースが遅いですが、筆が乗れば書くと思います。