東方鏡華録   作:Crimson Wizard

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また寝れておりませぬ。二徹?三徹?


第十四話

 

「反則級の能力を持つ悪人?」

 

「そうだ。今までは魔虚羅を出すだけで何とかなってたんだが、流石に心許なくてな。」

 

この世界の人外はとにかく硬い。呪霊でいえば特級クラスがポンポンいる。

そこらの中級妖怪ですら呪力強化をした上で本気で殴らないと消滅しない。

鬼なんかは特に硬い。知名度=強さなのは前の世界と変わらないが、鬼という種族だけは別格だ。

 

一度こっちに来たばかりの頃に軽くやり合った記憶があるが、

呪力強化と赤鱗躍動による身体強化をした肉体で本気で殴ってもまだ余裕があるようだった。

 

流石にあのレベルがポンポン居ることは無いだろうが、また出会わない保証も無い。

故に俺は火力不足を補う術式……能力持ちを探している。

 

魔虚羅を出せば大抵の敵はどうにかなるが、本来は魔虚羅も切り札的な扱いだったんだ。

それがこの世界に来てからは魔虚羅を出さなくては死ぬような状況をもう数回は経験している。

 

「今のところは何とかなってるが、例の魔神とやらが今襲ってきたら極ノ番を出さざるを得ない。」

 

それで殺しきれなかった時も問題だが、殺しきれたとしても俺は手札を一つ失う訳だ。

 

「でもねぇ。最近は魔術師も皆して自分の工房に引き篭ってるし……強力な人外も目にする機会がかなり減ったわ。」

 

これで減ってる方なのか。流石に平安と比べるとそりゃあ減ってるだろうが。

レミリアに聴いたんだが、最近は神秘とやらが薄くなってきていて人外には生きにくい世の中になってきているらしい。

八雲紫は同一の存在と言っていたが、こうして比較してみると呪霊とは真逆だな。

 

「まあ探せば居るんでしょうけど……そうね。探しておきましょう。一応従者の頼みだし。」

 

「助かる。」

 

今すぐとは言わないが、出来ればこの屋敷を出る前には新しい能力を持っておきたい。

俺は呪力量と術式に恵まれているからこそ生き残っているが、その術式を失うと一気に弱くなる。

 

数日前の組手もそうだし、例えば相手の能力を無効化する能力持ちなんかが居た場合、俺の勝率は一気に下がる。

人間相手なら何とかなるだろうが、それこそ素の身体能力が高い妖怪なんかだと詰みだ。

だからこそあれから美鈴には定期的に武術を教わっているし、今もこうして強くなる手段を模索している。

 

まあ能力を無効化なんて今の所聞いた事はないが、世界は広い。絶対に居ないとは断言出来ない。

出来る限り手札を増やしておきたいというのは至って普通の考えの筈だ。

それに霊力とやらもかなり気になるが、この屋敷に霊力を扱える奴は居ないんだよな。

 

ちなみにだが、魔法も駄目だった。

パチュリー曰く魔法とは学問らしく、特に数学や科学とは類似点も多く魔法を学ぶ上では必須科目らしい。

 

という事で、俺には扱えない。……俺は前世からめちゃくちゃ数字に弱いのだ。

四則演算程度しか出来ない俺に魔法が扱えるとは到底思えない。ので選択肢から除外した。

 

「後は……妖術、とか言ったか?」

 

何処かで……そうだ、妹紅だ。あいつが俺に教えたとか言ってたな。一応頭に入れておこう。

まあ平安の人間だし、流石にもう生きていないと思うが。

 

ん?幻想郷でも会ってたっけな?……駄目だ。ループする前後の記憶は曖昧になってる。もう思い出せない。

 

「……また来たわね。あなたが来てからは退屈しないわ。」

 

「またか?もう三回目だぞ?」

 

何故か俺がこの屋敷に来てからかなりの間無かった吸血鬼ハンターの襲撃が増えたらしい。

らしいっていうか、俺が処理してる訳だが。

 

まあ多分例の魔神とやらの差し金だろうな。俺が来たタイミングから今まで無かった襲撃が三回も起きてるんだ。

関連付けるなって方が無理がある。

 

「今回は質も悪そうだし、多分咲夜が庭で片付けてくれるでしょ。」

 

レミリアのいう質とやらは一つの判断基準らしく、レベルの低い奴らはそもそも屋敷に入れたくないらしい。

なので俺か咲夜が庭で逆に奇襲を掛けて処理するってのが何時ものやり方だ。

ちなみに素直に門から入ってくる奴は今まで一度も居なかった。殆どは裏口からだったな。あれで美鈴が怒られてたのは流石に可哀想だった。

 

三回のうち一回はレミリアの言う質が良い奴が来たんだが……あいつの能力を奪わなかったのは失敗だったな。

良い能力持ちを見つけるまでの繋ぎには十分なっただろうに。

 

「お、一人抜けて来たぞ。」

 

「一匹取り逃してるじゃない。咲夜は後でお仕置きね。」

 

そんな事を言っていると凄い勢いでドアが蹴破られた。侵入者は黒いローブに十字架のロザリオとかいう如何にもな見た目だ。

 

「……」

 

「何か言いなさいよ。あなたは咲夜を出し抜いてここまで来たんでしょ?中々出来る事では無いわ。褒めてあげましょうか?」

 

ローブの男はレミリアの挑発には乗らず、十字を切る仕草をすると即座にレミリアに向かってナイフを投げた。

 

俺は玉犬・渾を喚び出すと玉犬はその前足でナイフを弾いた。

 

「……銀のナイフね。当たらなければどうということはないわ。」

 

レミリアは避ける動作すらしなかった。全部俺にやらせるつもりなんだろう。まあ、普段は楽させて貰ってるしたまには働かないとな。

 

「玉犬、やれ。」

 

玉犬・渾はその体格を活かして前足による攻撃を仕掛けるが、男は半身になるだけで全ての攻撃を回避する。

ふーむ。見る限り、玉犬だけだと少し厳しいか。

 

俺は手影絵を象らずに玉犬の影から蝦蟇の舌で不意打ちを仕掛ける。だが男は見えているかの様に少し屈むと蝦蟇の拘束を回避した。

 

「……何かの能力持ちか?」

 

「とりあえず一撃入れたら奪ってみなさい。そうすれば分かるでしょ?」

 

確かにな。俺の術式の生涯三つまでという制限は最早あってないようなものだし。極ノ番の為に奪っておくのが正解かもな。

そんな事を考えていると男は懐に手を入れて銃を構える。そしてレミリアに向けて発砲した。

 

俺は咄嗟に呪力を纏った腕でレミリアを庇い、銃弾を弾いた。

 

「そんなに必死にならなくてもその程度の攻撃で私は死なないわ。例えそれが銀の銃弾だったとしてもね。」

 

「なんだよ、それなら先に言ってくれ。」

 

先程から男は玉犬を相手しながら時折俺の出す蝦蟇による不意打ちを難無く防いでいる。

だが玉犬の膂力自体は脅威なのか無理に詰めようとはしない。

多分だが、こいつの能力は数秒先の未来視とかだろうな。動きに迷いが無いしどんな不意打ちも防がれる。

 

男が咲夜によるナイフの投擲を首を傾けるだけで躱した時点で、それは確信に変わった。

しかも背後からの投擲だ。普通なら避けられる筈がない。

 

「……数秒先の未来視。」

 

俺がそう言うと、男は一瞬硬直した。

 

「正解みたいだな。流石にこれだけ不意打ちを防がれると何かタネがあるのは分かるさ。」

 

未来視を持つ相手を倒す方法、そう難しい事じゃない。来ると分かってても防げない質量で押せばいい。

俺は男を覆い隠す様に脱兎を召喚する。

 

「さて、これで逃げられないな。」

 

内側から銃を乱射しようが、ナイフを振り回そうが無駄だ。品々物之比礼の紋様を持つ個体は俺の影に隠している。

弱点をそのままにしておく理由が無いからな。

 

「だが、どうやって仕留めようか。」

 

「ちょっと、そこまで考えてなかったの?」

 

レミリアが文句を言ってくるが、こっちは屋敷に被害の無い様な手段を考えてるんだ。後片付けも俺らの仕事だからな。

 

「うーん、鵺で感電させるのが無難かねぇ。」

 

「いいからさっさとやりなさいよ。」

 

俺はレミリアに言ったように鵺を喚び出して脱兎ごと電撃を流す。数十秒程放電して、脱兎を解除する。

脱兎が消えると支えになる物が消え、男はバタリと倒れた。

 

「……死んでないな、頑丈な奴で助かった。」

 

俺は男に触れると数年振りに術式を発動する。

 

「うん、やっぱり未来視みたいだな。」

 

それにこの世界の異能も奪える事が確定した。不安要素が一つ消えたな。

 

「こいつはどうするの?」

 

「……お前食うか?」

 

「要らないわよ。ジジイじゃない。」

 

若い男だったら食ったのか?……まあいいや。そんな事は知りたくない。

 

「じゃ、その辺に捨てて来る。」

 

路地裏にでも放っておけばホームレスだと思われるだろ。俺は繋ぎの能力が手に入った事で少し舞い上がっていたのか、

男を影に入れて出て行き、そのまま捨てて来るのを忘れて帰ってきてレミリアに怒られるのだった。

 

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