普通にハーメルンなんて投稿してますが明日は面接です。
結論から言うと、日が暮れても俺は人間も集落も見付けられなかった。
「くっそ……さみぃ。」
キャンプは好きだったが、サバイバルは別に好きじゃねえよ。しかもテントすらないし……これでは火をおこすのも一苦労だ。
まあ一応、念の為に穴を掘ってその辺の木で枠組みを作って上から葉っぱを被せている。
その辺の小さな葉っぱなので時々隙間から落ちてくるが。こんなのでも無いよりはマシだ。
ちなみに飯すらない。今日見た動物なんて鴉くらいだ。
一応レミリア達に貰った食糧はあるが……これは出来れば残しておきたい。一日程度飯を食わないだけでは死なないだろうし。
明日も食うもんが無かったら食うとしよう。
そもそも俺の知っている日本はここまで広く無かった筈なんだがな。平安でもこれだけの範囲を捜索すれば集落の一つや二つ見つかる筈だ。
「っ!」
そんな事を考えていると、突如俺の背後で何か呪力の様なモノが揺らぐ感覚がした。
俺は咄嗟に影から刀を取り出すと奇襲者が居るであろう場所に向かって刀を突き付けた。
「ちょっと待って!違うの!警戒させるつもりは無かったの!」
……こいつは、八雲紫?以前見た時より数歳程度若く見える……気がする。もう記憶はアテにならないな。
「で、じゃあなんで俺の背後を取る必要があるんだ?」
「その、ちょっと待ってね……コホン、……よし。」
何故か八雲紫は背筋を伸ばして咳払いをすると此方を見つめてくる。
「私は八雲紫……あなたの名前を聞かせて貰いましょうか。」
……何の冗談だ?あのくだりをなかった事にする気なのか?流石に無理があるだろ。
「ちょっと待ってくれ。話し方は別にどうでもいいんだが、さっきの続きを頼む。」
「……何の事かしら?」
「別に俺はお前と敵対しようが構わないんだが。」
「冗談っ!ちょっとした冗談よ!今私は妖力を使い切っていて戦えないの!こんなか弱い妖怪を虐めて楽しいの?この卑怯者!」
何と言うか、前会った時とかなりキャラが違うな。確かあの時の彼奴はもう少し余裕があったというか、もう少し胡散臭かったというか。
「とりあえず分かったから話を聞いてくれ。俺は今子供の相手をする程元気が無いんだ。」
「誰が子供ですって!?私はもう二百歳は超えてるわよ!」
「尚のこと悪いわ!なんで二百年も生きてて全然成長してないんだよ!」
意味の無い問答に疲れて俺が少し大声をあげると推定八雲紫は少しビクッとしてから頬をふくらませた。
「……まあしっかり数えた事は無いから多少のズレはあるかもね。」
「んな事はどうでもいいわ!……はぁ。とりあえず、なんで俺の背後にいきなり現れたんだ?」
「えっと、気分?」
「……はぁ。」
俺はついつい特大の溜息を零してしまう。……不思議ちゃんかよ。もう駄目だ。まともに話が通じねぇ。
「まあいい。敵対するつもりが無いなら好きにしろ。まあ飲み物どころか座る場所すらないが。」
「……じゃあそうさせてもらうわ。」
八雲紫はそういうと隙間から切り株の様なものを出すとその上へと腰を掛けた。
……本当に何の為に俺に接触して来たんだ?今の所ただのガキなんだよな。
「あー。とりあえず、俺を知ってるって訳でも無いんだな?」
「……そういえばあなたってなんて言うの?」
演技の線も無さそうだな……。本当に過去の八雲紫という可能性もあるか。
「俺は禪院鏡華だ。お前とは未来で一度話をした事があるんだがな……八雲紫。」
「……えっ!そうなの?私まだ未来を観測出来る程能力を使いこなせていないから、あなたの事は知らないの、ごめんね。」
「ところで、八雲紫。今は何年だ?」
「え?今?建久二年だけど?」
……建久?平安じゃないよな。というか、西暦を教えて欲しいんだがな。流石にまだないか。
ん?いやでも、確か妹紅は西暦で教えてくれた様な気がするが……駄目だ、記憶はアテにならないし分からん。
「今って何時代って呼ばれてる?」
平安は当時から呼び方が変わらなかったが、他もそうとは限らないよな。だが大まかな名前でも見当くらいは付くはずだ。
「今は鎌倉よ?さっきからどうしてそんな事ばかり聞くの?」
……鎌倉か。思ったよりかなり時間が巻き戻ってるな。
「いや、多少込み入った事情があってな。お前に言っても分からんよ。」
「はぁ?私は計算が得意なのよ!九桁くらいまでならすぐに答えが分かるわ。」
……意味も無いところで張り合う様子はまるで子供だが、脳みそはスパコンレベルですってか?
まあ九桁程度じゃスパコンとまではいかんだろうが。それにしても普通に凄いな。
「じゃあ聞くか?」
一応、出来るだけ分かりやすい様に噛み砕いて説明していたが、どうやら本当に頭はいいらしい。途中でキレられた。
「で、今はその魔神とやらを探しているって?」
「そうだ。まあ日本の出身かは怪しい所だがな。」
そもそもこの時代は日本っていうのかな。んー。大和ってか?いや、流石に遡りすぎか。
「まあ、気が向いたら情報を仕入れてきてあげるわ。」
……この様子だと何だかんだ情報を集めてきてくれそうだな。
「……何だ、何か違和感が無いか?」
「え?私は何も感じないわよ?」
なんというか、最初に時間をループさせられた時の感覚に似ている。……例の魔神か?流石にこの段階で遭遇するのは想定して無いぞ。
「いや、間違いない。もう俺達は術中だ。」
「……え、え?」
俺は懐中時計を確認するが、時計の秒針もいつも通り。何も変わった所はない。
「……もしかして、普通の結界か?」
何処から俺らを……少なくとも目視出来る距離では無いか。
まあどの道結界を張り終わるまで俺が気付かなかった時点で普通じゃないな。……だが、結界術は俺の十八番だ。
「……出て来いよ。この手の結界は術者が中に居ないと効果範囲が狭まるだろ?」
少なくとも、目視出来る範囲よりこの結界は広い。外からでは制御が覚束無い筈だ。
「あともう少しだったのに。」
俺の声掛けに応えたのか、背景と同化していた女……いや、少女は大人しく姿を現した。
「……え!何も感じなかったんだけど!」
「そういう魔法を使ってるんじゃないか?」
見た目は十二歳くらいの少女。白髪のショートヘアで、全身を赤いローブで覆っている。
常に両目を閉じていて表情が薄く、かなり無機質な印象を受ける。まるで人形の様だ。
「……正解。それは幻覚に近いものだよ。」
「何も感じなかったのは?」
「それは僕の技術だよ。魔力を体内で完結させてるだけ。」
……だが何故気取られずにこの規模の魔法が使える。厄介だ。
「で、お前が散々俺をストーカーしてくれた魔神さんか?」
少女は魔神……と確認するように呟くと笑っているのか少しだけ口角が上がった。
「魔神ね、上手い事例えるね。確かに、僕は神の肉を食らったから肉体に神性が宿っている。でも、神なんて大層な存在では無いよ。」
「じゃあなんだ、自己紹介でもしてくれるのか?」
俺がそう言うと、女は別にいいけど……と前置きして口を開いた。
「僕はパナシア。特に名乗る程の者ではないよ。」
「名乗ってるじゃない。」
「……」
……紫。今のは突っ込む所じゃない。少しは空気読め。
「……で、目的は?ただの嫌がらせって訳じゃないよな?」
「勿論。私……おっと、僕は君の能力が欲しいんだ。その、他人の力を奪う能力がね。」
「そうか……それと、俺の知り合いの見立てでは俺の能力を奪う為に身体の一部を代償にしたらしいな。何処をくれてやったんだ?」
「……?ああ。あれね。間違ってはいないけど、正解でも無いかな。私……じゃない。僕は、一度の儀式の為に自身の一部を捧げた訳じゃない。
もう代償が無くても同じ事象を引き起こせるさ。因果と時間の中間?くらいを軽く弄れる程度の魔法なんだよ。ちなみに、捧げたのは右目だよ。」
因果と時間の中間ってなんだよ。
「そうか。で、さっきのは動機であって理由じゃないだろ?なんで俺をわざわざその儀式とやらに巻き込んだんだ?」
「えっとね、死んでても駄目だけど、対象に抵抗する意思があった場合も上手く能力を奪えないんだ。」
「ちょっと待て。聞き流してたが、お前は能力を奪えるんだろ?じゃあ俺の能力は必要ないじゃないか。」
そういうと、白髪の少女……パナシアはチッチッチッとわざとらしく指を振って口を開いた。
「違うんだ、あくまで僕のは一時的なモノなんだ。
でも、手元に君の能力という前例があるとすれば、魔術師である僕はそれを解析して魔法として再現出来る自信がある。」
「で、それには殺さずに心を折る必要があったって事か?」
「そう。だから、君が余計な時計を受け取った時は少し腹が立ったよ。あのメイドのせいで全てが狂った。」
そうか、やっぱりか。咲夜には足を向けて寝れないな。
「まあ、もう理由はどうでもいい。悪いがここで死んでもらう。」
見た目は少女だが、どうせ年齢詐欺だろう。軽く見積って数百年は生きている筈だ。
「随分と、あっさり決めちゃうんだね。君は情に厚い人物だと思っていたのに。」
「俺はな、恩には恩で返す。だが逆も然りだ。無条件で誰にでも優しい人間なんていねぇよ。」
「そう。じゃあ、僕の過去を聞いてくれる?」
「聞くわけないだろ。同情を誘おうとしても無駄だ、この件に関して俺はお前を殺してやりたい程憎んでいる。」
「……残念。でも君じゃ僕は殺せないよ?」
こいつは未だに構えすら取らず、武器も構えず、魔法も詠唱しない。舐め腐ってやがる。
「俺をずっと見てたんだろうが、できる限り切り札は温存してきたんだよ。」
奥の手を使う時はその更に奥の手がいる。俺はいつだって出来る限り少ない手札で勝負をしてきた。
俺は短期決戦で仕留めるべく今まで使わなかった切り札を切る。
「大人を嘗めるのも大概にしとけよ。クソガキが。───領域展開。」
───非理法権天───
高評価、感想の程よろしくお願いします。