東方鏡華録   作:Crimson Wizard

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評価下がってた。(т-т)


第十七話

 

非理法権天。

 

非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たずという法諺だ。

自身の領域の名前だが、俺は詳しい意味なんて知らない。まあ……確か江戸時代の偉い人が残した言葉だった気がする。

 

要は天道……つまり全て天という名の神に従って行動しろ、生きろ。という意味だ。

ちなみに掌印は半跏思惟…… 所謂思惟手だ。五条悟と同じく片手で結べるという利点がある。

 

俺の領域の効果は至って単純だが、必殺必中足り得るだけの理由がある。この領域名にある天を指すのが俺だ。

つまり、この領域内では全てが俺の支配下だ。

 

俺の言葉に強制力が生まれ、相手の肉体を思い通りに動かす事が出来る。それにこの領域内に性質を付加する事も出来る。

 

「パナシア、自害しろ。」

 

俺の言葉通り、パナシアは魔法の様なもので剣を創り出すとそれを自身の首に押し当てた。

パナシアは全く表情を動かさないまま自身の首を切り落とした。

 

パナシアの首が地面に落ちる音がする。

 

……有り得ない。あそこまで俺の能力に執着し、魔神まで呼ばれる奴がこの程度で終わる筈がない。

あまりにも呆気ない結末に、俺の脳は理解を拒む。

 

「……本当に死んだ?何故抵抗しなかった?」

 

魔法を使う素振りすら見せないのはおかしい。確かにこの領域を使った時は毎回の様に呆気なく勝利を得てきた。

だが、こいつは今までの相手とは違う。

 

と、突然アナウンスの様に周囲によく響くパナシアの声が響き渡った。

 

『ふふ、ごめんね。それは本当の僕じゃないんだ。』

 

「……やっぱりか。そもそも幻影だったのか?」

 

『そういう訳では無いよ。肉体は本物だ。まあ僕の身体じゃないけどね。』

 

そう言われて死体を見ると、いつの間にか顔が別人に変わっている。

 

『それは僕の嘗ての患者さ。元々は医者でね……辛くて死にたいって人も結構居て、よく僕の元に相談に来てたんだ。』

 

で、そいつらを殺して死体を使っている訳か。というかこいつ、受肉してたのか?

操っていたというよりは……乗り移っていたような感じだった。だがそうなるとその間本体はどうなる?

 

「で、何の為に話し掛けてきた?そのまま姿を眩ませていれば俺はお前が死んだと勘違いしたままだったかもしれないぞ?」

 

『流石にそれは無いだろう?君はそこまで馬鹿じゃない。違和感をそのままに放置はしない筈だ。』

 

「今は何処から話し掛けてるんだ?それに目的を答えて貰ってない。」

 

『場所は言うわけないでしょ。理由は今言った通り、どうせバレると思ったから教えて上げただけだよ。』

 

……答える気は無いみたいだな。それにしても厄介だ。仮に今後此奴を見付けたとしても本体じゃない可能性が出てきた訳だ。

 

『じゃあ僕はこれくらいで。僕の事を探すんでしょ?ヒントをあげよう。西欧の何処かだよ。』

 

「相変わらず人を馬鹿にし過ぎだろ。それが本当だとして、俺が近付いたら逃げるだろ、お前。」

 

『……逃げはしないさ。隠れはするかもしれないけどね。』

 

「……もういい、消えろ。今回は俺の負けだ。」

 

そういうと、辺りに響く声は聞こえなくなった。

 

「お、終わったの?」

 

「……ああ。上手く逃げられた。」

 

今回は俺に問題がある訳じゃないだろう。肉体が存在しない訳では無かったし、魔力みたいなモノもかなりの量溢れ出ていた。

相手の能力が初見殺し過ぎた。だがどちらにせよ、切り札を一つバラしてしまったのは痛い。

 

まあ分かった所で対処出来る類の能力という訳でも無いが。それにこの世界では呪術師を確認していない。

呪術師が居ないとすればそもそも領域の押し合いという概念自体が存在しない。元々相手が五条悟クラスの呪術師なんかで無い限り無敵に近い能力だ。

切り札とはいえ破られる事はそれほど警戒していない。まあイレギュラーが多いこの世界だ。念の為に頭の片隅くらいには置いておくが。

 

「……さっきの結界?みたいなのは何?私動けなくなったんだけど。」

 

この領域に入った第三者は行動を制限される。俺の許可が無くては身体を全く動かせなくなる。

 

「俺の能力だ。まあ気にしないで欲しい。今回は不発だったが、あんなのでも俺の切り札だ。」

 

まあ綺麗に空振りした訳だがな。それにしても、嘗めるなよ。と啖呵をきった後にこの結末か。流石に恥ずかしくなってくるぞ。

 

「ふーん。ま、いいわ。ところで、これからどうするの?」

 

……西欧の何処かとか言っていたな。この時代ではヨーロッパがそもそも何というという呼ばれ方をしているのかすら俺は知らない。

だが、色々考えてみた。この世界には時間や因果に干渉出来る奴が何人も居る。

 

つまりパナシアがかなり先の未来が見えたり、未来に飛んだり出来る可能性も全然あるのだ。

というか、俺を実際に飛ばしているんだから出来ないと考える方が不自然かもしれない。

 

懐中時計はあくまで時間に干渉するだけだ。時間を移動出来る便利アイテムって訳じゃない。

俺に掛かっているループするという能力と懐中時計が上手く干渉し合った結果、時間旅行が出来ているだけだ。

だがこの場合、別の時間に逃げられると俺は彼奴を捕捉できない。時間を指定して飛べる訳じゃないからな。

 

「とりあえずは、何処か人のいる集落を探すさ。彼奴の言っている事が本当だったとしても今の俺には見付ける手段が無いからな。」

 

「……じゃあ私の知り合いの所に来る?」

 

八雲紫の知り合い?またとんでもないクセ者が出てくるんじゃないだろうな。

だが他に宛もないし、この話には乗っておくべきだろう。

 

「そうだな。とりあえず連れて行ってくれ。」

 

「ふふん。良いでしょう、あなたへの貸し一つって事で。」

 

まあそれくらいなら別にいいだろ。変な事言われたら断ればいいだけだし。

 

「じゃ、これに入って。」

 

八雲紫がそういうと空間が裂けて見覚えしかないあの目玉まみれの場所に出た。

……相変わらず気持ち悪い空間だな。

 

「私に着いてきてね。」

 

俺は目玉まみれの空間で八雲紫の後を追うのだった。

 




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