幻想入りするだけだと有り触れてるので脳内プロットはある程度建ててあります。
裂け目に飛び込むと周囲の景色は走馬灯の様に切り替わり続け、その後軽い衝撃と共に俺は着地した。
「うおっ!」
……明らかに100mは落下したのに殆ど衝撃が来ないのは何でだ?
なんて事を思っていると、続いて現れた八雲紫が空間の裂け目に腰をかけながら言う。
「それじゃあ、何か聞きたい事はあるかしら?」
てか、ここ何処だ?……見る限りだと昔ながらの一戸建てだな。ていうかここも結界の中じゃねえか。
「地上は地上なんだろうが何処だここは?」
「ここは私の所有する屋敷の一つよ。」
俺が聞きたいのはわざわざ此処に連れて来た理由の方なんだがな。
「お前は呪霊か?それとも妖怪か?」
「私は妖怪よ。というか、勘違いしているかもしれないけれど、呪霊と妖怪は呼び方が違うだけで基本的には同一の存在よ。」
……そうなのか?明らかに一級でも上澄みクラスの奴とか居たけど。
「あなたの言いたい事は分かるわ。でもあなたが遭遇した鬼みたいな妖怪が特殊なだけで弱い妖怪も数多く居るわ。」
「だが、妖怪という言葉を今まで聞いた事もないのはおかしくないか?」
「それは私達の存在が秘匿されているからよ。表向きには呪霊しか存在しない事になってるけど、実際は神も鬼も天狗も居るわ。」
……つまり俺達の世界では一応呪霊とされていた土着神や鬼の呪霊は実際に神だったり鬼だったりした訳だ。
「後は……そうだな、何故俺はこちら側の世界に居るんだ?秘匿されているんだろ?」
「まずは互いの認識に齟齬が無いか確認しましょう。あなたは幻想郷の存在自体は知っているのよね?」
「ああ。通りすがりの鬼に聞いた。日本の何処かにある特殊な結界の内側だろ?」
「殆どその認識で間違いないわ。ただ、結界といっても具体的に区切りがある訳じゃないの。この世界は今も拡張し続けているわ。」
……そんな事が可能なのか?俺も結界術は得意な方だが、空間そのものの性質を変える結界となると縛りを使っても東京ドームくらいが限界だぞ。
「といっても、実際私一人で結界を維持してる訳では無いのだけれど。」
「いや、一人だろうが二人だろうが無理なもんは無理だと思うが。」
「理解出来ないのは分かるけど、とりあえず呑み込んでくれないと話が進まないわ。」
それもそうか。まあ実際、俺の世界にも天元という特殊な例がある訳だしな。
「じゃあ続けるわよ?あなたがこっちに来た理由だけど、私が連れて来たからよ。」
「……なんで俺を連れて来るんだ?別に俺程度の術師は他にもいるだろ?」
「あなたが世界にとっての異物だからよ。」
それを言われて、俺は少しだけドキリとした。別に隠していたつもりはないが、
今まで一度もバレなかった事を初対面の相手が知っているという状況に少し、そう。本能的に恐怖を感じた。
人間は未知を恐れるというのは事実だったんだな。
「あなたは既に二度死んでいるでしょう?」
「ああ。元々は呪いなんて知らずに暮らしていたんだが……そうか。今思えば呪霊に殺されたのか俺は。」
「そして、二回目は宿儺でしょう?見ていたから知っているわ。」
……見られていた。というか、こいつ俺の事を監視していたのか。
二度目の生では多少名が売れてしまったが、最初死んだ時は無名の人間だった筈だ。偶然にしても俺の事を知りすぎている。
「なんで俺に付き纏うんだ?何が狙いだ?俺の術式……では無いよな。一度目は非術師だったしな。」
「偶然、といって信じて貰えるとは思わないけど本当に偶然よ。宿儺と戦ってるのもあなただとは思わなかったし。」
本当になんで俺の前世を知ってるんだ?術師として有名になった禪院鏡華ならばともかく、
一般人だった俺と禪院鏡華を結び付けるのは不可能じゃないか?
「その、知り合いに聞いたのよ。あなたの事。人間が言う所の神って存在に聞いたの……旧い知り合いでね。」
ていうか神って単語、会話で使うと馬鹿みたいだな。
「もういいよ、どうせ詳しく聞いても教えてくれないんだろ。」
「別にはぐらかしてる訳じゃ……はぁ。もういいわ。」
それより、渋谷事変がどうなったのかが気になる。結局五条悟は封印されたのか?
「五条悟はどうなった?」
「……まだ何も起きてないわよ。あなたを連れて来て一日も経っていないわ。」
……それもそっか。ていうか、目が覚める度に何処か知らない所にいるからなんか寝るのが怖くなって来たな。
「……それよりも禪院鏡華。あなた、とんでもないのに憑かれてるわよ。」
「憑かれてる?……俺がか?」
俺は呪術師だぞ?流石に何かに取り憑かれてたら分かる。
「あなたには見えないわよ。いや……私にも見えないんだけど、なんて言うのかしら。」
「なんだ、俺をおちょくってるのか?」
俺がそういうと八雲紫は心外だと言わんばかりに顔を顰めた。
「違うわよ。とりあえず私の言う事を聞きなさい。これは心からの忠告よ。
……これから、あなたには避けようの無い苦難が訪れるでしょう。汝、道に迷いし時は天へ昇りなさい。」
急に真面目な顔をしてそう言う八雲紫に俺は言いようのない悪寒を感じる。
……避けようの無い苦難?縁起が悪いな。
てか天へ昇れって何だよ。仙人にでもなれってか?
「一応頭に入れておこう。お前が神なら有難く聞こえるんだろうが、妖怪だからな。」
「……基本的に性質が違うだけで神も妖怪も同一の存在よ。」
それを言ってるのが妖怪だからな。俺が勉強した限りだと神と妖怪は別物扱いだったが……
まああれも宗教的な思想が全く入ってない訳じゃないからな。確かに有り得るのかもしれんな。土着神なんかも神は神な訳だし。
「それと、あなたはどの道幻想郷に来る運命だったわ。表の世界に帰ろうなんて考えても無駄よ。
先程も言った通りあなたは世界にとっての異物。私が連れて来なくてもその内強制的に向こうの世界からはじき出されたわよ。」
……じゃあ逆になんで今まで存在を許されていたんだ?
まあ、別に五条悟がどうなったか気になるくらいしかあっちの世界に思い残す事は無い訳だが。
「分かったよ、別にいいさ。どうせ身寄りもないしな。ただ、何処か人の居る所へ送ってくれ。」
全く別の時代を生きてた訳だから身寄りがないのは当然だが。
「とりあえず、此処を抜ければ人里に着く筈だから。」
そう言って八雲紫は隙間……気味の悪い空間を開く。
「おう。後で五条悟がどうなったかだけ教えてくれ。」
「それくらいなら良いでしょう。また会いましょう、禪院鏡華。」
禪院鏡華が隙間を抜けて人里へと到着した事を確認すると八雲紫は小さく口を開いた。
「……可哀想に、禪院鏡華。私だけはあなたの事を憶えていてあげるわ。」