HAUL:Trailer
ここはレムナントと呼ばれる世界。4つの大陸と4つの王国によって成り立っている。そんな4つの王国の内、北大陸ソリタスに位置するアトラス王国は極寒の環境により、この世界特有の脅威に対する防御には打ってつけであるが、同時に人々はこの厳しい環境に苛まれている。
そんな人間が暮らすには向いていないとされるソリタスではあったが、開拓者たる先人の活躍により飛躍的に科学技術が進歩していき、かつての都市であったマントルをも凌ぐ巨大都市アトラスを築き上げた。
そのような発展を遂げてきたアトラス王国から離れ、技術的な発展の痕跡もない危険な谷間を疾走する集団がいた。先頭を駆け抜ける白髪に犬耳と尻尾のある白狼の
後方からの発砲を避け白狼のファウナスは集団を僅かに見て、すぐに視線を前に戻したあと一気に方向を変えた。急激な方向転換に間に合わず、追跡者の集団は白狼のファウナスに距離を取られてしまったが、ある光景を見て要らぬ心配だったとタカをくくった。
白狼のファウナスは目の前の岩壁の前で立ち尽くしている。そこに追跡者が挟み込み、逃げ場を失った白狼のファウナスを見ている追跡者の1人が銃の機能を取り付けた籠手を向けた。
「馬鹿な奴だ、わざわざ自分から逃げ場を無くすとはな。大人しくしていればすぐに死ねただろうに」
言い終わった直後に、集団から嘲笑が漏れる。袋の鼠、そのような認識も持ったまま集団はゆっくりと白狼のファウナスに近付く。
「動くな」
その白狼のファウナスがドスの効いた声で言葉を発した。追跡者達は思考が瞬時に彼の言葉に思考を塗りつぶされ、その足を止める。
「何だ、命乞いか?」
「いいや、寧ろ逆さ」
ゆっくりと回り、白狼のファウナスは追跡者達を見据える。橙色の目が集団を捉え、周囲の音を聴くために犬耳を動かしている。それらを維持したまま白狼のファウナスが口を開いた。
「そこから1歩も動くなよ、お前ら。痛い目を見たくなければの話だけど」
一瞬の間、そのあとに追跡者の1人が堪えきれず吹き出し、それを皮切りに追跡者達が笑いだした。そんな彼らの前で表情を崩さない白狼のファウナスに向けて、集団の先頭にいた人物が喋りだす。
「コイツは驚いた! トンだ阿保じゃねえか! どうやら目が節穴らしいお前に教えてやるが、お前は1人で、岩壁と俺たちに挟まれて絶対絶命! 対してこちらは18人、囲んで叩けばすぐに終わるんだよ!」
「だから?」
「……は?」
白狼のファウナスと先頭にいる人物はお互い呆れたような表情を見せた。実際のところ、追跡者側の表情は仮面で隠れており読み取ることは出来ないが、意味を理解していないような反応を示している。髪を掻き上げながら、白犬のファウナスは言った。
「じゃあ聞くけどさ──、この程度の数でボクを殺せると本気で思ってるわけ? 足りるわけねぇだろ能無し共」
「なっ……!?」
「こんなのセンブランス無しで150人組手をやってた時の方がまだ地獄だわ。18人とか舐めてんの?」
「で、出鱈目もそこまでだ! お前の命は今日で終わ」
「あーはいはい、分かった分かった。だったら来なよ、こっちはセンブランス無しで相手してやる」
「っ、舐めやがって! 後悔しても知らんぞ!」
追跡者集団の先頭に居た1人が籠手の銃を2本の爪に変形し、白狼のファウナスに向かって
刹那、その人物は不可思議な体験をした。何が起きたか分からないまま白狼のファウナスと追跡者集団が少し遠くに見えた途端、腹部に大きな痛みが走る。
肺からすべての空気が抜け、胃から何かが逆流するような不快感を覚え、俯せのまま重力に従って地面に叩きつけられる。痛みに悶え、暫く動けない状態になった者を集団は見てしまった。
付け入られる隙を、目の前で与えてしまった。
「17、余所見していいの?」
その言葉が蹂躙の始まりを告げる。
右側に展開していた追跡者の1人を1歩分も無いであろう距離から、タックルと肘打ちの同時攻撃で避けきれなかった3名を巻き込んで吹き飛ばした。
「16」
「ウォオオオオ!」
白狼のファウナスの後ろから追跡者の1人が剣を振り下ろそうとする。が、確認する動作も無く白狼のファウナスは僅かに横に避けたあと、躰道における海老蹴りを顎に直撃させて意識を奪った。
「15……来ないの?」
一連の流れを見ていた追跡者達に緊張の糸が張り詰める。動きたくとも動けない、向かえばやられる。そのような思考に陥っていた彼らに白狼のファウナスは大げさに溜め息をつく。
「はぁ、なら良いよ。こっちから行くし」
その直後、まるで空間が縮んでいるのでは無いかと錯覚を受けるまで追跡者の1人に接近し、拳を軽く握ったまま白狼のファウナスは鳩尾に狙いを定めて殴った。
だが追跡者が受けたその軽い拳の威力は、想像だにしない痛みと自身のオーラの乱れを伴って仰向けに倒れ、鳩尾を押さえて悶える結果となる。
「14、かな。多分」
「か、囲め! 囲んで撃て!」
残った14名の追跡者は白狼のファウナスを取り囲むように颯爽と展開し、銃を構えた。
「ちょっと、それは悪手じゃない?」
「撃て!」
白狼のファウナスの後ろから発砲され、弾丸が目標目掛けて飛んでいく。およそ避けられない距離から放たれた弾丸は白狼のファウナスを貫く──事はなく、まるで当然のように上体を下げて弾丸が避けられ、弾丸同士が衝突しあらぬ方向に飛んで行った。1発は岩壁に、1発は地面に。そして最後の1発は追跡者の1人に当たった。
「ギャッ!」
「13、だーから悪手だって言ったじゃん。フレンドリーファイアの可能性がある上に、この状況下なら接近戦に持ち込むのがベストだよ。……って、またいつもの癖が出てるし」
額を抑えて僅かに首を横に振る白狼のファウナスの言葉を聞いて、残りの追跡者達は構えていた銃を別の近接武器に変形させる。
「うん、それで良い。何ならセンブランス使っても良いよ、ボクには特に問題ならないし」
「後悔しても知らんぞ!」
センブランスとは、簡潔に言ってしまえば超能力のようなものである。性質などが似か寄る傾向はあれど、1人1人が違うものであり、同じものは存在しない。閑話休題。
追跡者の1人がセンブランスを発動し、目に捉えきれない速さで白狼のファウナス目掛けて突貫するが、これもまた当たり前のように頭を傾けただけで避けられる。
岩壁に当たった追跡者の1人は、まるでスーパーボールのように跳ね返り、直線的な軌道を描きながら再度白狼のファウナス目掛けて突貫した。
「成程、そういう類の高速移動ね」
白狼のファウナスはまたも避けようとして、自身の動きが遅くなっている異常を検知した。吶喊した追跡者の渾身のパンチが白狼のファウナスの綺麗な顔面に当たる。だが追跡者が想像していた感触は訪れなかった。
(硬いッ!?)
「硬いでしょ。ふむ、どうやら遅くなるのは肉体の動きだけで、オーラ操作には問題無いのか。で、君のは閉鎖的な空間で真価を発揮するタイプの加速能力と。ついでに……」
肉体鈍化のセンブランスをかけている追跡者の疲労により、白狼のファウナスに掛けられていた拘束は解け、自身の顔面に拳を当てている追跡者の腕を掴み、身体操作によって投げ飛ばした。
「どうやらセンブランスを掛けている対象者に第3者が触れると、そっちの方にも鈍化効果が起きるみたいだね。で、使用時間も短くなると。元々短いみたいだから、相手を鬱陶しくさせるのには向いてる」
「ならこれはどうだッ!?」
「おっと」
追跡者の1人が地面から生えてくる1本の石柱を白狼のファウナスに向けて放つ。それを跳んで回避すると、石柱を伝って接近しようとするが、岩壁からも生えてくる数本の石柱が襲いかかった。
白狼のファウナスは石柱をパルクールのような動きで避け続け、遂に発動者の真上にまで辿り着く。しかしこれを読んでいたのか、避けられない面積を押し付ける。
「君はセンス良いね。でもっ!」
白狼のファウナスは逆立ちの体勢になり、向かってくる石柱の面に触れた瞬間、両手と両腕の勢いを使って避けると、そのまま自由落下に従って発動者を踏みつけた。
「ガハッ!?」
「12、惜しかったね。さて、まだやるか──」
白狼のファウナスは戦闘を続ける体力はまだまだ有り余っており、まだ刃向かってくるなら相手をするつもりだったが、残りの12名は素早く逃げおおせたらしく、後に残ったのはダウンしている6名のみ。あの鈍化効果持ちと高速移動系の追跡者も逃げているようだ。
「なんだよ、もう居ないの? 全く、だったら実力の差が分かった最初の時点で逃げれば良いものを」
白狼のファウナスはスクロールを取り出し、電話をかけようとしたが、踏み台にしている追跡者が脚を掴み意識を逸らした。
「なに? まだやる気?」
「な、ぜ……」
「ん?」
「なぜ、女のファウナスが、これほどまで強い……?」
白狼のファウナスの中で何かが切れる音が聞こえた気がした。乱雑に追跡者の手を振りほどくと、今度は追跡者の胸倉を掴んでドスの効いた声で言った。
「ボクは、男だ!」
そして顔面に1発、本気のパンチがぶち込まれた。
場所は変わって、アトラス王国の中央軍施設内部。シャワーを浴び終えた白狼のファウナスは、アトラス軍の軍服に着替えてある場所まで来ていた。部屋のドア前に到着し、3回ノックをする。
「入れ」
「失礼します」
自動ドアが開かれ、部屋の中で待っていたのは白髪混じりの黒髪にがっしりとした体格を持った男と、雪景色のような白い髪をした若い女性。ドアが閉まったのを確認したあと、白狼のファウナスは敬礼する。
「『ハウル・アイアンウッド』、現着しました。」
「楽にしろ、今は私たちだけだ」
「ではお言葉通りに……ただいま、ダディ」
「おかえり」
白狼のファウナス、ハウルがダディと呼んだ男の名は『ジェイムズ・アイアンウッド』。このアトラス軍の将軍であり、ハウルの養父である。
「今日は災難だったな、まさかホワイト・ファングの構成員に狙われるとは」
「まあ、それはそうだけど。それよりボクとしては、いつもの訓練場所をアイツらが知っていたのが気になる。ウチの部隊から漏洩する事は先ず無いけど、どうやって知ったのか」
「軍内部に内通者か、はたまた別の方法か。お前と私が信頼できると踏んだ諜報員の言では、そのような人物は確認されていないらしい」
「となると別の方法にフォーカスが当たる訳だけど、だとしてもどうやって……?」
2人の会話の間に、女性の咳払いが入る。2人の視線が彼女に向けられると、彼女も会話に参加した。
「そちらについては何れにせよ、判明していくでしょう。ここで悩まれていては本題に入れません、将軍」
「あぁ、そうだったな」
「頼みたいこと、でしたね。ウィンター様と何か関わっておいでで?」
ジェイムズは頷き、ハウルを呼ぶことになった本題について話をし始める。
「お前に頼みたいのは、ワイス・シュニーの護衛になる」
「ワイス様の……あぁ、確かビーコン・アカデミーの方に入学なさるのでしたよね」
「そうだ。そして厳密に言うとジャックからの依頼だがな」
「あぁ、ジャック様の」
「……我慢しなくても良いぞ」
「では失礼して」
ニコラスという名前を聞いて口にした事実に対し、ハウルはすぐに苦い顔を顕にする。傍で見ていたウィンター・シュニーは少し吹き出し、困りながらも笑っていた。
「本当に君は、お父様の事が苦手なのだな」
「ファウナスのボクを信用してるのは良いんですけど、余計な一言が多いんですよ。どうやったって治りそうに無いのは分かってるんですけど、出来れば抑えてほしいというか」
「まぁ、お父様のアレは生まれついてのものだ。すまないな」
「貴女が謝るような事ではありませんよ。別にその辺に関してウィンター様は特に関係ないですし」
「そう言ってくれるだけで嬉しいよ、ありがとう」
ウィンターがハウルの頭を撫で始める。耳を横に倒し目を細め、尻尾が巻き尾になって横にパタパタと動き始めた。身長差があるためハウルが身を屈める形になっており、彼から撫でられに行ってるようにも見える。
ただ、彼女の撫でが終わりそうに無いので、すぐに姿勢を正して手から離れた。
「あっ」
「ウィンター様、また次の機会に」
「あ、あぁ。そうだな」
「それで、ダディ。ボクもビーコンに行くよ、ワイス様の護衛の間は副隊長に部隊を任せる方向で行く」
「助かる、いつもすまないな」
「そこはありがとうで良いよ。あぁ、それとライオンハート教授の身辺調査の定期報告だけど──」
そして時は経ち、彼はワイス・シュニーの護衛とビーコン・アカデミーへの入学のためにヴェイル王国へと向かった。
これから出てくるRWBY:OCたちは、ゲームを参考に設定を練って作りました。良ければ何のゲームから生まれたのか予想してみるのもありかと。
RWBYOC:その1
『ハウル・アイアンウッド』Age17
身長182cm 体重64kg
白狼のファウナス 男の娘 元孤児
ジェイムズ・アイアンウッドの義子
センブランス:■■