白狼ファウナス男の娘! 被り物着用無口男の子? のじゃロリ有能怠け者! 天真爛漫金髪赤目褐色少女! 我ら!   作:(´鋼`)

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今回は少し筆が乗りました

11月30日、一部修正


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005

 

 

 

 ビーコン・アカデミー学長オズピンの挨拶は短い内容であったにも関わらず、講堂に集まった新入生へ投げかける言葉としては不穏なものを想起させるものであった。とはいえ生徒の反応など、単なる虚仮威しだの少しばかりの怖さを感じた程度らしく、本当の意味を知ることになるのはこれから先の事になるだろう。

 

 今夜はダンスホールで全員就寝するとの通達をグリンダ・グッドウィッチから伝えられた。そして夜になるまでの間にアカデミーの施設案内や休憩時間などを過ごし、男子側のシャワールームで少し一悶着あったりと退屈しない時間が経過していった。

 

 そして夜、まだまだ元気の有り余っている生徒たちがダンスホールに敷き詰められた寝袋の上で各々なりの時間の過ごし方をしている頃のこと。

 

 

「へぇー、家族ぐるみの付き合いなんだ」

 

「えぇ。といっても、食事会にお招きされたりする程度ですがね。ワイス様と知り合ったのも2年前とかですし」

 

「じゃあさ、彼女のことをお姉ちゃんって言ってたのは?」

 

「そう言うと可愛らしい反応を見せてくれるので。あとはワイス様の方が誕生日が早いので」

 

「へぇー! 私もちょっと言ってみようかな、仲良くなった頃に」

 

「決めました、この方とは仲良くしません」

 

「えー?」

 

「えー? じゃ、ありません! ハウルも余計な事を言わない!」

 

「おっと、これはうっかり」

 

「わざとでしょう!」

 

 

 ヤン、ワイス、ルビー、そしてハウルの4人が集まって歓談していた。歓談というよりも、ハウルが時折ワイスをからかったりするので、2人の痴話喧嘩に混ざっているような状態であったりする。

 

 因みに本来男であるハウルは女子側のスペースに入ることは出来ないものだが、ヤンが「顔が女子だし、紳士そうだから大丈夫でしょ」と言って誘った事で今に至る。尚、その際にハウルが受けた精神的ダメージには知らない振りをした。

 

 

「ほらルビー、アンタもハウルに何か聞いてみたら?」

 

「聞いてみたらって、何を?」

 

「それはほら、何でも良いのよ。ルビーの好きな武器の話でも良いしさ」

 

「武器、ですか?」

 

「えっと、うん。私武器が大好きで、クレセント・ローズを作る時に色々と凝りすぎちゃうぐらい夢中になるんだ」

 

「待った、何を作るとおっしゃいましたの?」

 

「クレセント・ローズ、私の武器だよ。シグナルじゃ普通の事だし」

 

「……あぁ成程、お二方はシグナル・アカデミーに在籍していらいたと。聞き覚えがあります、確か課題として自作の武器を作る学校の1つにその名前が」

 

「よく知ってるねアンタ」

 

「癖で調べたりしましてね。因みにそのクレセント・ローズというのはどのような武器種で?」

 

「サイスでスナイパーライフルにも変形できるんだ。射撃時の反動を抑えて精密射撃もしたかったからサイス形態でも撃てるようにもしてるの! スコープを内蔵する時に細かい作業とか必要だったしスナイパーライフルとサイスの両立で耐久性も考えなくちゃいけなかったからクロウ叔父さんにも手伝ってもらって素材を探したり変形機構の複雑さに頭を抱えたりしたけど私の大事な子なの! ストッピングパワーも確保したいから摩耗の少ないグラビティダストの反発力を使用した発射機構を組み込んだしそれに!」

 

「ルビー、ルビー。早い早い、夢中になるのは分かるけど落ち着いて」

 

 

 夢中で自身の武器について語っていたルビーであったが、ヤンの制止によってワイスとハウルの表情を交互に見やる。急に饒舌になった少女は静けさに襲われた為か、途端に大人しくなった。

 

 

「ご、ごめんなさい。私武器のことになるとつい」

 

「なぜそこで謝るんですの? まあ今ので貴女がとても武器が大好きな事は理解しました、でもそれだけです。別に引いてる訳ではありませんわ」

 

「そうですよルビーさん。それにそこまで熱中するぐらい大好きなのでしょう? 貴女はそれを誇って良いんです。ボクとしては何かに夢中になっている貴女の方が好きですよ」

 

「すっ……!?」

 

「ちょっと、妹を誑かさないでくれない?」

 

「流石に見境無いのは頂けませんことよ女誑しさん?」

 

「ボク別にそういうつもりで言った訳じゃないんですけど……!」

 

 

 ハウルの発言に対し危機感を持ったヤンがルビーを抱き寄せて守りに入る。若干頬の赤みが増しているルビーとは裏腹に、ハウルの方はそれほど顔や態度に現れている訳でもない様子であった。

 

 

「きゃっ!?」

 

 

 と、歓談中に4人の耳に入ってきた女子生徒らしき人物の驚く声。4人がその方向へと視線を向ければ、慌てて火のついた燭台を戻している女子生徒と、何やら奇妙な被り物を被った誰かがそこに居た。

 

 ハウルはすぐに立ち上がり、その2人の元まで歩み寄り声をかける。それに続くようにして他の3人も集まった。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、ええ。ごめんなさい、少し驚いただけ」

 

「いえ、大事なくて良かったです。して、ご迷惑でなければでよろしいのですが、先程はなぜ驚いてしまわれたので?」

 

「この被り物をした子に──って、居ない!?」

 

 

 彼女の傍に置かれてある本から、おそらくは読書中であったのだろう。そこに奇妙な被り物をした者が何かしらしたというのが考えられたが、彼女の近くに居たはずの当人が見当たらない。

 

 しかし辺りを軽く見回してみれば、その当人はすぐに見つかった。ルビー、ヤン、ワイスの3人の輪の中に入っている被り物をした件の人物が居たのである。これにはハウルも内心驚きを隠せずにいた。

 

 

「わあ、アンタすっごく……特徴的ね。その白い被り物とかさ」

 

「私より背が低い子、居たんだ」

 

「その前に人なのかどうかも怪しいのですけど」

 

「いやいや人でしょ……人よね?」

 

 

 ヤンの疑問に対し被り物をしている人物は頷いた。

 

 

「ねぇ、貴方の名前は? 私ルビー」

 

 

 ルビーの質問に対し、被り物をした人物はスクロールを取り出し、何かを入力し始める。1〜2秒程度の時間が経つと、手が止まったかと思えばスクロールの画面を見せた。

 

 

<僕はオブリー。オブリー・マルホッグ、よろしくね

 

「へぇ、オブリーっていうんだ。よろしくね」

 

「ってかさ、もしかして喋れないの? あ、私はヤン。こっちはワイス」

 

「ちょっと、自己紹介ぐらい自分で出来ますわ」

 

<よろしく、ルビー、ヤン、ワイス。あとその質問の答えはYESだよ

 

「中々不便ね」

 

<もう慣れた

 

「あー、そこの被り物をしている君。ちょっと良い?」

 

 

 オブリーが3人の方に向けていた視線が、ハウルの方に動く。ハウルはオブリーの視線に合わせるようにしゃがんだ。

 

 

「名前はさっき聞いてたけど、オブリーで合ってるかい?」

 

 

 オブリーは首肯する。

 

 

「ならオブリー、1つ良いかい? さっきあそこに居る彼女の傍に居ただろう。あの時、驚いて燭台にぶつかったのは知ってた?」

 

 

 オブリーはその質問にも首肯で返した。

 

 

「驚かせたのはわざと?」

 

 

 その質問には首を横に振って答えた。

 

 

「そっか、わざとでは無いのは分かった。ただ危ない事になっていたかもしれなかったから、その辺りの迷惑については謝っておいた方が良いと思う。彼女の方にね」

 

 

 頷いて返答したオブリーはそのまま本を読んでいた彼女のもとへと向かい、近くまで歩み寄ったあとスクロールを入力しその文面を見せる。

 

 

<さっきはごめんなさい、驚かせちゃって

 

「あぁ、別に良いわ。気付かなかった私も悪かったし」

 

<僕オブリー、オブリー・マルホッグ。君は?

 

「ブレイクよ」

 

<よろしく、ブレイク

 

 

 すっ、とオブリーが手を差し出す。差し出された手をブレイクは見ていただけだったが、軽く前に出された事で握手を交わす。

 

 

「……ん?」

 

 

 不意にブレイクの手に何か変な感触が伝わった。何かと思い手のひらを見てみれば、そこにあったのはオブリーが決めポーズをしている絵柄の栞であった。

 

 

<僕がプリントされた栞、良かったら使ってね

 

 

 まるで口をおさえてケラケラと笑っているようなオブリーと、会話文が映し出されているスクロールの光が、怒る気にはなれないけれど微妙な面倒臭さを醸し出していた。

 

 

「……えぇ、まぁ。使う時があれば」

 

「わぁお、オブリーったら早速プレゼント?」

 

「手が早いのですね」

 

「ボクの方を見ないでくれません?」

 

「誰、とまで言わないだけマシだと思いませんこと?」

 

「暗に言ってきてるじゃないですか、視線で」

 

「はいはい、そこのお2人さん痴話喧嘩は後でね。私ヤン、リボン可愛いね!」

 

「ええ、ありがとう」

 

 

 そこで会話が終わり、気まずい時間が流れるかと思いきや、ハウルがブレイクに正面を向き正座の姿勢をとった。

 

 

「改めまして、ハウルといいます。これからよろしくお願いします、ブレイクさん」

 

「……ええ、そうね」

 

 

 またも簡素な受け答えで終わろうとしていたところに、流石に痺れを切らしたワイスが口を出してくる。

 

 

「ちょっと、貴女。それが相手に向ける態度で──」

 

「ワイス様、それ以上はお待ちを」

 

「ハウル、貴方はそちらの方を庇うの?」

 

「人には人のペースを持ち合わせています。下手にこうした方が良いと強要されると逆効果になるかもしれません、それにボクは特に気にしてませんよ。物静かなタイプは知り合いに居ますし」

 

「あら、よく知ってるような物言いね」

 

「まさか。似た人物を知っていて、その時にした接し方をしてるだけに過ぎませんよ」

 

「そう。なら今私が考えてる事も分かったりするのかしら?」

 

「“静かに本を読み、1人の世界を楽しみたい” といった所ですかね。ではボクらはこれにて」

 

「ちょっと、ハウル!」

 

 

 優しげな笑みを保ったまま、ハウルは立ち上がり集まっていた彼女らから離れて男子側のスペースに向かおうとして、何かを思い出したかのように1歩踏み出しかけた足を引っ込めてブレイクの方へと視線を向ける。

 

 

「あぁ、失礼一言忘れていました。おやすみなさい、ブレイクさん。また明日」

 

「……えぇ、おやすみなさい」

 

「ワイス様、ルビー、ヤン。ボクはそろそろ就寝に入ろうかと思います。明日も忙しくなりそうですし、皆様もそろそろ就寝に入られた方がよろしいかと」

 

「……はぁ、分かりました。おやすみなさい」

 

「あぁ、おやすみ」

 

「おやすみなさい」

 

 

 一礼してハウルは男子側のスペースに向かいながら、オブリーの姿を探してみたがいつの間にか男子側のスペースにオブリーが居たことを確認する。自分が気付かない、なんて事があるのだろうかと考えを巡らせながら眠りについた。

 

 

 

006

 

 

 

 明朝、まだ誰も起きていない時間帯。標高の高い場所に建設されたビーコンは空が白んでくるのも少しばかり早い。

 

 時刻にして朝の4時。まるで普段からそのようにしているような動きで眠りから目覚めたハウルは、慣れた手つきで寝袋を片付けたあと洗顔、歯磨き、着替えを済ませて外へと出ていく。

 

 胸と背中に伝わる鉄の感触と大きめのシンプルなカチューシャの重さと共に、ほのかに朝焼けた空の下でどこか座れる場所を探している最中、彼と同じように宛もなく歩いている小さな女児を見かけた。

 

 ハウルはその女児を見つけると、彼女に近寄り挨拶を交わす。

 

 

「おはようございます、朝がお早いのですね」

 

「ん? おう、おはようさん」

 

「して、かのウカノグループの御令嬢のサクラ様は一体ここで何を?」

 

 

 ぴた、と足を止めた女児がハウルの方へと視線を向けた。古墳島田と呼ばれる結い方で纏められた紫色の髪をした彼女、サクラ・ウカノはハウルを見上げて一言。

 

 

「高い、しゃがめ」

 

「これは失礼」

 

 

 ハウルは相手の物言いに対し、特に言及することなく相手の視線に合わせてしゃがんだ。

 

 

「で、お主。儂の名をよく知っておったな」

 

「調べれば情報ぐらい出てきますから。ボクとしては、貴女が入学した事があまり話題になってない事に驚いてますけど」

 

「大半が興味無いのじゃろ。儂のことを迷い込んだ童として扱っておった者も居たしの」

 

「おや、それは怖いもの知らずな御方で」

 

「無知ゆえよ、気にすることでもない。して、お主名は?」

 

「ハウルとお呼びください」

 

「ふむ、ハウルとな。で、名字(ラストネーム)は?」

 

 

 その問いに対して、ハウルは少しの間だけ無言になったあと表情を崩さずに告げた。

 

 

「申し訳ありません、今はただハウルという名だけ覚えていただければありがたい思いです」

 

「何故に?」

 

「またすぐにでも、否が応でも知る事になるでしょうから。あとは我儘というヤツです、今はただのハウルとして接していただきたい」

 

「……ま、良かろう。してハウル、話を戻すが儂が何をしておったかだったな」

 

「はい」

 

「普段ならこの時間帯に起きて、田畑の面倒やら育てた苗を植えたりやらと農作業をしておった。じゃが身に付いた習慣のせいか、早うにここで起きてもする事が見つからん。暇を潰しておっただけよ」

 

「なるほど。お答えいただき、ありがとうございます」

 

「それで、お主こそ何をしておった? この時間帯に起きている者を見るのは、学生にしては珍しいのでな」

 

「ボクも似たようなものです。普段通りに起きるとこの時間帯になりまして、その後はまあ鍛錬ばかりの時を過ごします」

 

「……儂が言うのもなんじゃが、それが趣味か?」

 

「生活の一部兼趣味になりつつあると言いますか、勿論それ以外にも趣味はあるんですけどね」

 

「ほぉ、それは?」

 

「日向ぼっこです」

 

「犬じゃの」

 

「狼です」

 

 

 そういった会話を続け、朝焼けの景色を高身長と低身長の2人は一時の間なにをするでもなく歩いて過ごすのだった。

 

 

 


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