タイトル通り、眷属が常闇と共に過ごす話。それ以上でもそれ以下でもありません。

pixivにも投稿してます。よしなに。
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常闇と過ごす日々

「はぁぁ……疲れたーー」

 

二十二時。帰り道を歩いている。今日も今日とて仕事を終えたらこんな時間である。

高校での進路決め、大学に行く金はうちにはなく、そもそもいいところに行けるほどの学力もない俺はごくごく自然な流れで就職の道を進んだ。とは言っても高卒で就ける職なんてたかが知れている。結局俺は所謂世間一般で「ブラック企業」と言われている職場に就くことを強いられた。

 

別に人生に絶望しているというほどでもない。安い給料だが生きてはいけるし、金のかからない軽い趣味のようなものもある。だが仕事は辛いし睡眠が充分に取れていないのも事実だ。

しんどいのは間違いない。心が大丈夫でも体が追いつかなかったり体が大丈夫でも心が追いつかなかったりそんなことばかりだ。

もし悪魔やランプの魔人が現れようもんなら間違いなく「一生健康な体」だとか「最強の心身」だとか頼むんだろう。いや、結局金だな。

ほんと、猫の手も借りたいどころか悪魔が今目の前にいたなら即契約交わしちまいそうなもんである。

 

「悪魔の手も借りたい…か。ハハ」

 

なんてありもしないことを考えるあたり実は俺も相当限界を迎えてるのかもしれない。

 

 

 

 

……そんなくだらないことを考えていたその瞬間。

 

 

 

 

世界が一瞬、暗転した気がした。若しくは、灰色に染まったと表現すべきか。とにかく、色を感じなくなったのは確かだ。

何分何時間にも感じられる一瞬だった。立ちくらみか、それより酷い症状が突然出た可能性も考えたが、それ以上に、「ああ、ついに俺死ぬのか」と思った。

なにが原因かまるでわからない。なにかしらの病気を持っていたのかもしれない。或いは今この瞬間後ろから誰かに刺された可能性だってなくはないだろう。直感で、そう確信してしまった。

 

 

 

……しかし。

確信はどうやら外れたようだ。世界には色が戻った。まるでただ一つの異常もなかったかのように世界は正常に回っている。

 

ただ一つ。

 

 

 

 

俺の目の前に禍々しいゲートのような物が突然現れたことを除けば。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……は?」

 

今の一瞬で一体俺の身の回りに幾つの怪奇現象が起きた。

いや、現在進行形で起きているのだ。

一瞬の暗転だとか、「死ぬ」という確信だとか、そういうの全部忘れるくらい「異質」と表現するにふさわしい物がそこにはあった。

禍々しい紫のオーラ?に包まれた、ゲートというには少し歪な形の何か。その先は何も視認することはできず、入ればもう戻ることはできないと確信させる闇だけが存在していた。

 

これがなんなのか、どこから現れた、あの暗転した一瞬で「現世」から所謂「異世界」だとかそういうのに飛ばされたのか、…はたまた俺はもう死んでしまっているのか。

そんな俺のさまざまな思考は、目の前のゲートらしきものによって再度中断されることとなる。

いや、厳密にはそれ自体ではない。

 

「はあ〜〜ほんとに言ってんの?」

 

「………」

 

「それ」の中から、何者かが出てきたのである。怪獣だとか死神だとかそういう類の怪物が出てくるのかと思いきや、出てきたのは少し奇抜な格好と日本では少ないであろう髪色をしただけの容姿端麗な少女だった。

ただ一つ容姿について特筆して気になる点があるとすれば、尻尾らしきものが付いていることくらいか。

 

ゲートらしきものは彼女が出てきた瞬間閉じ、もう見る影もなくなった辺り彼女のために開かれた、或いは彼女が出したものであることは間違いない。

 

「うーん…君かぁ」

 

「……何がだ」

 

「トワを呼び出したの」

 

何故か目の前の女の子は少し怒っている様子だった。「呼び出した」というのに何か関係しているんだろうか。というかそもそも「呼び出した」ってなんなんだよ。俺が、彼女を?それじゃまるで本当に…

 

「まーいいや。自己紹介がまだだったね。こんやっぴー常闇トワ様でーす。」

 

全然いいやと思ってなさそうな気だるげな声で放たれた「こんやっぴー」というよく分からない挨拶?とともに名乗られた彼女の名は「常闇トワ」だった。自己紹介頂いたが、この状況で名乗られてもだ。他に聞きたいことは山程なんて例えじゃ到底足りないほどある。

 

「……き、君はどこから来たんだ?さっきのゲートみたいなものは?何のために俺の前に———」

 

「はーいはいストップ!そんなに一気に答えられないって!」

 

「あ、わ、悪い…」

 

「じゃ、『何のために』ってとこから答えてあげる!

 

 

 

———ねぇ君、トワの眷属になってよ!」

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

「……いや、全然答えになってないし。何も分からないんだが」

 

「えーとりあえずなってくれたらいいからさー」

 

「んな簡単になれるか!てかならねぇし!」

 

眷属ってなにか知ってんのか眷属って。あれだぞ、一生忠誠を誓って付き従いますってことだぞ。多分。「なってください」で「はいなります」ってなるわけないだろ。

そもそもなんだ「眷属」って。現代社会に似つかわしくない言葉。つってもこの少女に「現代社会」とかいうのが通用するのかは知らんが。

 

「えーでも君にはなってもらわないと困るんだよー。ていうかなるしかない?」

 

「どういうことだよ…そもそもその前から説明してくれ。俺が一番気になってるのはあのゲートらしきもんだ。あれが分かれば君が誰とかにも繋がってくるだろ…あれから説明してくれ」

 

「あーあれは魔界と現世を繋ぐワープトンネルみたいなもの。つまりトワは魔界から来たちょーすごい悪魔ってわけ!」

 

「……は?魔界?悪魔?……い、いや、わかった。夢だな。おーい現実の俺、早く目醒めろー」

 

「夢じゃないって!ほら!」

 

と言われていきなり頬をぶっ叩かれる。は?

 

「いっってぇはあああ!?何急に叩いてきてんの!?なにが『ほら』だよ!痛みで現実って実感させんならもっとデコピンとかあんだろ!叩くにしてもなんでフルスイングなんだよ!」

 

「もーいちいちうるさいなー。これで夢じゃないって分かったんだからいいじゃん。」

 

「よくねぇ!」

 

「…てか、そんな大声で叫んでていいの?」

 

「……なにが」

 

「君以外にトワは見えてないから、君周りから見たら道で一人で叫んでる奴になってるよ?」

 

……はぁ!?そういう大事なことは自己紹介の前に欲しいな!さっきから、てか出てきてからずっと説明不足が凄まじい!よくないと思うよーそういうの!

 

「早く言えよ!!……っと、クソ…」

 

幸い人通りは少ない為人はいないが、住宅には響いているかもわからない。気をつけよう。

俺たちは更に狭く人の気配のしない通りに入り話を進める。

 

「……で、信じ難いけどこれが現実だったとして、魔界もあって君が悪魔だとして、一つだけいいか?」

 

「ん、なに?」

 

「……ちょーすごい悪魔ってのは嘘だろ」

 

「……はああ!?嘘じゃないし!ほんとにすごいから!てか一つだけでそれ!?」

 

「いや、もしお前がすごい悪魔だったら悪魔って種族はたかが知れるだろ。想像してたバケモンみたいなやつじゃないし」

 

「……へー。そんなに舐めたこと言っていいんだ。そんなこと言うなら…んっ!」

 

急に手を固く握る。その動作に何の意味が……!?

 

「がっ!?……うあ……ぐ……なん…だ…」

 

突然心臓を掴まれて握られたような感覚が襲い、あまりの苦しさに膝をついてしまう。

 

「はい。これが悪魔の力。こんなの未熟な悪魔じゃできないんだから。信じてくれた?」

 

「はぁ…っはぁ…わ、わかったから…冗談だよ冗談…俺が本当に聞きたかったのは、そんな悪魔様が俺なんかに何の用なんだってことだ。」

 

「そう!そこなの!」

 

そこだったらしい。彼女は待ってたかのように大声で主張する。

 

彼女が言うにはこうだ。

魔界には「魔界学校」なるものがあり、そこは魔界に存在している悪魔、吸血鬼、魔女などをはじめとした生物が、それぞれの道で一人前になりそれを職業にする為の育成学校らしい。まぁこの世界の学校とあまり変わりはないだろう。勉強して、就職。簡単に言うとそんなもんだと思う。

 

次はその「職業」のことについて説明を受けた。

魔界には主に、「魔界の中での職業」と「魔界の外での職業」があるらしい。その「外の職業」ってのが所謂、契約だとかそういった人間や現世に影響を与える仕事らしいのだ。そして、その職業に就こうとしている生徒は、卒業する為に「実習」をしなければならない。そこでの成績で卒業できるかどうかが決まると。まぁこの世界で言うと教員免許を取るために教育実習に行くみたいなもんだろ。

 

「ふーん。んじゃあここまでの流れから察するに、君は卒業間近の生徒で、実習をする為に俺のところに来たってことでいいのか?」

 

「うーん、近いっちゃ近いけど一番大事なとこが間違ってる!てかまだ話は終わってないから!」

 

「あーはいはい」

 

聞くところ、どうやらこの子は卒業が近くはあるがまだ実習に行く時期ではないらしい。

時期ではないのに何故この世界に来たのか。

 

 

 

……追い出されたらしい。なんとまあ。

突然先生とやらに怒られて追放されたんだと。そんなことあんの。

 

「まず何で怒られたんだ?」

 

「それがわかんないの!なーんか先生さ!急に『お前は悪魔として成ってない!』とか言い出してさー。だからこその学校じゃん。」

 

「んまぁ確かにそうだな。一人前になる為の学校なんだろ?よく分からないな。それに、生徒が急に別世界に追い出されるとかあんの?」

 

「ないよ!聞いたこともない!それに何で怒られたのかトワもよく分かってないからどうやったら戻れるのかもわかんないし。」

 

「君はゲート出せないのか?」

 

「そうそこ!そこが大事なの!」

 

そこが大事らしい。

 

「まずゲートは、資格取って卒業して、仕事に就いた悪魔じゃないと開けないの!でもまだ開くには条件があって、負の感情が大きくて、かつ悪魔に願ってでも叶えたい願いがある人間がいないとゲートは開けない。悪魔の仕事は契約を取ることだからね。この世界を無法地帯にすることは目的としてない。」

 

「……なるほど?」

 

「最近は昔に比べて『悪魔』って存在を信じる人間も少なくなってきた。だから悪魔もなかなか契約を取れなくて困ってたりするの。」

 

「……ほう」

 

「分かってきた?つまり、いくら先生がトワを追い出すって言っても、『悪魔に願いを叶えられたい』と願う人がいなければトワはこっちに来なくて済んだってわけ。」

 

「……へー」

 

「…で、心当たりは?」

 

 

 

『悪魔の手も借りたい…か。ハハ』

 

 

 

「……ふぅ、なんか変な夢見てたな、俺疲れてんだろうなー今日はさっさと帰って寝…」

 

「どこ行くのー眷属ー?」

 

先程まで話していた「それ」の横を通り過ぎて帰ろうとした俺のシャツを乱暴に掴み右肩から顔を出してものすごい圧をかける悪魔さん。

口は笑ってるのに目が笑ってなさすぎる。怖いのでやめてほしい。

 

「お、俺は眷属になるとは…」

 

「あ、ついでに言うとね。先生、絶対トワを帰って来させないようにゲートを開くのと同時に君とトワの契約勝手に結んじゃったんだよねー」

 

「……は!?えなにそんなことできんの!?もうこっちの意思関係ねぇじゃん!」

 

ずるくないっすかねそれは!「契約」という言葉の意味をその先生とやらには丸一日かけてこっちから教鞭を取りたいもんである。

 

「先生がやっちゃったから詳しいことはよくわかんないけどさ。要するにもう君はトワの眷属になってるってわけ!君、トワが出てくる直前、意識が遠のいたりしなかった?」

 

「……あ」

 

確かにあった。永遠のように長い一瞬。世界に色がなくなり「死ぬ」と確信したあの一瞬。

あれは契約が結ばれた時に起こるもんだったのか…じゃあもうマジでそうなんじゃん…

 

「心当たりあるみたいだね。ま、そういうことだから君は眷属でトワが主人!」

 

そういや最初、眷属になるならないのくだりで「なるしかない?」とか言ってたな…

そりゃ、もうなってんだったらこっちは決心固めるしかないわけだ…ざけんじゃねぇ…

 

「てことで、主人として最初の命令を下す!」

 

「いやいや、俺が認めない限り…」

 

「とりあえず家に住まわせて!」

 

こいつ、人の話を何一つ聞いてねぇ。

 

「いや待てよ、そっちが勝手に契約したからって俺がそれに従う義理はないだろ?…俺はもう本当に帰らせてもらうぞ。明日も仕事なんだ。契約は破棄しといてくれ。」

 

そう言って俺は歩き出す。今度こそ本当に家に帰るために。こっちが従う義理はないのだからここでお別れだ。「家に住む」ってのは養えってことだろ?ただでさえ一人でもカツカツなのにできるかってんだ。

いやぁ、本当厄介なことに巻き込まれそうになった。

 

「あ、そんなこと言ったら」

 

「は?……ぐあああああ!!!!」

 

なんだ!?体の中から燃え盛るように熱が……!!

先程の心臓を掴まれたようなあの『悪魔の力』とやらとは比べ物にならない…!!

 

「一度結んだ契約を破棄するような行動や言動をすると罰が発生するから。」

 

「だからそういうのは先に……ぐああわかった!破棄しない!しないから!……はぁ、はぁ……」

 

んなアホな…こんな最初から決められていた詰みゲーがあってたまるか。

え、もうこいつ住まわせるしか選択肢ない…?いや本当に、んなアホな…

 

「これでわかってくれた?もう主従関係はできちゃってるの」

 

「……はぁ。もうどうしようもないことはグダグダ言わねぇよ。わかったわかった。眷属になりゃいいんだろ?あーもうわかったよなってやるよバーカほんとふざけんななんで俺がこんなことに…」

 

「ちょーグダグダ言ってんじゃん…まあいいや!じゃあそういうわけで、これからは『トワ様』って呼ぶこと。おけ?」

 

「おーけー常闇。」

 

「違う!『トワ様』!」

 

「了解した。常闇。」

 

「もーなにその意地!」

 

ほぼ俺悪くないのにこんなことに巻き込まれてこの短時間で散々な苦しみを味わった少しもの抵抗である。

と、そんな会話をしていると…

 

 

 

「あ、あの…さ、さっきからこんな狭い路地で一人でなに…言ってるんですか…?」

 

路地の先から少しこちらに顔を出して怯えながら問いかける人がいた。そうか。幾ら人通りの少ない通りの、更に人に見えづらい路地と言ってもこんだけ長く話してりゃ人の一人も通るわな。

 

あー最悪。

 

「なんでもないっす!さーせん!」

 

「(こい!)」

 

俺は小声で常闇を呼び、話しかけられた反対側から抜け出し常闇と共にダッシュで逃げる。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…疲れた…」

 

そのままの勢いでアパートの前まで帰ってきてしまった。息切れすぎて死にそう。

 

「はぁ…お、お前常闇…ずるいぞ…」

 

「んーなにがー?」

 

こいつ、空飛べるなんて聞いてない。

地面から数センチ浮いた状態で着いてきては、たまーに真横に来て息が切れて死にそうな俺を煽ってくるのである。悪魔かよ。悪魔か。

 

 

「もういいや…さっさと家入ろう…疲れた」

 

 

二階にある自分の部屋へ向かう為、階段を登ろうとしたその時。

 

 

「眷属!」

 

 

「…んだよ」

 

 

「これからよろしくね!」

 

 

…こいつがもし人間で、普通に出会っていたら天使にも思えたであろう満面の笑みを浮かべ改めて丁寧な挨拶を頂いたが、その満面の笑みでさえ今の俺には悪魔的なまでの煽りにしか見えないのだ。

 

 

「へーへー、よろしくな常闇」

 

 

 

いやぁ、本当、厄介なことに巻き込まれたもんだ。

 

 

 

こうして、常闇と過ごす日々が始まった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

あの日からなんと半年が経っていた。時とは流れてみれば早いもんだ。

 

 

正直に言おう。俺はもう常闇に対する不満が限界に達していた。

いや、確かに常闇は容姿だけ見ればアイドルにでもなれそうなくらい可愛いとは思うし、半年も共に過ごしたのだ。楽しい嬉しいなどプラスの感情になる出来事もないでもなかった。

しかし、こいつ私生活が終わりすぎてるのだ。俺が逆らえないのをいいことに全てを俺に押し付けては自分は現代社会の快楽を知っては毎日ソファでテレビ、俺のPCを勝手に使いネットサーフィン、連絡用に渡した俺にお古のスマホを使ってSNSやら音楽鑑賞やら。

すること自体は別にいいが、「全て俺に押し付けて」ってところが気に食わない。

俺の折角の休日とか、俺が疲れて休憩したい時間もお構いなしで、ていうかその時間を狙ってやってんじゃないかくらい最高に最悪なタイミングで俺を外に連れ回したりなにかしらで振り回して来たりする。

眷属ってのを奴隷と勘違いしてるんじゃないだろうか。

 

 

本当の意味で、「常闇」と共に過ごしている感覚である。

 

 

 

 

 

 

俺は「言ってもしょうがない」ということを理解しつつも一言声をかけるのが日常茶飯事となっていた。

 

 

「常闇…お前もちょっとは家事手伝えよ。ここに住んでんだろ」

 

 

「ふんふーん♪」

 

 

「………ったく」

 

 

俺のイヤホンを勝手に着け、なんともまあ楽しそうに音楽を聴くもんだ。

 

 

 

 

 

 

さすがに着替えがないのは可哀想だと買ってやった服も…

 

 

「おい…脱ぎっぱなしにせずに自分で洗濯機に入れるくらいしろ」

 

 

「えーめんどくさーい眷属やってよー」

 

 

「あのなぁ…はぁ…」

 

 

これも、もう「言ってもしょうがない」の領域だ。俺は寝巻きを拾い上げ洗濯カゴに放り込む。

…って。

 

 

「おいなにお前『ついで』みたいな感じで靴下も脱いでんだふざけんな」

 

 

器用に足だけで脱いでつま先で床に飛ばしてんじゃねえよなんだその俺を煽るためだけに習得したとしか思えない技術。

 

 

「てへっ☆」

 

 

よし、こいつは俺がいつか痛い目見せる。

 

 

 

 

 

 

一度、少しのお小遣いをやって遊びに行かせたら見事に人間界のショッピングにハマってしまった常闇に、せっかくの休日にショッピングモールに連れ回されていた。

 

 

「お、おい常闇…重いからちょっとは持ってくれよ…」

 

 

「男でしょー。人間界の男は乙女の荷物を持つのが普通なんでしょ?」

 

 

「どこで付けたんだそのいらん知識は…」

 

 

勿論、荷物持ちで。

こいつ、在学中の小悪魔とはいえ人間より遥かにフィジカル面では強いくせに…

 

 

 

 

 

 

遊園地に行ってみたいと言われまーた貴重な休日に無理矢理連れ出された日の帰り道。

 

 

「あーー眷属疲れたーおんぶしてー」

 

 

「はぁ…ったく…常闇は宙に浮けんだから姿消して浮きゃいいだろが…こっちのが疲れてるっての」

 

 

「え?あー人間界に居すぎて忘れてたー。今突然トワが消えるのも周りの人びっくりするでしょーほらいいからー」

 

 

常闇は眷属以外に姿を見せるか見せないかこれまた「悪魔の力」とやらで変更できるらしい。

最近では見せるのが当たり前になってきてその影響で地面に足をつけて歩くのが普通になったためすぐこんな風に「疲れた」とか言ってはおんぶをせがんで来たりする。お前は俺の子供か。お前が突然姿を消すより見た目高校生くらいのお前を俺がおんぶする方がよっぽど周りの目を集めるんじゃい。

 

 

よし、ここは日頃の鬱憤も兼ねて一つ仕返ししてやろう。

 

 

「はぁ…ほら、乗れ」

 

 

常闇は背中に乗ると毎回目を瞑っているのか知らんが、周りの目に気づいていない。

 

 

「っしゃ!今日はやけに素直じゃん♪」

 

 

つまり、自分の状況にも気づいてないってことだ。

 

 

俺は歩き出してしばらく経ってから言い放つ。

 

 

「…ところで、結構な人通りのここでこの光景って周りからどう見られてんだろうな。」

 

 

「んー?…………お、降ろして」

 

 

常闇はワントーン低くなった、羞恥心たっぷりの震えた声で俺だけに聞こえるように言う。まぁ俺がここでする返事は一つだろう。

 

 

「ん?なんか言ったか?」

 

 

「降ろして!!!早く降ろせ眷属ーーー!!!!」

 

 

ざまぁ。

 

 

 

 

 

 

先ほども述べたが別に嬉しいことがなかったでもない。

こいつが人間界の食事にハマっちまったもんだから用意しろと命令され食費も二倍になったのは流石にいただけないが…

 

 

「ほら唐揚げ。」

 

 

俺はいつものように適当に晩飯を作る。常闇は飯はうまそうに食ってくれるから反応は割と楽しみなんだが…

 

 

「………え」

 

 

この日の反応は変だった。

 

 

「ど、どうした。なんか変なもん入ってたか。まだちょっと生だったか?そんなことないと…」

 

 

「……しい」

 

 

「ん?な、なんだ?」

 

 

「おいしーーーーーい!!なにこれ!!!」

 

 

「ん……はは、そうか」

 

 

唐揚げが随分お気に召したようで目を輝かせて子供のように頬張る常闇は見てて悪い気分じゃなかったのは確かだ。

 

 

 

 

 

 

俺はずっと気になっていたことをふと聞いてみた。ただ、ふとだ。

 

 

「そういや常闇、お前学生らしいけど実際何歳なの?悪魔って人間より———」

 

 

「はっ!」

 

 

「うがあああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

…まぁ最後のは俺が悪いか。てかなんか途中から「俺がストレス溜まった記憶」って前提崩れてなかったか?

 

いやだが違う!

俺が言いたいのはとにかくこいつのおかげでこちとら不平不満とストレスやらが限界値に達してるって話だ!

特に最近なんか俺がなんでもする生活に完全に慣れたのか日に日に文句の数が増えていっている。

俺が露骨に「嫌だ」とか「しんどい」みたいなオーラを出しても構わず俺という人間を乱用し続けるのだ。どんなメンタルしてんだよ。

しかも、何がひどいってこの部屋は一人部屋の為勿論寝室なんて一つしかない。

あの常闇だ。一つしかない寝室などぶん取るに決まっている。

結果、俺は毎日ソファで寝る羽目になっている。あいつマジで。

 

 

そうしてまた常闇を世話する一日が始まった。

今日はなんとなんと休日である。

が、昔と違い、もう素直に休日を喜べない自分がいた。

理由は明白だろう。常闇を一日中世話するという難易度ナイトメアの試練が課されるからである。

いやまさか自分でも職場が憩いの場になるとは思いもしなかったよ。確かに労働は今でもしんどいし疲れるが、悪魔様のお世話と比べたらなんでもない。

もっと言ってしまうと今日明日は世にも珍しい二連休である。

びっくりするぜコノヤロー。ただでさえ社会に出てから幻だと思っていた二連休。来るなら休日が幸せでしかなかった時に来て欲しかったもんだ。

 

まあ、そんなこと言ったって今日は休日。その事実は変わらないので受け入れるしかない。

俺は休日は昼まで寝るタイプの人間なのだが、毎度午前十時くらいにトワが俺の部屋のドアを勢いよく開き空腹の報告をしながら無理やり起こしてくるルーティンがストレスすぎて逆に俺が先に起きて朝食を用意するという謎の境地に行き着いてしまった。ほんと勘弁してほしいもんだ。

現時刻は午前八時。俺は重い体を愛しの毛布から引き離し顔を洗い歯を磨く。

 

俺は朝食を準備し、常闇を起こしに行く。

時刻は午前九時。

現在は常闇の部屋となってしまった元俺の部屋のドアをノックする。

 

「おーい常闇、起きろー」

 

「………」

 

まだ寝ているのだろうか。

 

「常闇ー、入るぞー」

 

「……」

 

返事がないので俺はドアを開く。

そこに常闇の姿はなかった。

いや、なかったというのは少し違う。そこに居るのはわかる。しかし姿は見えない。

要するに、常闇は布団の中に完全に身を包んでしまっているわけだ。頭の先まで完全に。

流石に布団を引き剥がすほどデリカシーの欠如した人間ではないので一応まず布団の上から揺らしてみる。

 

「おい常闇、大丈夫か」

 

「………ん」

 

案外普通に目を覚まし、布団から顔を出した。

 

「朝だぞ。朝食できてるから顔洗ってこい」

 

「…………」

 

まだ完全に覚醒していないのだろう。寝惚け眼でこちらを見続けている。

 

「………はああああなんで部屋勝手に入ってんの!バカ!変態!」

 

「うがっ……」

 

常闇は脊髄反射でこちらに枕を投げ付け俺の腹にクリティカルヒットさせたのち、大して広くない一人用ベッドで後退り両腕で体を守るように身を包んだ。

なんだよ。なんもしてねぇよお前なんぞには。

…にしても、何か布団の中から横に落ちた気がするがなんだ?そこそこ大きかった気はするのだが俺視点から見て奥に落ちたので見えない。ま、いいか。

 

「…いや、しょうがないだろ。返事なかったんだから」

 

「起きるまで待ってよ!」

 

「…あんなぁ…はぁもういいや。とにかく顔洗ってこい。飯冷めんぞ。」

 

「話終わってないんだけど!」

 

「はいはいわかった次から気をつけますよ」

 

そう言いながら俺はドアノブを捻り、後ろから未だにひしひしと伝わってくる睨んでいる視線を無視しドアを閉じた。

 

 

 

 

 

 

……思えば、朝から様子はおかしかった。それは気づいてはいても、割と毎日コロコロ性格やノリが変わったりする常闇のいつもの気まぐれだろうと思考をやめていた。

 

俺は常闇の世話は一日において最小限に納めたいので、休日は朝食を作ったらその後は基本自分の時間に充てる。そして常闇も俺を荷物持ちにして出かけたりしない限り自分で好きなことをしている。たまに話すことがあったら文句を垂れてくるくらいだ。

…だが、今日はやけに突っかかってきたのだ。何をしていても不機嫌そうに、ストレスを発散するように突っかかってくる。

 

 

 

 

 

 

「ねぇちょっとどいてよ!今テレビ見てるから!」

 

「通っただけだろうが…」

 

 

 

 

 

 

「ねぇトワの服色移りしてる!!」

 

「…悪かったって。今度新しいの買ってやるから」

 

 

 

 

 

 

「ねぇ窓のふちの埃が取れてない!」

 

「お前はどこの姑だ。」

 

 

 

 

 

 

「ねぇジンジャエール切れてるじゃん!切れる前に買っといてよ!」

 

「………はぁ」

 

 

 

 

 

 

「ねぇ———」

 

「あんなぁ!!」

 

「………っ」

 

流石に、我慢の限界である。ワガママにも程があるだろう。いつも多少の文句は出るが、今日は度が過ぎている。

に加えて、俺は半年間もの間奴隷のようにこいつの言うことを聞き続けていたのだ。

もう、無理だ。

 

「いい加減にしろよ!」

 

「な、なに…」

 

「うんざりなんだよ!!常闇が住み着いてから金に余裕がないから前より必死に働いてなんとか二人分の生活費賄ってんのに家事も炊事も全部俺がやって!!だってのに常闇は何もしないくせに不満だけは毎日のように吐いてきてうんざりなんだ!!今日なんて度が過ぎてるぞ!!」

 

「うっ……け、眷属なんだからトワの身の回りのことは全部して当然じゃん!そんなこと言ったって眷属は契約の破棄なんてできないんだからトワに尽くすしかないの!」

 

「そもそも俺は常闇の眷属になるなんて自分から言ったことは一度も無いぞ!!そっち側の勝手な契約でここまで振り回されるこっちの身にも少しはなれよ!!」

 

「そんなのこっちだって帰れないんだから仕方ないじゃん!戻り方がわかんないの!戻れるなら戻ってるよ!仕方……ないじゃん……っ、別に君があの時たまたまゲートを開いただけで君じゃなくたって!!………あっ」

 

「…………は?」

 

…何故だろう。この半年間、常闇には殆ど不満しか抱かなかったはずだ。あの時常闇が現れなければ、或いはあの時俺があんなこと思わず口にしなかったら、こんな面倒なことにはならなかったはずだと何度も考えた。

こんな役譲渡できるんだったらそこらのやつにいつでも譲ってやりたいと考えていたはずだ。

なのに、何故だろう。その「君じゃなくても」はやけに俺の中に渦巻いて、取り巻いて、俺の思考を停止させた。

 

「い、いや…今のは違…」

 

「………もういい」

 

頭を冷やすためとかでもない。ただこの鬱憤や不満以上に俺の心を支配してしまったよくわからないモヤモヤを抱えた状態で常闇と居られなかったから、俺は足を玄関の方へと向け歩き出す。

 

「ど、どこ行くの」

 

「どこでもいいだろ。…もう勝手にしてくれ」

 

俺は行くアテもないまま、モヤモヤを振り払うようにドアを開け放った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「あっ………」

 

出ていっちゃった…呼び止める暇もなかった…

ま、まー、眷属も少し時間経ったら戻ってくる…よね?

それにしても、眷属に酷いこと言っちゃった…後でちゃんと謝らないと……って、酷いことも言うでしょ!トワは悪魔だぞ!ちょっと眷属が怒っちゃったくらいでへこみすぎ!メンタルメンタル!

 

「…って、そういえば、眷属出て行っちゃったけど…あれって契約破棄扱いになってないよね…?契約破棄扱いだったら……け、眷属………って!心配なんかしないし!してないし!」

 

で、でもほんとに…だってあれは人間が長時間耐えられるものじゃ……ってだから!冷静になれ常闇トワ!契約のことなんて何も話してないんだから破棄扱いになんてならない!……はず……

 

あーーもーーなんでこんなに色々考えなきゃいけないの!?やめやめ!まあほんとにしんどかったら自分から戻ってくるだろうしそんな気にしないでおこ!今日は一人の時間を楽しむぞー!おー……

 

 

 

 

 

 

あれから時間は経って今は午後七時。

まだ眷属は帰ってこない。

 

「ほ、ほんとに何してるの眷属…連絡とか…来てない…こっちからした方が…う、うーん…」

 

も、もう少ししたら流石に帰ってくるよね…だってスマホは持ってるっぽいけど財布はここにあるからご飯とか食べれてないだろうし…ね。

 

さーいつも通り音楽でも聴こーっと…

 

 

 

 

 

 

十時を回った。

ぐううう、とお腹がなる。

 

「ねぇ眷属お腹すい…た……はぁ……」

 

トワは未だに人間界の食べ物なんて作れないし…眷属はいっつもその日の分の材料だけを買ってたから冷蔵庫には何もないし…勝手に眷属のお金使うなんてできるわけないし…

はぁ…お腹すいたなぁ

 

 

 

 

〜二十分後〜

 

 

「ねぇけんぞ……。」

 

体から自然とこの言葉が出てくる…こわ…

 

 

 

 

〜二十五分後〜

 

 

「ねぇけ………ああもう!なにこれ!」

 

トワ、普段からこんなに眷属に頼りきりだったっけ…ここまでだったっけ…?

それにしても、今眷属は何してるんだろ…

全然連絡も来てないし…流石にこっちからするかぁ…

 

 

 

『今どこにいるの』 22:52

 

 

返事はない

 

 

『早く帰ってきてよ』 22:58

 

 

というか、既読すらつかない

 

 

『ねぇ』 23:00

 

 

『トワにも悪いとこあったって思ってるよ!

 いつまでそうしてんの!』 23:16

 

 

やっぱり、返事はない

 

 

『既読もつけないんだ』 23:33

 

 

 

 

『別に眷属は君じゃないとダメってわけじゃないんだから!そこら辺歩けば眷属になってくれる人なんていくらでもいるし!もう今更謝ってきても知らないよ!いいの!』 0:12

 

 

返事は、ない

 

 

 

1:08

 

「………っ」

 

 

 

ガチャ

 

聴き慣れたドアの音は、どこか寂しげにトワの頭に響いた。

 

 

 

 

 

 

「———ねぇ君、トワの眷属になってよ!」

 

 

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

家を飛び出したはいいけど、行くアテはないし何も食べてないし、こんな深夜に人がいるわけもないし…

これからどうしよう…と考えていた時。

 

向こうの方から人が歩いてくるのが見えた。

 

「まじ!?ラッキー!」

 

二十歳前後くらいの金髪の青年だった。泊めてもらえるかわかんないけどまーなんとかなるっしょ!

ほんとは知らない人と話すのはそんなに好きじゃないけど…でもここであの人を捕まえなきゃもう今夜人と会うことなんてないだろうし、頑張れ常闇トワ!

 

「ねぇ君、トワの眷属になってよ!」

 

「……は?……何急に」

 

「いいからいいから!」

 

「いや、意味わかんねぇし。てかケンゾクってなんだよ」

 

「ん?う、うーん…眷属は眷属!とりあえずなってよ!」

 

「なってなんかメリットあんの?」

 

「うーん…トワが君の家についてくる?」

 

「ふーん…いいよ。」

 

「………っ」

 

その視線、笑み、青年の全てに、アイツからは感じたことがなかったおぞましさを感じ少し頭が危険信号を発した気がするのは、きっと気のせいだろう。

どっちにしろ彼の家に泊まるしかない。忘れてしまおう。

 

「で、眷属になるにはどうしたらいいんだ?なんかしないといけないのか?」

 

「え……あー………」

 

この人を眷属にするにはアイツとの契約を解除しないと……

 

「………あーいいよ!特に何も必要ないから!」

 

……なにしてるんだろ、トワ。

 

「…へぇ。んじゃ、ウチ行くか。」

 

 

 

 

 

「…ところで、その尻尾なに?コスプレ?」

 

「いや、トワ悪魔だから!」

 

「………はは、そういう感じね。おもしれぇなお前」

 

 

 

 

 

 

「……え、な、なにこれ」

 

新しい眷属の家に着いて、中に入ってすぐトワは絶句してしまった。

 

「き、汚すぎる……」

 

「ん?んなことねぇだろ」

 

開けっぱなしの段ボールの山、そこら中の散らばったままの服、お酒の缶や瓶、タバコの吸い殻、足場も見当たらない部屋だった。

…で、でも、お酒とかタバコは置いといても、脱ぎっぱなしの服とかはいっつも眷属が片付けてくれてたから綺麗になってたけど、トワも同じことしてたんだよね……

 

「ま、適当に座れよ」

 

「うん…あのさ」

 

「あ?」

 

「トワ朝から何も食べてなくってさ…なんかない?」

 

「んー、じゃあカップ麺でいいか」

 

「かっぷめん?」

 

「カップ麺だよカップ麺。なんだよ不満か?」

 

「あ、いや…」

 

初めて聞いたけど、「麺」だし多分普通の食べ物だよね?

 

「んじゃ適当に作ってくっから待っとけ」

 

「う、うん」

 

 

 

五分くらい待っていると、名前の通りのカップが置かれた。この中に麺が入ってるんだ…すごい

 

「んじゃ、三分待て」

 

「え、なんで?」

 

「…は?なんでってカップ麺だからだよ」

 

「???…わ、わかった」

 

 

 

三分くらい経ったかな?上のを剥がせばいいっぽい?

めくってみたら本当に麺と具が出てきた。

 

「わっ…すごい…」

 

「なにがだよ」

 

眷属は奥のベッドでくつろいでいる。

 

「いただきます」

 

魔界にも麺はあったけど、ここみたいに「啜る」という文化がなかったから必死に慣れたんだっけ。

 

「…おいしい」

 

カップに入ってるしできるまで十分もかかってないからちょっと疑ってたけど、おいしい…

 

 

 

けど、何か物足りない……

 

 

 

 

「ご馳走様!」

 

「おう。お前今日風呂入ったか?」

 

「え?うん」

 

「…そうか。んじゃ俺入ってくる」

 

「うん」

 

そう言って眷属はお風呂に向かった。

 

「…はああああ……疲れたなぁ」

 

今日は色々疲れてちゃった。ご飯食べたら眠くなってきちゃったな……

もうソファから動くのもダルいし、ここで寝ちゃお……

 

 

 

 

 

 

「………チッ。ま、明日でもいいか……」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「………ん、ふあああ」

 

人生で初めての経験だよ。野宿って。寒いし体痛いし最悪だなこれ。

しかしまぁ昔から少し気になっていた「段ボールは本当に温かいのか」ってのは結構マジだったと知れたのは少しの収穫かも知れない。代償がデカすぎる気もするが。

ていうか、貴重な二連休の二日目人生初の野宿ってなんか俺は悪いことしたのか。

 

いやぁだが、本当に不幸中の幸いはスマホに数百円入ってたことか。財布忘れたのは痛手すぎた。

あの数百円がなかったら俺はこの体の痛みと寒さの中で空腹までプラスして感じなければならなかった。ほんとキャッシュレス決済しか勝たん。

充電器も持ってなかったからあと数%しか充電が残ってなかったスマホくんは、決済を終えた瞬間寿命を迎えた。スマホくんには最大限の賞賛を贈りたい。

ちなみにカップ麺食った。基本金がないから自炊しかしないため、カップ麺なんて家に置きもしないから数年ぶりに食ったが、うまいなこれ。

 

常闇は……まぁ俺の財布で自分でどうにかしてるだろ。

そもそももう居ない可能性もなくはないわけだが。

 

 

正直、怒りはもう冷めた。流石に俺も大人だ。寝て起きて持続する怒りなんてそうそうない。

だが、家に帰る気にはならなかった。

あの言葉が未だに脳内を反芻している。

何が不満だったのか。あの気持ちは、この気持ちはなんなのか、哀しいのか、寂しいのか、怒りか。

どれもしっくりこない。どんな感情にもカテゴライズできない。

ずっと考えても何もわからなかった。

この感情が邪魔で飛び出したのだ。この感情が消えてもないのに帰れない。

 

ただ一つ、今の自分が随分女々しいことは理解できた。

 

 

 

 

 

 

何気なく街を歩いた。結構長い時間歩いたと思う。

ま、財布もないもんでな。カラオケやらゲーセンやらのストレス発散できそうな施設に入ることもできない。

って、そもそも財布あっても俺の安月給じゃ入れねーか!

 

………よし、俺は泣かない。

 

んまあそもそも昨日寝るまでずっと考えてもわからなかったのだ。今何気なく街を歩いたところでわからないのは明白なため、俺は感じたことをそのまま心で受け取れるように、街を眺めた。乱雑にポケットに冷えた手を突っ込んで。

 

 

この半年、随分早く時が過ぎたように思う。

常闇と出会った時はまぁ暑かったのに、いつの間にかこんなに肌寒くなっていた。

 

何度も見た景色だ。

幸せそうな家族も、孤独そうな男も、出会った時にはまだ葉がついていた、今はもうその葉の見る影もない街路樹も、少しひび割れたアスファルトも、何度も何度も見た。

 

一人でも、二人でも何度も見た。

 

 

……なんか、アホらしくなってきたな。

そもそもなーんで常闇のために俺がこんなにナイーブになんなきゃいけねぇんだっての。

一人でも二人でも、多分またいつも通りの日常に戻るさ。俺らしく気楽に行こう。

 

 

 

 

「……ただいまー」

 

結論から言って、常闇はいなくなっていた。

 

まず文句を言いたい。アイツ何鍵開けたまま出てってんだ。幸い空き巣には入られてなかったが真面目に俺の人生詰んでた可能性あるぞコノヤロー。

 

……なんてな。どうやら俺は覚悟していた事実に思ったよりショックを受けているらしい。なんでなんだろうなあ。

 

にしても、帰ってきて速攻スマホを充電器に挿したわけだが、スマホが復活したら一応連絡……はすべきなのか?どこ行ったかわからないし何しているかもわからない。一応スマホは持って行っているらしいし、一本くらいしといたほうが……?

………いや、止そう。アイツが自分の意思で出て行ったんだ。俺が何かする必要はない。それにアイツは悪魔なのだ。そこらで簡単に危険な目に遭ったりはしないだろう。

丁度スマホが使えるようになったが、俺は無視して溜まっている家事を終わらせることにした。色々整理もしないといけないし……な。

 

 

 

 

 

 

………正直最悪。

 

「ねぇ!いい加減にしてよ!」

 

「………あ?」

 

今は午後六時。日が暮れてきた時間。一日コイツと過ごしたけど、正直ヤバい。

一日中お酒飲んでたばこ吸って、その時後ろ見てたからわざとかはわかんないけどお酒の缶なんて一回トワにぶつけてきたし!

ご飯も昨日はくれたけど今日は「昨日食ったからいいだろ」って言って結局今日何も食べてないし!

てかコイツ自身も食べてるとこ見てないけど大丈夫なの…?

って言っても外で食べるお金なんてあるわけないしアイツの家に戻るなんてできるわけないからどうしようもない…

眷属になるって言ったのに全然言うことも聞いてくれないし!

コイツ眷属の意味わかってる!?一生忠誠を誓って付き従いますってことなんだけど!?……多分。

あんまりトワも詳しい意味は…い、いやわかってるけど!

そうじゃなくて、コイツはもうトワの眷属なのに全部何言っても「は?」とか「あ?」とかばっかり!

 

「…なにがだよ」

 

「一日中お酒とたばこばっかりだし、昨日はご飯食べさせてくれたけど結局今日一日何も食べてないし、それも含めてトワの言うこと全然聞いてくれないし!」

 

「全部俺の勝手だろうが。何度も言うが飯は昨日食べさせたんだからいいだろ。それに、なんで俺がお前の言うこと聞かなきゃいけねぇんだ?あ?」

 

「だって君はトワの眷属なんだから!」

 

「……はぁ?お前まだその設定引きずってたのか?馬鹿じゃねぇの。てか、思ってたがその尻尾いつ外すんだよ」

 

「こっちこそはぁ?なんですけど!設定じゃないし、外れるわけないじゃん悪魔の尻尾なんだかr……」

 

「おい!!」

 

「っっ!!」

 

「いい加減にしろはこっちのセリフだ。ほんと意味わかんねぇこといつまでもほざいてんじゃねぇぞ!…あんなぁ、俺がお前をここに泊めてやった理由、まさかわかんねぇとは言わせねぇぞ?」

 

「……は?な、なにそれ」

 

「……てめぇマジで……ああ、なら教えてやるよ」

 

そう言ってベッドから立ち上がりこちらに近づいてくる。すごく怖い顔で、ゆっくりと。

まただ、あの時、初めて出会ったときのあの笑みと同じ感覚。

頭が危険信号を発している。

あの時のアレは間違ってなかったんだ。

今度はその信号に従って、トワも後退る。

 

「おいおい、んな都合ないい話はねぇよなあ?」

 

「だ、だからなんのこと!」

 

「……だからいい加減に……しろ!!」

 

「きゃっ!」

 

こわい。こわいこわいこわいこわい

目の前に顔がある。酒臭くてたばこ臭くてすごくこわい顔。

押し倒された衝撃で、アイツから貰った、手放せずにいたスマホも飛ばされてしまった。

こわい、こわい

 

「は、顔だけはいいくせに変な行動ばっか取りやがって。」

 

「や、やめて…」

 

「ここまで来て止めるバカがどこにいんだよ。頼むから無駄な抵抗はよしてくれよ?」

 

段々と顔が近づいてくる。いやだ、いやだ、

 

 

 

 

 

 

——————たすけて、眷属

 

 

 

 

 

 

ピロン♪

 

 

 

 

 

 

その瞬間、飛ばされたスマホから軽快な通知音が部屋に響いた

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「……これ」

 

ソファにいつも通り乱雑に置いてあったイヤホン。元々俺の使っていたイヤホン。半年前勝手に取られて以降、イヤホンを買う金なんてなかった俺はまあまあ不便な生活を送っていた。流石に数ヶ月経ったら慣れたけどな。

ま、これでまたイヤホンが使える生活に戻るってこった。

さ、掃除するか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうすっかなぁこれ」

 

半年間で随分女もんの服も増えたもんだ。金ねぇ金ねぇ言っときながら、というか何度もアイツにも言ったはずなんだがいつの間にこんなに増えたのか。

残しておくには多すぎるし、このまま年月が経って誰かにこのタンスを見られたら彼女もいない俺はその誰かさんに女装癖を疑われかねない。

 

……が、まぁそんなに急ぐもんでもないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

常闇が俺の寝室を奪ってからというもの、俺の部屋の筈なのにあまり入れてもらえなくなった寝室も片付けるため入った。

朝も密かに思っていたが、随分模様が変わったもんだ。

…が、それよりもずっと気になるものがあった。

ベッドに畳まれないまま放置された毛布が少し膨らんでいたので中を見てみたら、いつか行ったテーマパークで常闇がどうしてもと言うので買ってやったぬいぐるみが現れた。

「ビビに似てる!」と目を輝かせてねだってきたので、ビビってのがなんだったのか知らなかったが断るに断りきれなかったぬいぐるみ。

そういや、「ビビはこっちじゃ元の姿に戻れないからねー」とかなんとか言ってた気がするが、結局何だったのか聞きそびれたな。

昨朝、床に落ちたのはこのぬいぐるみだったのか。

なら常闇は、布団の中でこれを抱いて寝てたってことになる。

暫く見なかったからどこに行ったのかと思っていたが……

 

 

……こんなに大事にしてくれてたんだな

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は、そっか。そういうことか。」

 

昨日の分の食器は当然昨日俺が出ていってしまったため終わっていない。

 

 

………と思っていた。

何故か、食器は全て洗い終わって水切りかごに綺麗に整えられていた。

昨日、俺がいない間にこんなことやってくれてたのか。今まで一回だってやってくれたことなんてなかったんだがな、とか変な微笑をこぼしながら乾いた食器を片付けていた。

その時に見つけた、常闇との思い出のかけら。

 

 

 

常闇用に買った箸と、なんでもないただの白い大きな皿。

 

 

 

今でも鮮明に憶えている。この白い皿は、ただの皿であってただの皿じゃない。

常闇が来てから初めて作った唐揚げを乗せた皿だ。

半年ちょっと前まで、俺は誰かのために飯を作るということはなかった。

自炊だって面倒だったし最初は勿論下手だったが、なんとか食費を抑えるためにずっと続けてきた。

俺は自分のために飯を作ってきた。

だから初めてだった。

初めてだったんだ。

 

 

 

 

俺の飯を俺以外の誰かに食べてもらうのも。

 

 

 

 

あんなに美味そうに自分の飯を誰かが食べてくれる喜びを知ったのも。

 

 

 

 

その中で、唐揚げは常闇が一番、何よりも美味しそうに食べてくれた俺の飯だったんだ。

 

 

 

 

……そうか。そうだったんだな。やっと気づいた。気づくのが遅すぎた。

失ってから初めて気づくとかよく言われるが、俺は失っても中々気付けずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

—————俺は、常闇と過ごす日々が、幸せだった

 

 

 

 

 

 

 

そもそも前提が間違っていたのだ。俺はこの半年間、ずっと「随分強引な脅しをかけられて、迷惑をかけられながら嫌々この悪魔と生活している」と思い込んでいた。

そうじゃない。俺はずっと幸せだったんだ。迷惑かけられんのも、連れ回されんのも、たまにイタズラされたりし返したり、そういうの全部、孤独じゃなかった。満たされていた。

 

生きてるだけの何もない俺を変えてくれた。

 

そりゃ、前提が違っていたら思考がそっちにしか偏らないのも無理はない。

まあ気付けば簡単な答えだった。

幸せだったんだから、「君じゃなくても」なんて言葉が胸に響いて消えないのは当然だろう。

やっぱり俺は少し女々しいらしい。

 

 

 

…答えはわかった。じゃあ、現実的にこれからどうするかだ。

常闇は出ていってしまった。その事実は変わらない。どこに行ったかなんて皆目見当もつかない。

 

だが、一つだけ希望は残されている。

俺が連絡用にとあげたスマホを、常闇は今も持っていることだ。

 

 

しかし、一つ問題が出てくる。

それは、さっき、片付けを始める前も考えていたこと。

常闇は、自ら出ていったのだ。

自分の意思で出ていったアイツを、俺は引き止める権利があるだろうか。

それは独善的だ。自分勝手だ。相手のことを何も考えていない。

「自分がこうしたいからこう!」なんて、子供じゃあるまいし。

 

 

 

 

……いや、そうか。確かにそんな自分勝手な行動は許されない。

なら、自分も相手も望む行為をすればいいのだ。

あるだろう。あっただろう。一つだけ確かなものが。

少しズルいかもしれないが、許されてくれ。

俺のこのワガママを、許してくれ。

 

そうして俺はスマホを持っていくのも忘れて財布だけ握りしめ家を飛び出した。

 

「やっべ連絡忘れてた焦りすぎだ俺!まぁあとでも間に合うか…頼む、間に合ってくれよ…!」

 

俺は用事を済ませ帰宅しスマホを開きただ一つだけの連絡をし、すぐさま作業に取り掛かった。

どうか、完全に居なくなっていませんようにと、願いながら。

 

 

 

 

 

 

トワたちは音の鳴った方に向いた。

あれは、あの眷属から貰ったスマホには当たり前だけど眷属の連絡先しか入ってない。

 

 

 

て、ことは。

 

 

 

「………っ、邪魔!!!」

 

「うぼあ!!!ぐああああ……!!!」

 

トワはこの男の股間を蹴り上げてその隙に抜け出した。ざまーみろ!

すぐにスマホに駆け寄って連絡を確認する。

 

 

 

 

 

『なあ常闇、お前の好きな唐揚げ、いっぱい作ってるから帰ってこいよ』

 

 

 

 

 

「………あ、あれ」

 

トワの目からは、いつの間にか涙が流れていた

でもすぐに拭う。今はそんなことしてる場合じゃない!

 

「………帰らなきゃ!」

 

一直線にドアに向かう。床でへばってる男になんか目もくれず。

 

 

「ま、待て…このアマ……!!」

 

震えた声で呼びかけられる。

 

「…一日泊めてくれたことも、昨日ご飯くれたことも感謝してるよ。」

 

トワはそちらに顔だけ向けてソイツを見る。

 

「でもキモすぎだから!じゃあねばーか!!」

 

メンタルが不安定だったしそもそも人間界に居すぎて忘れてたけど、よくよく考えたらトワ悪魔なんだから男とはいえ人間に負けるわけないじゃん!

本当に危なかった…あの連絡がなかったら…

 

とにかく、今は帰ることだけ考えなきゃ!道はわからないけどこのスマホもあるしトワならいける!

 

 

 

 

 

 

ガチャ、と、玄関のドアが開かれる音がすると同時に、狭いフローリングを走る音、そうしてすぐにリビングのドアが開かれる音がした。

 

「………」

 

「はぁ…はぁ…っはぁ………」

 

お互いなんて声をかければいいのかわからないのもあるし、お互いがお互いに驚いているのもあるだろう。

お互いが目を見開いて見つめあっている。

俺は、こんなに息が切れている常闇と、勢いよく開かれすぎたドアに。

常闇は多分、沢山の唐揚げを机まで運ぶため、エプロン姿でちょうどリビングのドアの前を通ろうとした俺に。

そして、お互いにどこか感慨深さもあったのだろう。会っていない時間は一日だけだったのに、もうずっと会っていなかったような感覚だ。

 

その見つめ合っていた数秒は、何分何時間にも感じられる数秒だった。

 

そうして、なんて声をかけたらいいのかわからない俺は一旦、その存在を確かめることにした。

 

「……常闇」

 

「……け、眷属……」

 

また、沈黙。

何か気の利いたことでも言おうかと考えたが、違うな。俺たちの関係は、そんな感じじゃない。いつも通りいけばいいさ。

 

「…お前、そんなに息切らして走って帰るほど俺の唐揚げ食べたかったの?」

 

「……はぁ!?そうじゃな…ってまぁそれもあるっちゃあるけど…じゃなくて!…あの、あのね眷属…その…」

 

「………」

 

「その…あれ、な、なに言おうとしてたんだっけ帰るのに夢中でわかんなくなっちゃった…だから…その…えっとぉ…」

 

その瞬間、ぐううう、と誰かさんのお腹が盛大になる音がした。

 

「……う、ううううぐあああ……」

 

あ、もう恥ずかしすぎて奇声発してるやつだ。両手で顔を隠し悶えている。

 

「…そういえば、今日、まだ何も食べてないんだった…」

 

まじかよ。って、何してたか知らんが結局財布の中身も変わってなかったしそりゃ当然っちゃ当然か。

 

「……じゃあほら、そこで突っ立ってたらせっかくの唐揚げ冷めちまうぞ。食べよう?」

 

「え?あ、うん…」

 

 

 

 

 

 

「………んんーーーー!一日の空腹に眷属の唐揚げが沁みるーーー!!」

 

「はは、そうかそうか。ゆっくり食べろよ。」

 

そうして常闇は俺の言葉なんて聞かずモリモリ食べて、俺も少しずつ食べていつの間にか数は少なくなっていた。

その間の沈黙は、悪いものではなかった。

そうしてひと段落ついたらしい常闇が言葉を発する。

 

「ん、忘れてた!言わなきゃいけないことがあるの!」

 

そんなの俺だって山積みだが、折角ならまずはこちらが聞こう。

 

「昨日のことも、今までも…ごめんね眷属…日が経つにつれて魔界にもう帰れないのかもって不安が積もって眷属に強く当たっちゃってたの…ごめんなさい…」

 

「…ああ。」

 

悪魔とはいえ、学生が急に全く知らない場所に追い出されて故郷に帰れるかもわからない不安はそれは大きいものだろう。

それは、考慮してやれなかった俺だって悪い。

 

「でも、まだ帰る方法は見つかってないんだろ?」

 

「うん…でも今はいいや。け、眷属と一緒に居られるし……」

 

あれ?何が起こったのこの子に。いや、起こったんだけどさ。起こったんだけど何これわかんない。

 

「あのね眷属!これまで散々迷惑かけてきて今更おこがましいけど…トワはやっぱり眷属じゃなきゃいや!それがわかったの…優しくてすぐ助けてくれていつも気にかけてくれる君じゃなきゃ———」

 

これ以上聞くと俺の耳が爆発しそうなので俺の声で常闇の発言を制止する。

 

「はいはい。どうせ契約しちまってんだし最後まで眷属として、このワガママ主人のお世話を全うさせていただきますよ。」

 

「あ、ありがとう!…あ、でも家事とかはトワがやるからね!トワは悪魔だから人間界の社会では働けないけど…眷属に頼ってばっかじゃダメだし!」

 

「…常闇……」

 

いやほんと何が起こったのこの子に。あ、起こったのか。でもやっぱ何これわかんない。

 

 

 

「だからね!あの…これからもよろしくね?眷属」

 

 

 

「ふっ、こちらこそよろしくな、トワ様。」

 

 

 

「………」

 

 

 

「………」

 

 

 

「……えっ今なんて」

 

 

 

「ん?どうした常闇」

 

 

 

「今絶対言ったでしょ!」

 

 

 

「だからなにがだよっと…最後の一個もーらい」

 

 

 

「あーーそれトワのーーー!!!」

 

 

 

……はっ、半年一緒に過ごして今日やっとわかった。

こりゃ、追い出されるわけだ。

こんなの悪魔のくせに天使みたいなもんじゃないか。

 

 

そうだな。この可愛さや優しさは「TMT(常闇まじ天使)」とでも名付けようか。

 

 

…理由は判明したが、まあしかし。

教えてやるのはまた今度でもいいだろう。

 

 

「眷属!ゲームしよ!」

 

 

「まーてっての。今片付けてっから。」

 

 

常闇も今は幸せそうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

途端に常闇が片付け中の俺の元へやってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「眷属!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?どうした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大好きだよ!」


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