【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
そう言って雑貨屋の店主は魔導書を渡す。
他人の鼻を豚鼻に変える魔法
とある日の夕方───。
勇者ヒンメルとその仲間達は酒場で食事を終えると各々の泊まっている部屋に戻るほんのちょっと前、魔法使いのフリーレンが「新しい魔法を覚えたよ」と呟きながら魔導書を閉じた。
木製のジョッキを握ったまま部屋に戻ろうとしていた勇者ヒンメルはくるりと身体を後ろに回して、フリーレンの傍に小走りで近付き、ワクワクとしながら「どんな魔法なんだい?」と彼女に問う。
「これは『他人の鼻を豚鼻に変える魔法』だよ」
その一言を聞いた僧侶のハイターと戦士のアイゼンが勇者ヒンメルに向かって駆け出す。その理由は至ってシンプルだ。常日頃から自分をイケメンと自意識過剰に褒め称える彼のイケメンフェイスをイケメンフェイス(笑)にするためだ。
「うわあぁぁぁっ!!?やめろ!そんな恐ろしい魔法を僕に使おうとするな!?っていうか、二人とも握力すごいな!!」
「まあまあ、暴れなくても良いじゃないですか」
「そうだぞ。それにお前もいつもいつもフリーレンの魔法を見るのは好きだと言っていたじゃないか。これくらい普通に耐えろ」
バタバタと暴れまわるヒンメル。
それをジーーーッと黙ったまま見つめるフリーレンは「これ、やっていいのかな?」なんて考える。けれど。彼女も覚えたばかりの魔法は試したい。スッと彼女は杖を三人に構える。
「『
フリーレンは魔法を唱えた。勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、勇者パーティーの男はみんな豚鼻になってしまった。
「お、おおぉっ、僕の凛々しくてカッコいい鼻が、鼻が豚鼻に!?」
「はっはっはっ。これも良いですね」
「ウム。まさにオークだな」
ヒンメルは自分の鼻を触りながら絶望しているが。ハイターとアイゼンは楽しそうに窓に映っている自分の顔を見て笑っている。フリーレンとしては、もっとすごいことになると思っていた。
本物の豚鼻になると期待していたけれど。ちょっと鼻を押し上げているだけで、そこまで豚鼻というわけでもない。正直に言ってしまえば期待はずれの魔法だったわけだ。
「ところで。この魔法の用途は?」
ハイターは鼻を擦りながら聞く。
「一応、嗅覚の強化っぽい魔法だけど。この魔導書の著者のメレブ曰く『この魔法は自分をイケメンや美女と宣うムカつくヤツを懲らしめるために使いましょう』ってためらしい」
「性根がネジ曲がってるな」
フリーレンの返答にハイターとアイゼンは呆れたように溜め息をこぼし、未だに「もう生きていけない」なんて呟きながら顔を隠して絶望しているヒンメルを御輿のように持ち上げ、そのまま宿屋に向かって歩き始める。
「まだ、二冊あるのに」
そうフリーレンはぽつりと言葉を溢す。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。イケメンや美女など顔面偏差値の高い人間に対して行使する魔法であり。イケメンへの恨み辛みを込めて放てば晴れやかな気持ちになる。一応、嗅覚を強化するという副次的効果はあるようだ。