【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夜───。
勇者ヒンメルとその仲間達は秘密の温泉を目指して、のんびりと面倒臭い寄り道をしていたその時だった。またしても唐突にフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。
「今回はどんな魔法なんだい?」
「『とても健康になる魔法』だよ」
「……まともだね」
「まともだ」
「まともですね」
そう言ってヒンメル達はフリーレンを見る。彼女も同じように「まともな魔法だよ、これは」と言いつつ、いきなりハイターに向かって『とても健康になる魔法』を使った。
「全く。貴女はいつもいきなりですね」
「じゃあ、お酒やめなよ」
「それは無理です」
「生臭坊主め」
ハイターは自分の身を案じてくれたフリーレンの忠告を即座に切り捨て。にこやかに笑いながら「お酒を止める時は私の死ぬときです」と言う。
どうやら彼は死ぬまでお酒をやめるつもりはないようだ。フリーレン達は僧侶としてそれでいいのかと問いたくなる気持ちを抑えて、だんだんと秘密の温泉に近づいてきたことを察する。
「あったね。温泉」
「うん。あるね」
「ですが、これは」
「どう見ても足湯だな」
みんなで並んで足湯に浸かる。
その時にフリーレンがタイツを脱ぐところを見ようかと0.2秒ほどヒンメルは葛藤し、自分の欲望で彼女を傷つけないために目を瞑った。なぜかハイターとアイゼンに「よく頑張った」と褒められ、ちょっとだけヒンメルは彼らにムカついた。
「中々に良い景色だ」
「そうですねえ」
「『
「いきなりだな。フリーレン」
「いや、よく見てよ。ハイターがまたお酒を飲もうとしてるんだ」
「……またか」
フリーレンの密告にアイゼンは呆れながら酒瓶を握り締めているハイターを見上げ、ずいっと彼に向かって右手を差し出す。どうやら彼の酒盛りに付き合ってあげるらしい。
それならばとヒンメルも「折角だし。僕ももらうよ」と言って未開封の酒瓶を掴んだ。その様子にフリーレンは「こいつら。また酒盛りを始めるのか」と深い溜め息を吐いた。
「フリーレンもどうです?」
「……一杯だけだよ、ハイター」
彼女はそう言ってハイターの差し出してきた小さなコップを受け取り、鮮やかな赤紫色のワインを注いでもらう。
「ところで。さっきの魔法の効果は?」
「ブドウ4房分のポリフェノール、トマト3個半分のリコピン、とても健康に良いエキスを体内に注入する魔法でね。血液はサラサラになるし、この魔法を使えばお酒を飲んでも肝臓にダメージは少なくなるはずだよ」
「結婚しましょう、フリーレン」
「ハイター、お前は僧侶だろうが!!!」
「はっはっはっ。愛さえあれば女神様も許してくれますよ、ヒンメル」
「……罪な女だ」
いきなり取っ組み合いを始めたヒンメルとハイターに困惑しながらフリーレンは「どれだけ長生きするつもりなんだろう?」と思った。
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くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。どんな病気も健康になってしまえば効かないという触れ込みだが、何年も持続しなければ効果を実感できないためエルフなど長寿の種族にしか使い道にない。