【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の朝────。
勇者ヒンメルとその仲間達は北側諸国の小さな町で少しばかり休息を取っていたその時だった。ぱたん、とメレブの魔導書を閉じたフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。
「……今日は安全なやつ?」
「えいっ」
すっとフリーレンはヒンメルに魔法を掛ける。とくに強くなったり、変なことになっている様子もなくヒンメルは首を傾げる。だが、そんな彼を見ていたアイゼンとハイターは「んふっ」と失笑する。
その笑いを堪える様子に「そんな、まさか」と思ったヒンメルはフリーレンの愛用する小さな手鏡を借りて、自分の顔を見た瞬間、今日も情けなくパタリと倒れてしまった。
「もおおわりだぁ…」
「ぷふ…っ。似合ってますよ、ヒン、くふっ」
「ぐっ、んぐっ、中々の面構えだぞ、くっ」
「『
そう言ってフンスと胸を張るフリーレンの隣で、しくしくと泣いているヒンメル。それを見て楽しそうに笑うハイターとアイゼンは本当に楽しそうに笑っているが、今さっき彼らもフリーレンに『顎がしゃくれる魔法』を掛けられている。
実にしゃくれた顎だ。
……とんがり?もはやランスみたいに突き出された顎は魔族の角のように凛々しく突き出ている。けれど。フリーレンはその顔にも飽きたのか。またメレブの魔導書を読み始める
「あっ。私の顎もしゃくれてる!?」
「俺のもしゃくれてるな」
「アイゼンは髭で隠れるじゃないかあ…」
なんと奇妙な集団だろう。
「もう解いてるよ、ヒンメル」
「えっ。あ、ほんとだ」
フリーレンの言葉にホッとする。しかし、すぐにまた顎がしゃくれて、ハイターに爆笑される。もっともハイターもしゃくれているので、あまり人を笑える立場ではない。
「…………えいっ」
「誰に掛けたんだ?」
「どこかの魔族だよ」
そう言ってフリーレンは魔導書を開く。
そんな彼女を見ながら「いったい、彼女は誰に向かって魔法を放ったのだろうか」とアイゼンは考えつつ、またヒンメルのしゃくれた顔を見て笑う。
くだらない魔法だけれど、みんな笑顔になれる。
フリーレンは「実に良い魔法だ」と呟き、更に突き出てきたヒンメルの顎にビックリし、椅子から転げ落ちてしまう。
「やっぱりいつものでいいや」
「も、戻ったあ!」
「あー、残念です」
「あの顔で良かっただろう」
「僕は良くないよ!?」
アイゼンはヒンメルの猛抗議に呆れ、ずいっとハイターを身代わりに差し出す。彼も笑っていたので同罪だったらしく、延々とヒンメルにイケメンのことで文句を言われ続けている。
「……うるさいなあ」
フリーレンは魔導書を閉じ、紅茶を飲む。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。イケメンや美女に対する嫌がらせに等しい魔法だが、魔法の詠唱を妨げる事も可能である。