【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の熱帯夜────。
勇者ヒンメルとその仲間達はジメジメとした蒸し暑さに苦しみながら寝転んでいたその時だった。ちょっとだけ暑さで頬を赤く染めたフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。
「それより氷をくだ―もごぉ……」
フリーレンはハイターの口の中に向かって『一口サイズの氷を作る魔法』を使う。続いてヒンメルとアイゼン、自分にも『一口サイズの氷を作る魔法』を使い、なんとか身体の熱を下げる。
「ふう。助かったよ、フリーレン」
「ありがとう、助かった」
「んぐっ。また、私だけ大量に」
「新しい魔法を覚えたよ」
そう言ってフリーレンは魔法の杖を構える。ヒンメル達は「この熱さで暴走を起こしていなければ大丈夫だろう」と楽観視しながら彼女の魔法をいつでも受け止めることが出切るように迎え撃つ。
「『
フワアァァッ…。
ちょっと涼しげなそよ風が吹いたような、本当にそよ風が吹いているのか。なんとも言えない曖昧で微妙な風魔法をヒンメル達は受けつつ、微妙そうに首を傾げるフリーレンを見つめる。
「みんな、どう?」
「全く効かん。その魔法はダメだな」
「アイゼン、もうちょっと言葉をですね」
「『
フリーレンは『そよ風を出す魔法』の段階を一つほど上げる。数十日前に戦った金髪の魔族のおかげでメレブの魔法には幾つか『発展系』というものが存在している事がわかった。
メレブの魔法のみに存在する『発展系』とは。
いわゆる魔法のバージョンアップであり。その気になれば「火を点す魔法」を「大火炎を作り出す魔法」へと強化する事が出来るのだ。
「……天才だったのかあ」
なんだか微妙な顔でフリーレンは呟く。
「ところで。フリーレン」
「どうしたの?ヒンメル」
「いつ、この風は強くなるのかな?」
「たぶん、ずっとこのままだよ」
彼女がそう言うとヒンメルは「そうか。このままかあ…」と水色の髪をそよ風に揺らし、かっこいいポーズを取ろうとしている。だが、両脇にアイゼンとハイターがいるため上手く動けない。
「おい。わざとだろ」
「何を言っているんですか?」
「暑さにやられたか」
二人はヒンメルを訝しげに見つめる。
どうやら本当に偶然で彼のかっこいいポーズを阻止していたらしい。そして、フリーレンからすれば三人が集まるだけでむさ苦しく感じているのは彼らには内緒だ。
「みんな、もう寝るよ」
いつの間にか布団に戻っていたフリーレンは魔法を消し、自然のそよ風に心地好さを感じながら、ゆっくりと眠りについた。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。涼しいような、涼しくないような、なんとも言えない微妙すぎるそよ風を作り出す魔法。しかし、そのそよ風自体に使い道はまったくない。