【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日のお昼過ぎ────。
勇者ヒンメルとその仲間達は逃げ出してしまった家畜を探すという依頼を受け、野を越えて山の中を歩いて三日ほど徘徊していた時だった。またしても唐突にフリーレンが「新しい魔法を覚えたよ」と魔導書を閉じながら呟いた。
「……今回の魔法はどんなものかな?」
ちょっとだけアイゼンとハイターを警戒しつつヒンメルは彼女に問い掛ける。この前のようなとてつもなく恐ろしい魔法を受けるのは怖いけれど。やっぱりフリーレンの覚えたという魔法は気になるのだ。
しかし、フリーレンは「これ、いまいち用途の分からない魔法なんだよ」と言う。その言葉にヒンメル達は首を傾げながら「今まで普通の用途で使われる魔法はあっただろうか?」と考える。
「で、どんな魔法だ?」
「『猛烈に甘いものが食べたくなる魔法』だよ」
「なんて恐ろしい魔法なんだ!?」
えっ、どこが?とフリーレンをはじめとしたパーティーメンバーは一斉にヒンメルを見つめる。どうやら本当に本気でフリーレンの覚えた魔法を怖がっているようだ。いったい、どこに恐怖を感じているのだろうか。
「今回は私に掛けてみてください」
「『
「プリンがッッ!!プリンが食べたいッッ!!」
「すごい取り乱しようだな」
ハイターは錯乱したようにプリンが食べたいと叫び始めてしまった。けれど。こんな山の中に甘いものがあるわけもなく、延々と「プリンプリンプリンプリン」と譫言のように呟き、ハイターはアンデットじみた動きでプリンを探している。
もはや一種の呪いである。
「離せェー!!私は、私はプリンが食べたいだけなんだぁ!!」
「フリーレン。アイツを楽にしてやってくれ」
「えっ」
そう言ってヒンメルは悲しげにハイターを見下ろす。僧侶として卓越した能力を有する彼は一心不乱にプリンを追い求める亡者となってしまった。もう彼を戻すには意識を確実に刈り取るしかない。
「……えいっ」
ごんっ!!と鈍い音が響いた。
フリーレンは面倒臭そうに自分の杖を振り下ろし、ハイターの頭を叩いて意識を刈り取ったのだ。……まあ、そんなことせずとも『猛烈に甘いものが食べたくなる魔法』は普通に解除できたけれど。
フリーレンが面倒になっただけだ。
ゆっくりと地面に倒れていたハイターを背負い、ヒンメルは悲しげに笑いながら「なんだよ、いつもと逆じゃないか」と呟いた。
「初級編でこれか」
フリーレンはメレブの魔導書を見ながら『くだらない魔法』のヘンテコでキテレツな効果にほんの少し、いや、かなり呆れた。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。甘いものを求めるあまり錯乱状態になってしまうという恐ろしい魔法?かもしれない。魔族に効果があるのかは不明だし、使い道はあまりない。