【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夕方────。
勇者ヒンメルとその仲間達は北側諸国の交易都市に建つ小さな宿屋で一休みしているその時だった。かわいいパジャマ姿のフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。
「もう寝るつもりだったけど。フリーレン、どんな魔法を覚えたんだい?」
「フフン。魔物を威嚇する魔法だよ、これさえあれば無駄に戦わなくて済むし。ヒンメル達も怪我しなくて安全になるよ」
「おお。それは素晴らしい魔法ですね」
「俺は嫌な予感がするんだが?」
アイゼン以外には高評価されフリーレンは自信満々に魔法の杖を構えて、そのままアイゼンに『健気に威嚇する魔法』を使った。
「どうです?アイゼン」
「キュゥン……ギャ!?キャンッ!!」
「ん?んんん?フリーレン、これは?」
「『
屈強な戦士のアイゼンは怯えきった小動物のような鳴き声を発する。普段の辛口で辛辣なことばかり言う彼もこうなってしまえば可愛いものだ。
そんなことをフリーレンは思っていると「僕にも掛けてくれ!」と言って、ヒンメルはキラキラと輝く眼差しを向けてきた。やっぱり彼の魔法を気に入るところはイマイチ分からない。
「キュウゥッ、ワン!」
「可笑しい。ヒンメルだとムカつきますね」
「えっ」
そう呟いたハイターの唐突な悪口に彼女は困惑しながら子犬のように吠える厳つい毛むくじゃらのオッサンとイケメンイケメンと自意識過剰に繰り返す、よく分からないヤツを見比べる。
「フリーレン、私にやったあの魔法をヒンメルにもやってあげましょう」
「ギャウン!?」
「さすがにそれ「あとで魔導書を買ってあげましょう」ごめんね、ヒンメル…」
「ギャアウゥン!?」
ヒンメルは「うそだろ!?」もしくは「そんなぁ!?」と言わんばかりに吠える。そんな彼の真後ろに回り込み、がっちりと身動きを封じるアイゼンに呆れつつ、ニコニコと笑っている何か怖いハイターに従う。
「『他人の鼻を豚鼻に変える魔法』」
「もっといってみましょう」
「……『眉毛が太くなる魔法』」
「まだまだいけますよ、フリーレン」
「『顎がしゃくれる魔法』」
「とても素晴らしいです。ぶふっ」
しくしくと泣いているヒンメルを見下ろして笑うハイターは魔王のように見える。そっとフリーレンはアイゼンの後ろに避難するついでに『健気に威嚇する魔法』を解除する。
「なんでこんなことするんだよおおぉぉっ!!」
「貴方が私のお酒を勝手に飲んだからです!!」
「くだらん理由だな」
フリーレンはアイゼンの言葉に頷いた。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。どんな魔物も怯ませるという触れ込みだが、大して効果はなく可愛さアピールにしか使えない。後日、勇者ヒンメルは瀕死の重傷を負った。