【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の朝────。
勇者ヒンメルとその仲間達は久々の休日を謳歌するように各々の行きたいところをみんなで楽しく歩き回っていたその時だった。フリーレンはメレブの魔導書ではなく勇者の童話(これも著者はメレブである)を読みながら「ヒンメル、これをやってみよう」と呟いた。
「勇者の必殺技ですか?」
「ヒンメルなら出来そうだし」
「あはは。買い被りすぎだよ、フリーレン」
「期待しているぞ。ヒンメル」
ちょっとだけ困ったように笑うヒンメルを引き連れてフリーレン達は街の外、人目に付きにくい雑木林の中へと進んでいく。
「アバンストラッシュだっけ?」
「うん。ヒンメルはできる?」
「流石に試してみないと分からないけど。とりあえずやれることはやってみるよ。ハイター、みんなの防御は任せる」
「えぇ、心得ました」
「がんばれよ、ヒンメル」
みんなの応援を背中に受けつつ、ヒンメルは勇者の剣を逆手に構えて腰を捻り、全身の闘気を集めるように精神を統一させる。
「アバンストラッシュっ!!!」
そうヒンメルは叫ぶ。
すると彼の握っていた勇者の剣は目映い光を放ち、三日月状の光波を打ち出す。かつての勇者の編み出した最強の必殺技「アバンストラッシュ」をヒンメルはお試し感覚とはいえ放ってしまった。
フリーレンは「おー、流石はヒンメルだ」と呟きながらパチパチと拍手をしている。ハイターとアイゼンは「なんで打てるのぉ…」とドン引きしているが、すぐに冷静さを取り戻す。
「…打てちゃった……」
「やっぱりヒンメルはすごいね」
「……そう、かな?うん、そうだね。僕はものすごい勇者なんだよ、フリーレン」
「それは知ってるよ」
そう言って彼女はヒンメルの言葉を肯定する。
いつだってヒンメルはすごいのだ。ダンジョンの探索の時も。魔王軍の軍団と戦っている時も。みんなを守るために戦うヒンメルはすごいのだ。
「ところで。ヒンメル」
「なにかな?ハイター」
「次はコレをやってみませんか?」
そう提案するハイターは心なしか子供のように見えるなとフリーレンは思いつつ、自分の斧をジーーーッと見つめているアイゼンに首を傾げる。いつもなら辛辣な言葉を浴びせているはずだ。
「どうしたのさ。アイゼン」
「フリーレン」
「なに?」
「俺の斧でギガブレイク出来ると思うか?」
どうやら童心に返っているのはヒンメルとハイターだけではなかったようだ。ものすごくワクワクしているアイゼンに「まあ、がんばれば出来るよ」と彼女はそう言いながら本を開いた。
「師匠、男の子ってよく分かんないや」
たとえ千年生きても分からないものはある。
〈アバンストラッシュ〉
かつての勇者の必殺技
ずっと遠い昔に今の魔王とは違う魔王と戦った勇者の編み出した最強の必殺剣である。その輝きは人々の希望となり、やがて世界に平和をもたらした。