【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法   作:SUN'S

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爽やかな吐息の魔法

とある日の午後────。

 

勇者ヒンメルと魔法使いのフリーレンは賑わう北側諸国の中規模な都市でのんびりと買い物(フリーレンの魔導書集め)をしていたその時だった。ある露店の前でヒンメルは立ち止まったのだ。

 

いつものごとく面白いものを見つけたのだろうか?とフリーレンは彼の隣に移動し、ずいっと身体を前に突き出して露店の品物を確認する。しかし、あるのは装飾品や装備品などばかり。

 

「この指輪を貰えるかな?」

 

「毎度あり。がんばれよ!」

 

「……うん。がんばるよ、ありがとう」

 

フリーレンは店主とヒンメルのやり取りに首を傾げつつ、彼の持っていたメレブの魔導書とは違う幾つもの民間魔法を綴った本を受け取る。

 

「フリーレン。貰ってくれるかい?」

 

「くれるならもらうよ?」

 

そう言ってフリーレンは片手を差し出す。

 

彼女は知ってか知らずか差し出した手は左だった。ほんの一瞬だけヒンメルも驚く。だが、彼はゆっくりと彼女の左手の薬指に指輪を嵌めたそんな時、またしても唐突にフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。

 

「どんな魔法を覚えたのかな?」

 

「『爽やかな吐息の魔法(    ケアブレス    )』」

 

ヒンメルはフリーレンの魔法を受け止める。

 

もはやヒンメルにとって彼女の魔法を避けたり逃げたりするのはタブーになっているのだ。どれだけ酷いことになろうと愛する人の魔法は絶対に避けず、彼は彼女のすべてを受け止めるつもりでいる。

 

「……えっと?」

 

「吐息の臭いを爽やかにする魔法だよ。ヒンメル、いつも私と話すときに気にしてたし。折角だから覚えてみたんだ、どう?」

 

「ミントの香りだね、これ」

 

ヒンメルは爽やかな息を吐く。たぶん、この世で最も爽やかな吐息を吐けるのは彼だけだろう。こんな魔法を覚えるのは魔導書集めに勤しんでいるフリーレンくらいだから。

 

「ヒンメル。フリーレン。ここに居たのか」

 

「アイゼン、どうしたんだい」

 

「ハイターがまた酒盛りを始めた。おそらく二、三日は滞在することになるが。フリーレン、お前の魔法でどうにかできるか?」

 

「私としては『とても健康になる魔法』を上回る勢いでお酒を飲んでいるハイターに興味があるんだけど。まあ、治せなくはないよ。ただし、あの魔法に使う薬はないけどね」

 

フリーレン達は酔いつぶれているというハイターの待つ酒場に向かって歩き出す。のんびりと過ごすのも楽しいけれど。こういうバカみたいで、どこか退屈しない日々がどうしようもなく楽しいのだ。

 

「ところで。フリーレンその指輪は?」

 

「これ?ヒンメルがくれたんだよ」

 

「………………」

 

「な、なんだよぉ…」

 

アイゼンは無言でヒンメルを見た。

 

その目にはハッキリと「お前にもそんな度胸があったんだな」と物語っている。だが、指輪を貰ったフリーレンが嬉しそうなので黙っているのだ。ドワーフの戦士アイゼンは出来る男である。

 

 

 




爽やかな吐息の魔法(    ケアブレス    )

くだらない魔法

自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。口臭を気にしちゃう若者や貴族にはうってつけの魔法であるが、メレブの魔法なので警戒されている。のちに、この魔法をフリーレンが改良して「ミントの波動を放つ魔法」になった。


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