【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の朝────。
勇者ヒンメルとその仲間達(ハイターとアイゼン)は「みじん切りにする魔法」の魔導書が欲しいと駄々を捏ねているフリーレンに困り果てていた。
そんな時でもアイゼンは変わらず「そもそも勇者PTで基本的に手料理を振る舞っているのはハイターだ。お前には必要ない魔法だろう」と辛辣な言葉をフリーレンにぶつける。
「料理もちゃんと手伝うよぉ…」
「二人とも魔導書は買うべきだ」
「ヒンメル。お前の企みは分かるぞ」
「そうですよ。ヒンメル、手料理なら私が「僕はッ……僕はフリーレンの手料理が食べたいんだッ!!」……ヒンメル、あなたはどうしてそう…」
そう悲痛そうに叫ぶヒンメルと、その後ろで魔導書を持ったままイヤイヤと首を横に振るフリーレンの面倒臭さにハイターは溜め息を吐く。
「ありがとう、みんな」
「ありがとう、二人とも」
そう言ってフリーレンは大事そうに魔導書を抱き締め、その彼女の隣でヒンメルも同じように感謝の言葉を言っている。
結局、ハイターもアイゼンもヒンメルの「どうしようもなく好きな人の手料理が食べたかった」という切実な願いを奪うことはできなかった。
「『
フリーレンが買ったばかりのリンゴに魔法を放ったその時だった。リンゴは粉々に切り裂かれ、3mmサイズのブロックになった。
「あれ?」
流石のフリーレンもその出来事に驚き、自分の持っている魔導書と現実に起こった効果の差異に首を傾げつつ、手のひらに積ったリンゴのブロックをヒンメルに差し出す。
「あーん」
「……はむっ」
ヒンメル、感涙である。
ハイターとアイゼンはそんな彼の「もう思い残す事はない」という一言に思わず振り返った。こんな食べ物の残骸で!?と言わんばかりに嬉し泣きするヒンメルを二人は凝視する。
二人はヒンメルがとても哀れに思えた。これだけ巨大すぎるうえに鬱陶しい愛情を向けているというのにフリーレンは全く気付いていない。
「あとで調整して、またヒンメルにあげるね」
「フリーレン、ありがとう」
「泣くな。ヒンメル」
「私がアップルパイを作りますよ」
そう言って二人はヒンメルを励ます。もっとも手料理が食べられるのだから慰める必要はないのだが、ヒンメルはもう「フリーレンの手料理が食べられる」としか考えていない。
「……みんな楽しそうだね」
ちょっとだけフリーレンは男の友情も見る分には楽しいかもしれないと考える。だが、すぐになんかむさ苦しいし、なんか汗臭いし、近寄るのはやめようとヒンメル達から少し離れた。
〈
民間魔法
木こりの切り方。剣士の切り方。料理人の切り方。床屋の切り方。色んな切ることを仕事とする人間に話を聞き、完璧な切り方を書き記した魔導書。効果範囲は約2メートル程度である。