【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日のお昼前────。
勇者ヒンメルとその仲間達は女神を信仰する教会にやって来ていた。なんでも新しく見つかったという聖なる道具をハイターに与え、魔王討伐のために役立ててほしいそうだ。
「ハイター。なにを貰ったの?」
「タロットカードです」
そうフリーレンの問いかけにハイターは革のベルトに下げていた小さな雑嚢を開いて銀製のタロットカードのひとつを彼女に差し出す。
「綺麗なデザインだ」
「武器になるのかそれは?」
「微かに魔力を感じる…」
「皆さん、一斉にしゃべらないでください」
ハイターはわらわらと集まってきたフリーレン達に困りつつ、そっとタロットカードを小さな雑嚢に仕舞うと「このタロットは味方を補助し、魔物を打ち倒す能力を秘めているものなんです」と言う。
三人は興味津々にタロットカードを見つめているけれど。そう簡単に魔物が現れるわけもないので使うところを見るのは冒険を再開して何日か経たないといけないようだ。
「ところで。アイゼン」
「なんだ」
「私のお酒はどこへ?」
「……俺は知らん」
そう言ってアイゼンは顔を逸らし、ヒンメルも顔を逸らしている。フリーレンだけは未だに銀のタロットカードを触りたくてハイターに近付き、どう説得しようかと考えている。
ちなみにハイターはぶちぎれてアイゼンを追い回し、北側諸国の地酒をどれだけ集めるのに苦労したのかをめちゃくちゃ話す。
「ああ、お待ちを。勇者さま」
「なにかな?」
「中央諸国より言伝てを賜っております」
そう言うと初老の神官はヒンメルに近づき、誰にも聞かれないように小声で話し始める。フリーレンはその様子をジーーーッと見つめながら「ヒンメルはあれくらい近づいても平気なんだ」と思った。
「お断りするよ。僕にはもういるから…」
ヒンメルはそう呟くと彼女を見て笑う。
その顔になんとなく理解した初老の神官は微笑ましいものを見るように穏やかな表情を浮かべながら「その時は私が取り仕切りましょう」と呟き、ゆっくりと教会に戻っていった。
「ヒンメル、なんの話だったの?」
「もしも魔王討伐を成功させたらお姫様とお見合いするかってお誘いを受けたんだ」
「ふーん。そうなんだ」
ヒンメルの言葉にフリーレンはちょっとだけ嫌な気持ちになる。どうして、そうなるのかは自分でも分かっておらず、ただヒンメルと知らない女の子が一緒にいると考えると。
彼女はほんとちょっとだけ悲しくなった。
「大丈夫だよ。フリーレン」
「……なにが?」
「さあ、なんだろうね」
「むう…最近のヒンメルは意地悪だ」
そんな言い合いをしながらヒンメルとフリーレンは未だに追い掛けっこをしているハイター達のところに「そろそろ出発するよ」と言って歩き出す。
〈銀のタロット〉
女神のアイテム
女神の加護を宿す特別なタロット。聖なる銀を板状に加工し、女神の魔法を封じ込めている。攻守共に使用することができる、とても高価な品物だ。