【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の旅路の途中────。
勇者ヒンメルとその仲間達は街から町へと進んでいる荷車に乗車し、のんびりと澄みきった青空を眺めつつ、日々の疲れを癒していたその時だった。フリーレンが魔導書を閉じながら「新しい魔法を覚えたよ」と呟く。
「今回は補助魔法だよ」
「女神様の魔法に準ずるものですか?」
「多少は似てるね」
「それで。どんな魔法かな?」
「『ちょっと攻撃力が上がる魔法』だよ」
フリーレンの補助魔法という言葉に興味を示すハイター。そんな彼の隣に座っていたヒンメルとアイゼンは期待に胸を膨らませている。どうやら三人ともフリーレンの「くだらない魔法」を見るのが楽しみで仕方ないようだ。
「じゃあ、使うね」
「いつでも良いよ」
「『
「ヒンメル、すまんな」
「えっ」
すっと杖を構えたフリーレンはアイゼンとヒンメルに向かって「ちょっと攻撃力が上がる魔法」を使った。しかし、アイゼンは咄嗟にヒンメルを盾代わりにして魔法を防いだ。
目映い光に包まれたヒンメルはフラフラとしながら立ち上がったかと思えば「ぬうおおぉあっ!!」なんて雄叫びを上げて、こちらを狙っていた魔物に剣を構えて突撃していく。
「……あれ?」
フリーレンは首を傾げ、魔導書を開く。
その様子を見ていたハイターとアイゼンは「フリーレンが珍しく魔法を失敗したのか」と考えるも直ぐに彼女は「ああ、なるほど」とひとりで納得し、ずいっと二人に魔導書を差し出す。
「この魔法は攻撃力を上げると一緒に中途半端に自信も上げちゃうみたい」
「つまり、今のヒンメルは」
「ただの強さ自慢のバカということか」
アイゼンの切れ味の良い言葉にフリーレンとハイターは頷いて、わちゃわちゃと魔物を襲っているヒンメルに視線を移す。
いつも自意識過剰なくらい自分をイケメンと言っているけど。まだ、あれは押さえていたんだな。そう三人はヒンメルの意外な一面に感心する。
「ところで。攻撃力が上がるとは言いましたけど。どれほど上がるのですか?」
「えっと1.2倍くらい?」
「実質2割だな」
「なんというか、微妙ですね」
フリーレンは辛辣な二人の言葉にしょんぼりとしながら未だに魔物を襲っている勇者というより狂戦士っぽくなったヒンメルを見つめる。
燦々と輝くヒンメルの笑顔はいつもと変わらない。けれど。やっていることは魔族……いや、あれは蛮族にしか見えない。
もはや、ただの殺戮である。
「やっぱりメレブの魔法は使えない」
そう言って彼女は魔導書を閉じる。
〈
くだらない魔法
自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。1.2倍ほど攻撃力が上がると書いてあるが、実質0.2倍上がっているだけで大して変わっていない。また、副作用として自分が強くなったと勘違いするようになる。