【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法   作:SUN'S

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縦回転させる魔法

とある日の夕暮れ────。

 

勇者ヒンメルとその仲間達は荷車に相乗りさせてもらい、干し草を枕代わりにのんびりと日向ぼっこしているその時だった。ぱたん、とメレブの魔導書を閉じながらフリーレンは「新しい魔法を覚えたよ」と呟いた。

 

「『縦回転させる魔法(   アサダ   )』」

 

誰かに問われるよりも素早くフリーレンはアイゼンに魔法を使った。すると彼は唐突に身体を後ろ向きに縦回転させ、カッコいい着地を決める。

 

それを見たヒンメルは「僕にもやってくれ!」とフリーレンに物凄く近付く。いつもなら鼻血を出すか気絶する距離なのに、やっぱりヒンメルもカッコいいものが大好きな男の子である。

 

「あはははははっ!!」

 

グルグルグルグルッ……。

 

ヒンメルは高速で後ろ向きに回転しながら空中へと上がっていく。そんなキテレツで奇っ怪な現象にフリーレン達は真顔で彼を見上げる。

 

「フリーレン。あれ、いつ降りてくるんです?」

 

「知らないよ。私はまだ飛べないし」

 

「この前『垂直に飛翔する魔法(   トベルーラ   )』を覚えたと言っていたが。それじゃあ、ダメなのか」

 

「あの魔法は『飛翔する』んだよ。真っ直ぐ真上にしか飛び上がれず、魔族のように自由に飛び回るなんてことはまだ不可能なのさ」

 

そう言ってフリーレンは地面に絵を描くように魔法の原理を説明する。単純な跳躍のパワーアップと一時的な空中停止を肉体に付与する。

 

「ところで。アイゼン」

 

「なんだ」

 

「私達も飛んでみませんか?」

 

「それもそうだな。いくか」

 

「えぇ。私の負担が……」

 

フリーレンはふたりに文句を言いながら『縦回転させる魔法』を使った。アイゼンとハイターも高速で回転しながら浮かび上がり、とっても楽しそうにはしゃぎまくっている。

 

その様子を彼女は冷ややかに見上げる。

 

ときどき。ほんとにときどき。勇者一行の男達はアホになったりするのでフリーレンは「こいつら、本当に魔王討伐するつもりなの?」と訝しげに見ることがあったりなかったり……。

 

「あはははっ!」

 

「うふふふっ!」

 

「うっ、昨日の深酒が…」

 

とんでもなくヤバい言葉が聞こえたフリーレンは空中で回転しているヒンメル達を残し、そこから1000メートルほど離れた。

 

なんだか騒いでいるけれど。フリーレンは静かに耳を押さえて、木の幹に身体を向けたまま一歩も動こうとしない。だって、空を飛ぶあんなにも汚いのは見たくないし。

 

「フリーレン!やばい、ほんとにさあっ!?」

 

そうヒンメルは必死に叫ぶ。

 

しかし、フリーレンは何も見ていない。

 

それから十数分後、ヒンメル達は憔悴していた。

 

 

 




縦回転させる魔法(   アサダ   )

くだらない魔法

自称・大魔法使いのメレブの作った魔法。後ろ向きにジャンプし、回転させるだけ。着地するときにかっこいいポーズを取る。ヒンメル達はなぜか(・・・)高速で回転しながら空中に浮かんだ。


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