【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の朝────。
勇者ヒンメルは絶体絶命の危機に瀕していた。
魔王討伐を祝う盛大なお祭りを終えて、一月ほど経過した頃の出来事だ。ヒンメルは最愛のお嫁さんであるフリーレンのために研究や蔵書できる大きな家を魔王討伐の報酬として国王より譲り受け、それはもう幸せに暮らしているのだが……。
「…すぅ…すう……」
「(毎朝、フリーレンの寝顔を見れるとか僕は天国にいるんだろうか?いや彼女と結婚できたことが僕の、僕だけの天国だったんだ)」
この間、僅か0.2秒である。
自分のお嫁さんとはいえ最強に可愛いエルフのフリーレンの寝巻き姿を直視できず、ひたすらヒンメルはアホのミーネと言い争っているときのフリーレンを思い出し、なんとか冷静さを保つ。
しかし、そんなフリーレンもかわいい。
そう考えてにやけてしまう。勇者ヒンメルとしては完璧な外面をしてこれたのにヒンメルは結婚したらお嫁さん大好き過ぎる愛妻家になってしまった。
「……とりあえず、二度寝しよう」
ヒンメルはゆっくりと寝転んだ。いつでも起きることはできるし。こういう夫の特権はしっかりと堪能しておくべきだと彼は自答しながら可憐な寝顔をさらすフリーレンを見つめ、気絶した。
……数時間ほど経って、すっかり日の傾いてしまった時刻に起きたフリーレンはぼんやりとしながら真横で幸せそうに眠っているヒンメルを見下ろす。
「そういえば結婚したんだったっけ」
ごしごしと目尻を擦り、ベッドを抜け出る。キッチンの溜め桶に「水を出す魔法」で水を満たし、「お弁当を温める魔法」で水の温度を調整し、フリーレンは丁寧に顔を濯ぐ。
その様子を見たヒンメルは幸せそうにまた気絶した。こいつは勇者の役目を終える代わりに、フリーレンへの失神耐性を失ったのだろう。
「ヒンメル。起きて、もうお昼だよ」
「……ここは、やっぱり天国だったのか?」
「ヒンメル、なに言ってるの?それよりさ、ちょっと遅いけど。前にヒンメルが言ってた料理屋で朝御飯を食べに行こうよ」
「よし、行こう」
「パジャマで行くの?」
フリーレンの一言にヒンメルは「僕はリビングで着替えるから君はここで着替えて」なんて言うと即座に部屋を出ていった。
「うん。いつものヒンメルだ」
そう言うとフリーレンは寝巻きからいつもの服に着替える。こういうときに役立つのは「お手軽に早着替えする魔法」だ。
ほぼ自動的に最速で衣服を着替えるし、ちゃんと脱ぎ捨てた衣服を畳んだり洗濯物を入れる籠に放り込んでくれる優れた民間魔法だ。
「おまたせ、ヒンメル」
「こっちもお待たせ、フリーレン」
そう言ってふたりは家を出る。
〈お手軽に早着替えする魔法〉
民間魔法
小さな子供の着替えを早く済ませたい主婦や奥さまの魔法使いの考えた魔法である。本来は子供に掛けるものだがフリーレンは自分に使っている。