【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夕暮れ────。
大魔法使いのメレブは同じく大魔法使いのゼーリエに付きまとわれていた。その理由は〈『無感情』こそ正常である魔族に『感情』を与えた〉からだ。それは神話の時代を生きてきた彼女ですら無理だと切り捨て成し得なかった。
いや、そもそも不可能と考えていた魔法を百年も生きていない人間の男が魔族と出会って僅か五日程度の期間で作り上げたのだ。
それは正しく偉業である。
だが、当のメレブはまったく自分のすごさに気付いていない。いや、それどころかヘンテコでくだらない魔法を。ふと天啓のごとく唐突に閃いたかと思えば即座に使える。
一般的に魔法といえば〈最適の術式を考えて、理論に基づいて構築する〉というのが常識である。しかし、メレブにとって魔法とは〈ふと浮かんだイメージをそのまま現実に抽出する〉というものだ。
ゼーリエとメレブの使用する魔法は根本的に全てが違っているのだ。それゆえにゼーリエは構築する事は出来ないと諦めていた『感情を与える魔法』をメレブは簡単に作ることが出来る。
「メレブ、お前は天才だよ」
「えぇ、こいつが?」
「すごいですよ、メレブさん!!」
ゼーリエの言葉にムラサキは訝しげにメレブを見つめ、ヨシヒコはキラキラと尊敬の眼差しを向ける。しかし、メレブ本人としてはチマチマと魔導書を読むムラサキ達のほうが不思議だったのだが、ようやく原因が分かって安心している。
「私の弟子になれ。メレブ」
「えっ。いやです」
「な、なぜだ!?」
「だってぇ…修行とかめんどくさいし。そもそも私って魔法の修行とかしたことないし。それに今は悪霊の鍵を探してるしぃ」
「しーしーうるせえよ。キノコ」
どこぞの仏のように面倒臭さをむき出しにしてゼーリエの申し出を断ろうとするメレブにムラサキは罵倒を浴びせる。ソリテールはのんびりと魔法の仕舞っていたケーキを取り出し、ひとりだけパクパクしている。
「ま、魔法の高みにいけるぞ!?」
「いや、興味ないです」
「う、うむ、うむむ」
どうにかしてメレブの特異な才能を間近で観察したいゼーリエは何か妙案を思い付いたように森の奥に駆け出し、すぐに戻ってきた。
「この本に魔法の原理を書け!」
「……まあ、それなら」
「ちゃんと全部だぞ!いいな!」
「はいはい」
メレブはゼーリエの渡してきたペンと白紙の魔導書を受けとるとローブの中に仕舞う。彼は意外と律儀なので魔導書は書くだろう。
だが、メレブのそばにはソリテールがいるのでゼーリエのところにメレブの魔導書が届くのは難しいかもしれない。
〈ソリテール〉
いっぱい食べる女神様
大魔法使いのメレブとゼーリエの話し合いを聞きながら密かに買っておいたケーキをひとりで食べていた。あとでムラサキにもあげた。
〈ゼーリエ〉
メレブのファン2号
大魔法使いのメレブの特異な才能を近くで観察したかったけれど。勇者ヨシヒコ一行とソリテールの冒険を邪魔するのもあれなので「お前の魔法を魔導書にしろ!」とペンと白紙の魔導書を渡した。