【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の午前中───。
かつて大魔法使いのメレブと旅をした女神様としか思えない大魔族のソリテールは元七崩賢の大魔族であるアウラと一対一で向かい合っていた。
べつに殺し合いをするわけではない。
ただの世間話ついでにアウラを狙うであろう殲滅派の魔族を退ける、あるいは都市に侵入する事を不可能とする魔法を教えているのだ。
「本当に効くのよね?」
そう言ってアウラはソリテールに手渡された魔導書を訝しげに見つめている。それはソリテールがメレブの魔導書を一晩で書き写し、千年も生きていないアウラのために魔力を流すだけで発動するように細工を施した特別製の魔導書なのだ。
しかし、魔族のアウラにとって魔法は永い年月を掛けて覚えるものなので、そういうお節介は有り難いけれど、ちょっとだけ困る。
「私も殲滅派だったんだけどなあ」
アウラはそう呟いて、自分の左手を見る。
人間と結婚するなんて十年前まで考えたことも想像したこともなかった。でも、彼や子供といるときは胸の奥がポカポカと温まり、とても満たされる。
「アウラさんって意外とロマンチストなの?」
「ばっ、普通のことよ!」
「ふふふっ。良かったわ、魔法を掛けて」
自分より強大な魔力を持つソリテールに噛みつく。もしもソリテール以外の大魔族にそんなことをすれば一瞬で消し炭になるだろう。
そうならないのは単にメレブのおかげだ。
ソリテールはメレブと出会ったおかげで〈人間の感情〉を知り、アウラもまた〈人間を支配する〉のではなく〈人間との愛を得た〉のだ。
「ところで。フリーレンのやつは?」
「彼女なら魔導書を買いに行ったわ」
「えぇ……またなの?」
「えぇ。またよ」
アウラの暮らす街にやって来たフリーレンはグリーゼルとミーネを引き連れて都市中にある書店を巡り歩き、いろんな魔導書を買い漁っている。
とはいえ。その度にフェルンに「フリーレン様。返品してきなさい」と怒られ、グリーゼルにも「ママ。買いすぎはダメだよ」と叱られる。
それでいいのか、千才児。
「そういえばウチのリーニエがあの戦士のこと気になってるみたいなんだけど。まさかウチの子に手ぇ出してないわよね?」
「さあ。どうなのかしら?」
「ダメよ!まだ百五十歳もいってないわ!」
「最近の子供は進んでるわー」
もはや井戸端会議である。
そもそもふたりは殲滅派の魔族に備える話をしていたはずなのだが。ふと気がつけばウチのリーニエにはまだ早いだとかもうフェルンがいるなんてことを言い争っている。
ふたりとも歴史に残るほどすごい人物?なのにやっていることは、ただの子供の恋愛に関して相談し合っているママ友にしか見えない。
〈ソリテール〉
我らが母性溢れる慈愛の女神様
アウラを守るために魔法を準備してあげたら、なぜかシュタルクの花嫁に相応しいのはどっちかで言い争うことになってしまった。
〈アウラ〉
もはやママみしかない大魔族
ウチのリーニエとか言っちゃうくらいに可愛がっているし、他の首切り役人たちも子供のように可愛がっている。そのせいで都市の住民に子連れの魔族だと思われている。