【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
拾われるじゃない
とある日の夕暮れ───。
魔王軍の最高戦力の七崩賢の大魔族。そのひとりの断頭台のアウラは勇者ヒンメル達との戦いに敗れ、命からがらなんとか逃げ延びた。
しかし、四百年近く費やして集めた死者の軍勢は全て僧侶ハイターによって討ち滅ぼされてしまい、まともな手駒はひとりもいない。
「はあ。どうしようかしら?」
たとえ七崩賢の大魔族であろうとアウラは「服従させる魔法」という一芸を極めただけで肉弾戦や魔法による絶大な攻撃力を持っているわけではない。
フリーレンの多彩な魔法に翻弄され、ハイターの強化によって延々と強くなるアイゼン、もはや人間なのかも怪しいヒンメル。そんな奴らとやり合えるヤツなんて魔族でもマハトかソリテール、あと他の七崩賢の大魔族くらいだろう。
そんなことを考えているときだ。
ガサガサと茂みを掻き分けてきた存在にアウラはみっともなく「ごめんなさい!もう人間を襲いません!許してください!」と命乞いをする。
「…………?」
しかし、なぜか襲われないことに困惑しながらアウラがゆっくりと両目を開けると小さな魔族の女の子がリンゴを噛んだまま茂みに生えていた。
「だれ?」
アウラはそう言って首を傾げる。
こんなところに魔族の子供がいるのも珍しい。だが、それよりも彼女の目の前にいる魔族の女の子はまったくと言っていいほど平然としている。アウラと彼女の魔力量の差は歴然だ。
「私はリーニエ。よろしく」
「私は七崩賢のアウラよ!」
「そう。よろしくアウラ」
「ちょっと『様』をつけなさい!」
アウラが名乗ってようやく理解したリーニエはぺこりと頭を下げる。その仕草にアウラは困惑しながら応えると「それじゃ」と言って離れようとするはリーニエにしがみついた。
「も、もうちょっといなさい!」
「……」
今度はリーニエが首を傾げる。
自分より魔力の多い彼女は何に怯えているのだろう?とリーニエは周囲を見渡すように首を左右に動かしていき、明らかにリーニエより数千倍は強いであろうドワーフの戦士を見つけた。
「アウラ様。こっちに来て」
「えっ。ちょ、流石に不敬よ!?」
リーニエはひょいっとアウラを持ち上げると全力で走り出す。目指す場所はいつだって師匠の待っている山小屋の近くだ。
「師匠、拾った」
「返してこい」
あまりの速さに気を失っているアウラを掲げるリーニエに屈強な筋肉をさらすエルフの僧侶は捨て犬を拾ってきた子供を諭すように呟いた。
「ちゃんとお世話する」
リーニエもアウラを犬扱いである。
魔力至上主義の魔族とは思えない言動のすべてはエルフの僧侶のせいなのだが。とくにリーニエも気にしていないので問題ない。
〈アウラ〉
七崩賢の大魔族
勇者ヒンメルとその仲間達に無敵の軍勢をぶつけたらあっさりと討ち滅ぼされて必死に逃げた先にいた魔族の子供に拾われた。
〈リーニエ〉
リンゴ好きの魔族
なんか偉そうな魔族を拾ったとしか思っていない。魔力に差はあるけど。普通に自分のほうが強いのは分かっているので平然としている。