【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夕暮れ────。
七崩賢の大魔族にして断頭台の異名を持つアウラは食後のデザートを賭けたリーニエとのじゃんけんに負け、クラフトの買ってきたプリンをすべて奪われてしまっていた。
「プリン、食べたかった…!」
「私は勝利者」
そう言ってプリンを掲げるリーニエを恨めしそうに睨み。すぐにアウラは「ふう、まったく相手は子供なのよ?落ち着きなさい、私は大人なんだから」と自分に言い聞かせている。
「クラフト。貴方の分を献上しなさい」
「すまない。もう食べてしまった」
「……ぐすんっ…」
アウラの目の前に空っぽになったお皿が差し出され、とうとう彼女は泣いてしまった。基本的に魔族は人間もしくは甘いものしか食べない。
すべてはアウラの生まれる遥か前に魔王様の命令を受けたソリテールの仕業ということは魔族全体に判明しているし。七崩賢の大魔族といえど彼女の甘いものを欲しがる呪縛に抗うことは出来ない。
「アウラ。これあげる」
「ぐす、ありがとう。でも『様』はつけなさい」
スッと差し出されたエルフ饅頭を受け取りながらアウラはまたリーニエに注意する。しかし、リーニエは弱いやつに従うつもりはない。
「ところで。アウラ」
「なによ。クラフト」
「お前も人里に行くつもりはないか?」
「師匠。それは無理だと思う」
クラフトの提案に対してアウラが答える前にリーニエはズバッと否定する。アウラもお饅頭を食べながら「なんでよ!?」と反論する。
「だって。アウラ様は変装できない」
「うむ。言われてみれば確かにそうだ」
確かにアウラではリーニエの持っている衣服を着ることは不可能だろう。身長もそうだが年齢的に考えてアウラが子供服を着るとは思えない。
「よし。俺の胴着を貸してやろう」
「えっ」
「ドンマイ。アウラ様」
アウラは優しくリーニエにポンと背中を叩かれて、エルフのおっさん臭い胴着を手渡される。このシェアハウスを始めて数週間ほど経過しているけれど。
クラフトとリーニエの修行後の汗臭さに毎日悩まされてる。そのため胴着を借りるということは汗臭くなるということだ。
「そ、そういえばメレブの魔法に変身する魔法があったわね。そっちを使いましょう。えぇ、きっとそれがいいわ。ね?ね?」
「俺は魔法など知らん」
「私も自分の服はある」
「なん、なんなのよ、もおぉおおお!!」
アウラは半泣きになりながら山小屋に作ってもらった即席のカーテンを閉めると汗臭い胴着に着替えたが、あまり似合っていない。
「アウラ様。なんか変だね」
「うるさいわね!ほっときなさいよ!」
「それでは人里に行こうか」
「おー」
「絶対に新しい服を買わせてやる!」
そう言ってアウラはクラフトを睨み付ける。
〈アウラ〉
お洒落好きな大魔族
はじめての人里(北側諸国の都市)に普通に出入りしたけど。とくに警戒されることもなくリーニエと同じように「修行がんばれ」と言われて、いっぱいお土産をもらえて嬉しかった。
〈リーニエ〉
果実屋でリンゴを貰う魔族
エルフの僧侶のもとで修行する珍しい魔族として有名だったりする。彼女の修行を知っているものは「今日もがんばってるね」と応援している。
〈クラフト〉
ほとんど人里の重鎮なエルフ
いつも魔物や魔族の襲撃を防ぐ対価として物々交換をしたり。たまに僧侶のお仕事をするためにやって来る物凄いエルフのおっさんである。