【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日のお昼過ぎ────。
七崩賢の大魔族にして断頭台の異名を持つアウラはようやくソリテールとまともに話せるようになったけれど。リーニエもしくはクラフトがいないと泣き出すか、真っ先に逃げ出すだろう。
「お待たせ致しました。アウラ様」
「リュグナーと……あなたは?」
「ドラートと申します」
いきなり現れた魔族の美丈夫リュグナーにアウラは驚きと困惑を抱きつつ、まったく見たことのない魔族の少年に首を傾げる。
「ドラートは中々に優れた魔法を操る魔族。必ずやアウラ様のお役に立つと愚考し、こうしてこの場に連れて参りました」
「確かに魔力量も申し分無いわね」
アウラはリュグナーには劣るものの、それなりの魔力を保有するドラートを見下ろしながら勇者ヒンメル達を倒す作戦を思案する。
しかし、あのハイターという化け物僧侶のいるせいで死者の軍勢は使えず、アウラ自身も生身で戦える実力は皆無に等しい。
やはり勇者ヒンメルの死後に動き始めるほうが得策と言えるか。たった百年程度の潜伏だ。それまでリュグナーとドラートには人目を避けるように指示しておけば問題はない。
「リュグナー。暫く潜伏していなさい」
「分かりました。行くぞ、ドラート」
「はい。……ところで。その魔族は?」
ドラートの問い掛けにアウラは後ろに振り返ると無表情のリーニエがいた。その隣にはメレブの使っていたという魔法の杖を構えるソリテール、そしてムキムキの筋肉をさらけ出しにした臨戦態勢のクラフトが彼女の後ろにいた。
「アウラさん。あとでお話ししましょうね」
「私のお母さんは渡さない」
「全くどの魔族も筋肉が足りていないな!」
リーニエに捕まったアウラはともかく。
彼女の後ろでは野太い悲鳴が何度も木霊し、ソリテールの恐ろしい魔法とクラフトの格闘技に悶絶する声が響き渡る度、アウラは顔を青くする。
「お母さんは私といてね」
「そ、そそそうね」
アウラはギュウウウゥッとリーニエを抱き締めながらほとんど真後ろで起こっているであろう惨劇を見ないように山小屋に入った。
「お母さん。あったかい……」
「ひいぃぃんっ」
自分の過ちに気づくのが遅れてしまったとアウラは嘆きつつ、自分の腕の中で儚げに微笑むリーニエだけは守るつもりで久々に天秤を構える。
「お待たせ。アウラさん」
「あっ」
ぺちんっ。
あっさりとソリテールに天秤を叩き落とされたアウラは絶望し、そっとリーニエを抱き締めるとソリテールに向かって駆け出す。
「ハナブー」
「いやあぁああぁあっ!!」
しかし、あっけなく返り討ちにされた。
アウラは自分の顔を隠しながら蹲ってしまい。リーニエは首を傾げ、ボッコボコにされたうえに変顔になった魔族のふたりを担ぐクラフトは「ソリテール。お前も惨いことをする」と呟いた。
〈アウラ〉
ハナブーだけはいやな大魔族
自分の部下が迎えに来てくれたのは嬉しかったけど。あっさりとエルフの筋肉とメレブの魔法に負けてしまったためショックを受ける。今後は共生派として生きることを宣言した。
〈ソリテール〉
慈悲の御心で生殺しにする女神様です
なんだか悪巧みをしていたアウラ達を懲らしめて、しっかりと共生派にしてあげた。もう二度と人間を食べることはないので人間は平和になった。
〈クラフト〉
マッスルの伝道師なエルフ
ただの筋肉で魔法を弾き返し、ただの筋肉で魔族のふたりを改心させた。いずれふたりを素敵なマッスルな魔族にするつもりでいるよ。