【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夕暮れ────。
七崩賢の大魔族にして断頭台の異名を持つアウラはリーニエとクラフトと一緒に引っ越しの準備をしていた。山小屋はソリテールが暮らすということなので壊したりする必要はない。
「アウラ様。これはなに?」
「それは。えと、なにかしらね?」
「それは女神様の碑石だ」
「これがウワサの」
クラフトの言葉にアウラは興味を示す。
まあ、それもそのはずだ。
女神といえば人類の間ではよくソリテールの前世や本来の姿なんて言われまくっているうえにソリテール自身もかなり古い時代を生きてきた大魔族だ。
そう思われるのも仕方ない。
「そういえば僧侶だったわね」
そう言ってアウラは今日も上半身をむき出しにして荷物を運んでいるクラフトを見つめる。もうちょっと渋ければ好みに入るのだが「さすがにあそこまで筋肉の密度がすごいのは無理ね」と諦める。
「リーニエ。貴女はこれを運んで」
「わかった」
リーニエはアウラに手渡されたお皿や料理器具の入った箱を持ち上げる。もっともアウラは筋力が足りないので布団を運ぶ程度で息切れしている。
がんばれ、アウラさま。
「アウラ。これを頼めるか」
「えぇ。わかったわあぁあああっ!!?」
ズシィーーンッ……。
アウラがクラフトの手渡してきた胴着を受け取った瞬間、有り得ないほど重くなり胴着は見事に地面にめり込んでしまった。
「すまない。言い忘れていた」
「な、なにこれ?」
「ああ、俺の胴着は特別製でな。ソリテールに頼んで『重たくなる魔法』をこれでもかと掛けてもらっているんだ」
「ばっっっかじゃないの!?」
アウラの怒りはごもっともだ。だが、すでに武の極致に到ってしまったクラフトでは生半可な修行は遊びと変わらない。
だからこそ錘を身につける。これさえあれば格下に動きを合わせることだって、多少の苦戦も体験できるかもしれないのだ。
とはいえ。無駄に重すぎる胴着をアウラの力で持ち上げる出来ないうえにリーニエは胴着を汗臭いといって触ろうとしない。
「ごめんなさいね。クラフト」
「いや、べつに良いさ」
必然的にクラフトが運ぶしかないのだが、これも修行の一環として彼は普通に運ぶし。リーニエやアウラ以上に荷物を抱えている。
「リーニエ。ちょっと来てくれ!」
「なに」
「こいつは何処に運べばいいんだ」
「たぶん台所?」
「それは私がするわ」
クラフトがアウラの使っているエプロンを掲げるとリーニエは曖昧な答えを呟き。すっと横からでてきたアウラにエプロンは渡る。
なんだか恥ずかしそうだ。
〈アウラ〉
やっぱりお母さんかもしれない大魔族
とある都市に引っ越しした。まだまだ魔王と人類の戦争は続いているものの。勇者達によって戦力を失ったアウラには関係ない。それよりも特売日の争奪戦のほうが大事なのだ。