【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の夕暮れ────。
元・七崩賢の大魔族にして万物の出来事を采配する「天秤」の異名を持つアウラは北側諸国のグラナト伯爵領に居を構えた。
フランメの防護結界は殲滅派の魔族および魔物を弾くため共生派の魔族は総じて自由に出入りすることは可能であるのだが。
もっともそんなことを知らないアウラは「フランメの防護結界緩すぎじゃないかしら?」と不安を感じ、それとなくソリテールに学んだ純粋な魔力のみを利用した補強を行う。
「まあまあね」
そう言うとアウラは豊かな胸を張る。
そんなアウラのとなりでリーニエは自分の胸とアウラの胸を比較しながら「どうしてこんなに違うのだろうか?」と小首を傾げる。
「アウラ様。あれはなに?」
「あれはヒンメルの銅像よ」
しかし、アウラは先日(だいたい二十年くらい前)会ったばかりで新鮮さなど感じない。むしろ此処でもヒンメルの顔を見なくちゃいけないのかと彼女はほんの少しだけ憂鬱な気分になっていた。
「かわいい」
「は?」
ふとアウラはスカートを掴まれている感覚に気が付き、後ろに振り返ってみると小さな男の子がスカートを掴んでいた。
「……リーニエ。どうしたらいいの?」
「お母さんは渡さない」
「いや。そうじゃなくてね?」
アウラはリーニエに相談する。
だが、まともな答えは返ってこず。どうしたものかと困りながら両足に抱きつくふたりを見ないように上を見る。
すると青空の真ん中にイボ頭のおっさんが見下ろしているのが見えた。アウラは「あれがソリテールの言っていたホトケなのだろうか?」と考えるもすぐに意識は足元に戻された。
「すき!」
「だめ!」
「ふたりとも喧嘩は良くないわ」
「でもお母さんと結婚したいとかお嫁さんにするとかバカなこと言ってる」
「バカじゃないもん!」
また口論を始めてしまったリーニエと男の子に「ああ、どうしたものか」とアウラが悩んでいると「迷える魔族、アウラよ。これを使うのだ」とおっさんの声が聴こえてきた。
「だれだ!」
リーニエの手刀でおっさんの声は消えた。
恐るべし、カラミティエンド。もっともアウラもおっさんの声なんて信用していないので、とくに助かったと思うことはない。
「ぼうや。悪いけど、私はもう子供がいるわ」
「えうっ、だめなの?」
「うん。だめ、絶対にだめ」
「あなたが本当に私のことが好きなら大人になってからまた会いに来なさい。そうしたら……まあ、話くらいはしてあげるわ」
そう言うとアウラは足にしがみつく男の子を優しく引き剥がし、リーニエと一緒に新居になる予定の空き家に向かって歩き出す。
「さて…リュグナー達はいつ来るのかしら?」
「あいつら臭いから嫌い」
「もう。だめよ?」
そう言ってリーニエの言葉を嗜める。
〈アウラ〉
天秤の大魔族
また引っ越ししたら現地の男の子に一目惚れされてしまった罪深い大魔族の美女である。しかし、実質子持ちなうえに相手は子供なので断った。
〈リーニエ〉
最強の魔族
元・七崩賢のアウラを守るために殲滅派の魔族を悉く叩き潰した結果、人類と魔族の双方に「魔王に匹敵しうる最強の魔族」と認識されてしまった。