【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の午前中────。
元・七崩賢のアウラは魔族向けの家庭料理を教える教室での仕事を終えて帰っている途中、どこかで見たような少年が目の前に現れた。
「お久しぶりです。アウラさん」
「……ああ。あの時のぼうやね」
「はい。また会いに来ました」
はじめて会った子供の頃より少年の身長は伸びて、もう少し成長すればアウラを越えるだろう。もっともアウラはさっきまで少年のことを忘れていたうえに、ほんのちょっぴり警戒したのは内緒だ。
「まだ諦めてないの?」
「僕は貴女一筋ですよ、アウラさん」
そう言って少年は微笑む。
しかし、アウラとしては長寿の自分と結婚したり付き合ったりすれば必ず不幸になるのは分かりきっている。なによりアウラには少年はどうしてもリーニエと同じくらいの子供にしか見えない。
「まあ。お話しはするって約束したものね」
「はい!」
渋々とアウラは少年を連れて料理教室の近場に出来た喫茶店に入店する。ふたりはカウンター席ではなく、窓際の隅に移動し、それぞれ飲み物をコーヒー豆を挽いているマスターに注文する。
ちなみにアウラは砂糖ましましのミルクティーだ。やはり共生派になったせいで彼女はどうしようもなく糖分を求めてしまう。
「アウラさん、僕と結婚して下さい!」
「それは絶対にだめよ。あなたも分かるでしょ?私とあなたじゃ、どうしたって寿命も違う。それに私にはリーニエがいるわ、あと他の部下もね」
「それでも僕はアウラさんがいいんです」
アウラは何を言おうといっこうに引く気配のない少年に困りつつ、こうも真剣に好意を向けられるのは初めてのことだった。
しかし、それはかつて七崩賢の大魔族として生きて残虐の限りを尽くしてきた自分を知らない無垢な少年だからこそ向けることの出来る眼差しだ。
いくらアウラが共生派になろうとグラナト伯爵領の老人達はアウラの恐ろしさを知っているし。どうしたって過去は振り払うことの出来ない事実だ。
「ハッキリと言ってあげるわ。もう諦めなさい」
そう言ってアウラは喫茶店を出る。
こうやって悪役のように振る舞わなければ少年は諦めないだろうと彼女は考えて、本気で少年を拒絶した。久しぶりにアウラは共生派になって、本当に久しぶりに敵対心をむき出しにした。
「僕はっ、僕は諦めません!!」
「…………」
そう彼女の後ろで少年は叫ぶが。アウラは後ろに振り返ることなくリーニエ達の待っている我が家に帰っていく。
しかし、アウラは知らない。この少年がフリーレンに一目惚れしたヒンメルのごとくマジでアウラ一筋すぎる青年に成長することを……。
〈アウラ〉
グラナト伯爵領の初恋泥棒?
自分に恋する人間の男の子に困っている。人間が長寿の種族と結ばれるということは悲しいことであるとソリテールに聞いている。