【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法   作:SUN'S

95 / 97
神技のレヴォルテじゃない

とある日の夕暮れ───。

 

アウラに恋する青年、いや、グラナト伯爵領の嫡男は残り僅かな騎士団を引き連れて神技のレヴォルテと対峙していた。ひとり、またひとりと変速的な剣に吹き飛ばされる。

 

だが、重傷者は居れど死傷者はいない。すべては鬼神リーニエの地獄すら生温い特訓を耐え抜いたおかげだろう。それは騎士団の人間達も理解し、より一層の尊敬を彼女に送る。

 

「ぐうっ!?」

 

青年は四つの剣の一つを弾く。

 

しかし、それでは三つの剣に対応することは出来ずに無惨にも胴体や肩にレヴォルテの斬撃を受け、つばぜり合いもままならず後方に弾き飛ばされる。

 

「……弱くはない。だが、未熟だ」

 

そう言うとレヴォルテは三本の剣を地面に突き刺し、脇の下に生えていた副腕を胸の前で組み合わせる。その行為は驕りによるものか、あるいは戯れなのか。

 

ゆっくりとフラフラした覚束無い足取りで戻ってきた青年にレヴォルテは視線を向ける。ほとんどの騎士団は傷だらけ、おそらく立つことは不可能な負傷者ばかりだが生きてはいる。

 

「レヴォルテ。お前だけは絶対に倒す!」

 

「意気込みだけでどうこうなるのか?」

 

そう青年は叫ぶ。もっとも彼の覚悟など微塵も興味のないレヴォルテはあっさりと彼の言葉を否定し、右手に持っていた剣を突きつける。

 

「うおおおおおおっっ!!」

 

青年は型も動きもめちゃくちゃな突進を仕掛ける。レヴォルテに勝つために彼の出来る最善策は最大級の闘気を込めた剣を放つことだ。

 

「やはりお前は未熟だ」

 

「かあっ……!」

 

ふたりは擦れ違い、青年が倒れた。

 

「私を魔族と甘く見たな。かつて貴様の様に闘気の技を操る者と私の幾千と戦い、ひとりの戦士を除いて勝利してきたのだ。あまり魔族を嘗めるな…!」

 

怒りの混じった声色で倒れ伏す青年にトドメを刺そうとするレヴォルテの右腕が弾かれ、わき腹に感じたことの無い激痛が駆け抜ける。

 

「お前、何してるの?」

 

「り、りぃにえ、さん」

 

そう巨大な戦斧を担いだリーニエは倒れた青年を見下ろしながら呟く。青年も騎士団の人間達も彼女が武器を持っているところを見るのは初めてだ。

 

いや、そもそも彼女は武器を使うのだろうか。

 

「リーニエ。お前が仮染めの最強か」

 

「は?」

 

リーニエはぐるりと首だけを後ろに向け、ゆっくりと立ち上がってきたレヴォルテを睨み付ける。それもそのはずだ。レヴォルテは最強の魔族と自負するリーニエに「仮染めの最強」と言ったのだ。

 

それ即ち宣戦布告の煽り。

 

「私はレヴォルテ。最強を目指す者だ」

 

「私はリーニエ、覚えなくて良い」

 

四本の剣を構えるレヴォルテに対してリーニエも戦斧を構えたが、このままでは青年の二の舞になる。一度の攻撃は防げるだろう。

 

いくらリーニエでも同時に振るわれる二度目と三度目の攻撃を防ぐことは出来ない。青年はこれから愛する人の娘が負ける瞬間を見ることになる。

 

「ほう。やるな!」

 

「お前は期待外れ」

 

「ならば、これはどうだ!」

 

いや、そうなるはずなのだが……。

 

リーニエは平然と四つの剣を防ぎ、無傷でレヴォルテの攻撃を捌き、レヴォルテの胴体に反撃を見舞う。アウラほどではないけれど、青年は少しだけリーニエに見惚れてしまった。

 

「何故だ。何故、当たらない」

 

そうレヴォルテはリーニエに問い掛けるとふたりはピタリと動きを止めた。一触即発の剣呑さは残ったまま問答を始める。

 

「だってお前弱いもん」

 

あまりにも残酷な一言を呟いた。

 

「それと私は『模倣する魔法』を使える」

 

「それがなんだと言うのだ」

 

レヴォルテの反論に青年も騎士団の人間達も不本意ながら同意する。いきなり「模倣する魔法」を使えることを教えられても理解できない。

 

「私は相手の体内を流れる魔力を記憶し、その動きを完全に完璧に再現できる。お前は私と対峙した瞬間に、もうお前の底は知れていただけ」

 

そう言ってリーニエは戦斧を捨てた。

 

いや、それよりもだ。レヴォルテの問い掛けに対するリーニエの答えは、あまりにも理不尽すぎる答えだった。

 

リーニエは一度見れば相手の全てを模倣し、どうやって、どのように、自分を攻撃しようとしているのかを既に知っているということだ。

 

「ふざけるな、ふざけるなあぁぁ!!!」

 

レヴォルテは魔族らしからぬ激昂とともにリーニエに向かって剣を振るう。けれど。彼の攻撃を一度として彼女に届くことはなかった。

 

そこにレヴォルテはいなかった。

 

そこにいるのは最強の魔族だけだった。

 

 

 

 




〈リーニエ〉

真の最強を証明した魔族

神技のレヴォルテの一言に少しだけ怒ったけど、すぐに冷静さを取り戻して普通に圧倒し、格の差を見せつけて勝利した。あとでアウラ様にいっぱい褒めてもらえるといいね。

〈青年〉

グラナト伯爵領の嫡男

わりと神技のレヴォルテ相手に善戦したものの敗れてしまった。もう少しで死ぬところをリーニエに助けられたが、それよりもレヴォルテを圧倒するリーニエの強さに驚愕した。

〈レヴォルテ〉

大魔王の前では神技足り得なかった

真の最強となるために剣技を磨いてきた。それが一度見ただけで、すべてを見透かされたうえに手加減されていたことを知りながら敗れた……。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。