【本編完結】魔法使いフリーレンとくだらない魔法 作:SUN'S
とある日の午後───。
元・七崩賢のアウラはグラナト伯爵の嫡男である青年に求婚されていた。アウラが彼と出会って凡そ十年ほど経過しているけれど。
彼の意志は変わることなくアウラに向かっている。先日の神技のレヴォルテとの戦いで負傷したボロボロの身体を引き摺って、今日も彼はアウラに会いに来ているのだ。
「貴方もしつこいわね」
そうアウラは溜め息を吐く。
五百年も生きてきた大魔族であるアウラにそこまで言わせたのは後にも先にもきっと彼だけだろう。もっともそれはソリテールやマハト、クラフトという知人を除外しているおかげなのだが。
「それが僕ですからね」
「ふぅん」
カランとスプーンが音を立てる。どうやら青年と話している間にアウラはガラス製のグラスにこれでもかと積まれていたパフェを食べてしまったようだ。
「ところで。今日の用件は?」
「僕と結婚して下さい」
「またそれ?いい加減に……」
いつものように求婚を断ろうとアウラは青年に視線を向けた。しかし、そこにいるのは幼少の憧れを引きずり、ずっとダメ元でも告白していた青年ではなく、本気の真剣な眼差しでアウラを口説いている男がいた。
人の寿命は短い。
かつてソリテールやマハト、クラフトに言われた言葉を思い出しながらアウラは溜め息を吐いた。元とはいえ七崩賢の大魔族が、人間に感化される。
「分かった、良いわよ」
そう言ってアウラはケーキを注文する。
「い、いま、なんと?」
「だから私の百年を貴方に譲ってあげるって言っているのよ。あ、マスター、いつもよりクリームは大量に乗せてもらえるかしら?」
「そ、それは、つまり?」
「結婚してあげるわ、貴方とね」
青年に問いにアウラは平然と言い切った。
暫し無言になる喫茶店だったが、すぐに大歓声で溢れ返る。なにしろ、ここにいるのは青年の恋路を応援する常連客ばかりだ。
そうなるのも仕方ない。
「…………」
みんなが騒々しく喜んでいる傍らでリーニエだけはプクーッと頬っぺたを膨らませて怒っていた。まあ、お母さんのように慕っているひとが結婚してしまうのだ。彼女が怒るのも当たり前だ。
「アウラさん。いつ結婚しましょうか」
「いつでもいいわよ」
「あ、やっぱり素っ気ないままなんですね」
そう言って青年は笑う。アウラの素っ気なさはいつもと変わらないし、むしろ青年は素っ気なくされるのが大好きなのである。
「あら、どうしたの?」
「お母さんは渡さない…!」
「ふっ」
リーニエの言葉に青年は余裕の笑みを浮かべる。普段からアウラとのデート?を邪魔していたリーニエにようやく青年は勝てたのだ。
まあ、仕方ないだろう。
〈アウラ〉
なんとなく結婚を承諾した大魔族
ふとソリテールに言われた人間の寿命の短さを思い出し、このまま彼が亡くなるのを見送るだけなのは、ちょっとだけ嫌だった。