これがトレセン版温泉開発部ですか・・・。
今回も今回ですっ飛ばしていきます。
こう言うとアレですけど、アビドス3章でゲヘナ組が絡めるタイミングなんて実際こんなもんですし・・・。
次回からはめっちゃ頑張るので、今は許して・・・。
戦いの火ぶたを切ったのは、ホシノだった。
きっかけは、ノノミがネフティスに人質として囚われてしまったことから始まる。
ホシノは単独でノノミを助けようとし、後輩組が止めようとしたものの力づくで無力化されてホシノは単身駆け出して行った。
結果的に先生が復活したこともあってノノミの救出は成功したが、カイザーにシェマタの存在がバレてしまった。
そこからカイザーとのシェマタ争奪戦に発展するかと思われたが、突如としてハイランダー鉄道学園から派遣された管理室の監督官である朝霧スオウが本性を現して争奪戦に加わり、一足先にシェマタが保管されている“生徒会の谷”へと向かい、ホシノや先生たちも後に続いた。
先生たちが見守る中、ホシノはスオウとの一騎討ちに勝利したものの、最終的にスオウがシェマタを起動させ強奪、学園を吹き飛ばすと脅迫しながら大オアシス駅へと去っていった。
そして現在、ホシノは大オアシス駅に向かうために“生徒会の谷”に行く際にも通った鉄道の管制室へと向かった。
のだが、
「開いてる・・・誰?」
大オアシス駅に向かうための管制室、閉めていたはずのその扉が何故か開いていた。
先生や後輩たちであれば追い抜かれれば気づくだろうし、カイザーであれば兵士がいなければ一台も列車が稼働してないのはおかしい。
まさか新たに敵が現れたのかと、ホシノは盾を構えて警戒しながら中へと入った。
「やっほー、ホシノちゃん」
制御室の中にいたのは、好戦的な笑みを浮かべたミラだった。
呆気に取られるホシノに構わず、ミラはホルスターから
「それじゃあ、あの日の続きといこうか」
* * *
「アビドス自治区内で戦闘が勃発しました!小鳥遊ホシノが私募ファンドの戦力を撃破しています!」
ミラとホシノが邂逅する半日前。
風紀委員会本部でヒナとミラはホシノが戦闘を開始したという報告を聞いた。
戦闘自体は予想していたことだが、ホシノ一人だけ、というのは想定外だった。
いや、たしかに以前も独断で行動していたことはあるが、それでも同じ轍を踏むとは思っていなかった。
「ふぅん?ずいぶん強引だけど・・・後輩が人質にでも取られたかな?」
「・・・先生は、まだ目を覚ましていないの?」
今のところ、先生が病院に運ばれて以降の続報はない。
先生を待てないほど切羽詰まっているのだとしたら、自分達が動かなければならない可能性を考慮しなくてはならない。
だが、その心配は杞憂だった。
「いえ、つい先ほどですが、アビドスに向かう先生を確認しています。時間からして、すでに到着しているかと」
「となると、先生が来る前に突撃しに行ったということかしら」
「今のホシノちゃんらしくないような、割と昔はあんな感じだったような・・・どっちだろうね?」
たしかに、かつてのホシノはミラに負けず劣らず好戦的、というより敵と見なせば容赦なく噛みつくような凶暴性を持っていた。
今のホシノは、そんな“暁のホルス”と呼ばれていた頃の姿を想起させる。
「カイザーに動きは?」
「今はまだありません。ですが、いつ動いてもおかしくない状況とも言えます」
抜け目ないカイザーのことだ。いくらか債権を手離したと言えど、見向きもせず放置するとは思えない。
シェマタの存在に勘づけば必ず行動に移すだろう。
逆を言えば、今はまだシェマタの存在を確信していないということでもある。
「シェマタの所在は未だに分からないまま、か。列車砲って言うくらいだから、線路沿いにあるとは思うけど」
「そちらの捜索にも人手を割きましょうか?」
「いえ、そっちはいいわ。うかつに砂漠に人は送り込めないから」
砂漠の環境はとても厳しい。
素人が事前準備もなく足を踏み込めば、まず間違いなく遭難するだろう。
線路沿いを重点的に探すとしても、動くのは在処を特定してからだ。
ひとまずカイザーとシェマタは後回しにして、入れ替わるようにミラが情報部の生徒に尋ねた。
「それよりも、私としては“朝霧スオウ”の方が気になるかな。そっちの情報は?」
当初は監督官としての職務を果たすために動いていると思われていたスオウだったが、現在はネフティス側に寄っており、明らかにシェマタのことを知っているような行動をとっていた。
ただのハイランダーの生徒とは思えなかったが、情報部の返答は芳しくないものだった。
「ハイランダー鉄道学園の監督官ですね?すみませんが、詳しいことは分かりませんでした。ハイランダー鉄道学園に所属する前は野良の不良だったようですが、それ以前のことまでは・・・」
「そう・・・」
それはそれとして何故シェマタのことを知っているのか気になってしまうような内容だが、これ以上の捜査は人手と時間の無駄になりかねない。
個人的な興味をグッと押し込めて、再びホシノを中心とした動向に意識を向ける。
その甲斐もあり、ホシノの行先を追ったことでようやくシェマタの居場所を補足することができた。
「これで、シェマタや他の雷帝の遺産の場所は分かった。あとは私たちが動く大義名分さえあればいい」
「そうね。それに、たぶんそろそろ・・・」
ヒナがそう言った次の瞬間、ヒナの端末から着信音が鳴り響いた。
表示されている名前が“先生”であることを確認したヒナは、すぐに通話に出た。
『もしもし、ヒナ?助けてほしいんだ』
通話に出て最初に先生が言ったのは、予想していたものであり求めていた言葉であった。
もちろん断る理由などあるはずもなく、ヒナは二つ返事で了承する。
「分かったわ」
『ありがとう、状況なんだけど・・・』
「大丈夫よ。全部知っているから・・・あぁいえ、ちょっと待って」
一度会話を切って、ヒナはチラリとミラの方を見た。
ヒナの視線の先では、ミラが誰から見ても分かるほどそわそわしていた。
エサを前にした子犬のような、あるいは新しいおもちゃを差し出された子供のような輝きを宿した無邪気な眼差しに、ヒナは思わず出そうになった溜め息を飲み込みながら先生に話を戻した。
「・・・私じゃなくて、代わりにミラを行かせるわ」
『? うん、分かった』
何となく微妙な空気になったのを感じ取った先生は一瞬首を傾げるが、どちらにしても心強いことに変わりはないためすぐに受け入れる。
時間がないためさっさと通話を切った後、ヒナは思わずジト目でミラの方を見た。
「・・・役目はちゃんと分かってるわよね?」
「大丈夫だよ?うん、大丈夫」
どこか上の空な様子で返答するミラに、今度こそヒナは溜め息を吐いた。
別に、ヒナは先生がミラではなく自分を選んだことに思うところはない。それはミラも同じだろう。
実力は別として、立場上トップはミラではなくヒナなのだから、組織としてヒナの顔を立てるのは不思議じゃないし、それを抜きにしてもデリケートな外交問題はヒナの方が適任と言える。
だからこそ、ホシノとの戦いを前に舞い上がっているミラに任せるのは、色々な意味で不安だった。
あくまで先生から頼まれているのは『暴走しているホシノの足止め』だが、今のミラでは必要以上にボコボコにしかねない。
ついでに、うなぎ登りになっているテンションに身も心も任せて余計なことを口走りかねない。
一応、やる時はやる性格なのも知ってはいるが・・・それでも今回ばかりは、どちらかと言えば心配の方が勝る。
「それじゃ、行ってくるね」
「・・・えぇ、いってらっしゃい」
珍しく若干の不安を滲ませながら、ヒナは足取りが軽いミラを見送った。
* * *
時間は現在に戻り、思わぬ来訪者にホシノは目を丸くしながら話し掛けた。
「あれ、ミラ?なんでここにいるの?迷子なら、帰り道を教えてあげようか?」
「必要ないよ、この辺もマッピングしてるから。それよりも、あれをホシノちゃん一人で壊すのは無謀だから、先生や後輩たちを巻き込みたくないならやめておきな」
端的に“諦めろ”と告げてくるミラに、ホシノは目を細める。
同時に、ミラの目的もおおよそ察しがついた。
だからと言って、ホシノも引き下がるつもりは微塵もないが。
「へぇ・・・でも、おじさんはいつもこうやって解決してきたからさ。早く退いてもらってもいいかな?」
「それは出来ない相談かなぁ。言ったでしょ?『私はあの時の続きをしに来た』って」
つまり、先生の頼みごとを聞きつつ、ついでに自分の欲求を満たしに来た、と。
ヒナと同じ結論にたどり着いたホシノは、若干呆れながらも警戒度を引き上げる。
・・・それはそれとして、自分が勝つと信じて疑わない眼差しは気に食わないが、今はどうでもいい。
目的がシェマタの破壊である以上、出来ることなら余計な戦闘はしたくないが、それも難しい。
こうなったミラは、逃げようと思ってもなかなか逃げられないし、簡単には倒れないだろう。
「そっか・・・じゃあ、仕方ないね」
戦闘は避けられないと判断したホシノは、銃と盾を構えなおして足を踏み入れる。
ミラもまた、さらに笑みを深くしながら一歩前に出る。
互いに数歩歩み寄った次の瞬間、ミラが一気に踏み込んで盾を構えるホシノとの間合いを詰めた。
「それじゃ、改めてホシノちゃんが私を楽しませてくれるか、確かめてあげる」
2年の時を経て、一人のお人好しな先輩によって中断された2戦いの続きが、ここに始まった。