キヴォトスの白い龍   作:リョウ77

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めちゃくちゃ執筆が沼りましたが、どうにか完成しました。

それはそうと、アリウス編が終わったなら、そろそろゲヘナ編を期待してもいいんですよね?


アビドス編・24

ガァン!!という鈍い音と共に、ホシノが後ろに吹き飛ばされる。

最初の交錯でシールドバッシュを仕掛けたホシノに対し、ミラは真正面から盾を後ろ回し蹴りを叩き込んだ。

盾を弾き飛ばされたホシノに、ミラは流れるように銃口を向けて発砲した。

ホシノは無理矢理盾を引き戻すことでギリギリ防いだが、受けた衝撃でさらに後方へと飛ばされる。

管制室から追い出されながら何とか体勢を立て直して着地したものの、ミラの蹴りと銃撃を受けた左腕と盾はどうしようもなく痺れていた。

 

(ダメージはあれよりマシだけど、それ以上に一撃が重い・・・!)

 

ホシノが思い出すのは、かつて虚妄のサンクトゥム攻略戦で戦ったビナーの熱線。

後輩たちを守るために盾で受け止めたが、多少のダメージはあれど純粋な熱エネルギーで見た目より質量がなかったこと、大技なだけあって頻発しなかったおかげである程度余裕をもって防げた。

対して、ミラの攻撃は直接的なダメージはあまりないものの、しっかり受けてもなお弾かれるほどに重い。

さらに質の悪いことに、近距離限定とは言えそんな攻撃が通常技感覚で飛んでくるせいで、こちらが体勢を崩すと淀みない動きで追撃を見舞ってくる。

初手はどうにか凌いだが、何度も受け止められるものではない。

何より、これ以上は後に控えているスオウとの戦いに支障が出る。

幸いなことに、ホシノ自身はミラを倒す必要はない。制御レバーさえ引いてしまえば、あとは電車に乗ってミラを近づけさせないように追い払えばいい。

であれば、やりようはある。

腕の痺れが治まったのを確認したホシノは、盾を構え直して再びミラへと突撃した。

 

「まぁ、そうするしかないよね」

 

対するミラは、笑みを浮かべながら余裕を持って迎え撃つ。

ミラもホシノの狙いが制御レバーであることは分かっている。

だからこそ、ミラは適度に引き付けてから迎撃すればいい。

不都合があるとすれば、ホシノの武器がショットガンであることか。

制御レバーを引かせないように立ち回るには、管制室の中で戦うのが最も堅実だ。

だが、それでは赤雷を活かすことができず、アブソリュートの射程ではどうしてもホシノの間合いで戦う必要がある。

ゼロ距離まで密着すればミラの間合いになるが、同じ手を食らってくれるほどホシノも甘くない。

こういう時は弾幕で手軽に面制圧できるヒナが羨ましいが、無い物ねだりをしても仕方ないだろう。

それに、ミラにはミラなりの戦い方がある。

 

「こういう感じに、ね」

 

そう小さく呟きながら、ミラは赤雷を纏った右足を振り上げて、思い切り振り下ろした。

赤雷と共に迸った衝撃によって、ホシノは思わずたたらを踏む。

その僅かな隙を逃さず、ミラは一足で間合いを詰めて蹴りを繰り出した。

ホシノは盾で防いだものの再び管制室からはじき出され、さらには止まっている車両すらも貫通していった。

だが、ミラはホシノが吹き飛んでいった方向を見ながら怪訝な表情を浮かべる。

 

(ん~・・・何だか軽いような?)

 

先ほどと比べて、蹴った時の感触が明らかに軽かった。

おそらくは、自ら吹き飛ばされたことで上手いこと衝撃を逃がしたのだろう。見かけは派手だが、おそらく先ほどよりもダメージは抑えられている。

だが、それで制御レバーから離されては本末転倒のはずだ。

警戒しながらホシノが吹き飛んだ方向を注視するミラだが、砂煙が晴れた先にホシノの姿はなかった。

それとほぼ同時に、壁の向こう側から高速で駆け抜ける足音が聞こえてくる。

 

「あぁ、そういうことね」

 

ホシノの意図を察したミラは、振り向かないまま右手のアブソリュートの銃口を肩越しに後ろへと向けた。

次の瞬間、制御レバーのすぐそばの壁が破壊され、そこから現れたホシノがレバーに手を伸ばしていた。

たしかに、わざと吹き飛ばされてミラの視界から消えてしまえば、制御レバーへの最短経路にも奇襲にもなる。

だが、背後をとったにも関わらずしっかり自分に向けられている銃口を見たホシノは顔を引き攣らせた。

 

「やばっ・・・!」

 

ミラが引き金を引くよりも早く、ホシノはレバーに伸ばした手を引っ込めて盾を構えながら身体を捻る。

放たれた銃弾はどうにか受け流したが、ミラは大きく仰け反ったホシノにバックステップで近づき、アブソリュートを手放した左手でホシノの足を掴んでぶん投げた。

満足に受け身もとれなかったホシノは背中を強く叩きつけられ、肺の空気を強制的に吐き出されながらも何とか体勢を立て直す。

咳き込むホシノを余所に手放したアブソリュートを回収するミラを見て、ホシノは認識を改めた。

 

(間違いない。あの時より、私が思っている以上に強くなってる・・・!)

 

当然、ホシノだってミラのことを侮っていたわけでも、過小評価していたわけでもない。何なら、戦いぶりは何度か目の当たりにしている。

だが、自分が本気で戦ってここまで後れをとるとは思っていなかった。

連戦で疲弊している、というのもあるだろう。狙いがバレており動きが読まれやすい、というのもあるかもしれない。

だが、それでもここまで手玉に取られるほど差があるわけではなかったはずだ。

 

(どうする?こんなところで足止めされてる場合じゃないのに・・・!)

 

このままでは、シェマタが先に大オアシス駅にたどり着いてしまう。

そんなホシノの内心を知ってか知らずか、ミラは楽しそうな笑みを浮かべたまま話しかけた。

 

「あはは、なんだか懐かしい感覚だね」

「おじさんとしては、思い出話に花を咲かせる暇はないんだけど?」

「それを言うなら、こうやって私に苦戦している時点でシェマタを一人で壊せるとは思えないんだけど」

 

「だから諦めろ」と言外に伝えられたような気がしたホシノは、徐々に苛立ちが募っていく。

僅かに眉をひそめながらも、平静を装って自信満々に返答した。

 

「そんなの、やってみないと分からないんじゃない?」

「それはどうだろうね?

 

 

 

だって、今のホシノちゃん、あの時より弱いもん」

「・・・は?」

 

ミラの言葉に、ホシノの顔から一瞬笑みが消える。

 

(弱い?私が?あの時より?)

 

たしかに、一日中戦闘を続けてきた今のポテンシャルは万全とは言い難いかもしれない。

だが、ユメを失い、新たな後輩を得たあの日から、同じ過ちを繰り返さないために、相応の戦い方を身に付け、隠れて鍛練してきた。

にも関わらず、ミラは今の自分を“昔より弱い”と断言してきた。

当然、ホシノにとって看過できる発言ではない。

 

「・・・へぇ、言ってくれるじゃん。本当にそうか、試してみる?」

「今の状況が答えみたいなものだと思うけどね」

 

もはや言葉を返すこともなく、ホシノは床を強く蹴ってミラに肉薄した。

ミラの腕とホシノの盾がぶつかり合い、互いに押し合いになる。

当然膂力に分があるミラがじりじりと押し返すが、ホシノが一歩後ろに下がったことで体勢を崩してしまう。

ホシノはすかさずショットガンを構えるが、ミラは崩れた体勢を無理矢理立て直してグリップを叩きつけた。

間一髪で防いだホシノは後退を余儀なくされるが、それでも意地でショットガンの銃口を向けたまま引き金を引いた。

ミラは咄嗟に翼で自分を庇うが、狙いが甘く間合いから外れた距離であったためほとんど被弾しなかった。

だが、ミラの後ろに着弾した銃弾は爆発を起こし、さらに立て続けに投げられたスモークグレネードによってミラの視界はほとんど奪われてしまう。

翼を羽ばたかせて煙幕を吹き飛ばすが、晴れた視界の先にホシノの姿はなく、後ろを振り向けばレバーが倒されていた。

 

「あらら・・・」

 

気の抜けた声を出しながら外に出てみれば、動き出した列車の最後尾にはホシノが乗り込んでおり、すでにその姿が遠ざかりつつあった。

その様子を、ミラは慌てるわけでもなく、笑みを浮かべたまま黙って見送った。

 

 

* * *

 

 

「はぁ、はぁ・・・なんとか、撒けたかな・・・?」

 

誰もいない車両の中で、ホシノは荒く息を吐く。

余計なダメージを負ってしまったものの、どうにか大オアシス駅行きの電車に乗ることができた。

だが、まだ安心することはできない。

 

(それにしても、なんでよりによってミラが・・・下手したら、追いつかれても不思議じゃないかな)

 

ミラの機動力であれば、先回りして電車に乗り込んでくる可能性もある。

問題は、ミラがいつ攻めてくるか。そして、乗り込まれた場合にどう立ち回るべきか。

最善は、やはり電車に乗り込ませないよう迎撃したい。

その時に備えて、今は身体を休めるべきだ。

ある程度思考が纏まってから立ち上がった、次の瞬間。

 

ドゴォーーン!

 

「なっ、なに!?」

 

轟音と共に、列車が激しく揺れる。

嫌な予感を覚えたホシノは慌てて窓から外の様子を確認して、思わず絶句した。

 

「うそ・・・」

 

ホシノの視線の先では、先頭車両の機関部が炎に包まれながら谷底へと転がり落ちていた。

これでは、列車に乗って大オアシス駅まで行くことができない。

だが、それよりも問題なのは“誰がやったのか”だ。

爆弾ではない。線路に仕掛けられていたのであれば全ての車両が脱輪しているだろうし、機関部に仕掛けたとしたら先頭車両だけ横に吹き飛んで落ちるのは不自然だ。

他の列車や重機も見当たらないとなると、状況から考えて犯人は一人しかいない。

思い至った次の瞬間、天井からタンッと僅かな足音が聞こえた。

 

「ッ!!」

 

全身に悪寒が走り、第六感による危機察知に逆らわず盾を後方に構えたのとほぼ同時に、赤い雷球が扉を破壊しながらホシノに襲いかかった。

間一髪で辛くも防ぐことに成功するが、真正面から受け止めたホシノは一気に扉をぶち抜いて隣の車両にまで吹き飛ばされ、赤雷の余波で全身が痙攣していた。

 

「あれ、思ったより近くにいた。探す手間が省けてよかったよ」

 

壊された扉の先から、空の左手に赤雷を纏ったミラが現れる。

分かっていたとは言え、想像より遥かに早い登場にホシノは冷や汗を流した。

思ったより近かったと軽く言ってはいるが、ミラとホシノの間には一両の客室車両が存在していた。

それをすべての座席をまとめてぶち抜き、車両の大部分を抉り取ってなおあり余る威力、もし一瞬でも防御が間に合わなければ勝負はついていただろう。

 

「・・・まさか、こんなに早く追い付かれるとは思わなかったかなぁ~。どうやって来たの?」

「頑張って走って先回りした。先頭車両は切り離すだけでもよかったんだけど、暴走列車を放置するよりは先生の安全も考えて念のためね」

 

だからと言って、生身で走行中の列車の車両を吹き飛ばす人物など、他に誰がいるというのか。

 

「それにしても、釣れないねぇ。もう少し付き合ってくれてもいいと思うんだけど」

「くっ・・・!」

 

笑顔で近づいてくるミラに、ホシノは必死に距離をとる。

今は場所が悪い。落雷は対策できるにしても、先ほどと同じ攻撃をされたら今度は防げるか分からない。

さすがに同じ威力を連射することは出来ないと考えて、少しでも障害物を確保することを優先した。

 

「本当に釣れないなぁ」

 

とことん戦闘を避けようとするホシノに、ミラはため息を吐く。

目的を考えれば不思議ではないが、思う存分戦いたいミラからすれば残念な気持ちは抑えきれない。

ひとまず炙り出しのために、もう一発雷球を放っておく。

先程よりも溜め時間は短いためお粗末な威力ではあるが、それでも車両を貫通してホシノに届かせるには十分な威力を持っている。

残骸だけとなった食堂らしき車両を通り過ぎ、さらに奥の車両へと移るが、そこにホシノの姿はなかった。

 

「いない・・・逃げた、ってわけじゃないかな」

 

ホシノからすれば、ミラに後ろから追い詰められるなど絶対に避けたい状況だろう。外に出て中途半端に距離をとれば、なおさらミラから一方的な展開になる。

そんなミラの予想を肯定するように、死角になっている座席の陰から現れたホシノがゼロ距離まで接近してショットガンを発砲した。

顔面に向けて放たれたゲージ弾が直撃してミラは大きく仰け反るが、それでも踏ん張ってその場に留まり、逆にホシノのショットガンを掴んで引き寄せることで2射目以降を回避した。

ホシノもミラを引き剥がそうと抵抗するが、素の膂力に差があるせいでびくともしない。

ミラはさらに力を込めつつ、笑みを浮かべながらホシノに話しかけた。

 

「これで、少しはお話できるかな?」

「ミラには、関係ないでしょ・・・!これはアビドスの・・・ううん、私の問題だから、邪魔しないでもらえるかな・・・!」

「いや、これは私()()にも関係ある話なんだよ」

 

ミラの言葉に、ホシノは眉をひそめる。

たしかにシェマタの開発にはゲヘナの“雷帝”が関わっていると聞いたが、ミラがそれに直接関係しているとは思えない。

 

「・・・どういうこと?先生に頼まれたから、とかっ!?」

「残念。それだと半分・・・いや、3分の1か4分の1正解ってところかな。私としては、このままその話をしてもいいんだけど・・・」

 

さらにショットガンを掴む力を強めるミラに、ホシノはこれ以上の抵抗は無謀と判断してミラを思いきり蹴り飛ばす。

ミラはショットガンを放した腕で蹴りを防ぎつつ、後退しながらもホシノに向けて発砲した。

ミラの射撃をホシノは壁を蹴って躱し、座席で射線を遮りながら再びミラに接近する。

今度はミラに掴まれない間合いを保ちつつ、盾からハンドガンに持ち変えて牽制も交えながら着実に削ろうとする。

対するミラは、右手のアブソリュートでショットガンを振り払いながら左手に再びアブソリュートを持って銃口をホシノに向ける。

銃口を向けられたホシノは射線から逃れるようにミラの死角に回り込もうとし、ミラもホシノを追いかけるように回転する。

目まぐるしく立ち位置が変わる中、ミラはさらに一歩踏み込んで右手のアブソリュートで薙ぎ払う。

ホシノは体を横に倒して回避することでカウンターを狙うが、アブソリュートの銃口がホシノの耳元に接近したタイミングで引き金を引いた。

 

「~~~~ッ!?」

 

雷が落ちたかのような轟音がすぐ傍で鳴り響いたことでホシノの右耳の鼓膜が破裂し、余波で三半規管を狂わされる。

ミラがその隙を見逃すはずもなく、左手のアブソリュートで追撃を加えようとする。

ホシノは体への負担を無視した動きでなんとかアブソリュートを弾いて射線を逸らすが、距離を取るまでには至らずミラの蹴りをもろに腹に受けてしまう。

咳き込みながら床を転がりつつも体勢を立て直したホシノは、反射的にハンドガンをホルスターに収納して盾を構える。

次の瞬間、ミラが放った“神雷”の閃光がホシノに襲いかかった。

間一髪、両腕を使って防ぎきった“神雷”は幾条にも分かれ、ホシノの背後を吹き飛ばしていく。

その様子を横目で確認したホシノは冷や汗を流した。

 

(これ以上、動かない列車に留まる理由はないけど、それ以前に列車がもうもたない・・・!)

 

減速している分まだマシだが、度重なる攻撃でいつ脱線してもおかしくない。

少しでも車両への被害を減らすために、ホシノは隣の貨物車両へと乗り移り、ミラもホシノの後に続いた。

 

「はぁ、はぁ・・・ちょっと、しつこいんじゃない?」

「かもね。でも、私にだって偶にはそういうこともあるよ」

 

基本的にミラは執着するタイプではないが、それでも例外はある。

それが今回であり、それを抜きにしても多くの退けない理由が他にもある。

完全に止まった車両の上で、ホシノはミラを見据えながら思考を巡らせる。

 

(できればこれ以上ミラと戦いたくないけど、それでもミラをどうにかしないと大オアシス駅には向かえない)

 

列車を止めた時点で、ミラの目的は半分達成しているようなものだ。

もし列車が動いていれば、ホシノはミラにある程度ダメージを与えた上で落とせば問題なく大オアシス駅に行けただろう。

その頼みの綱であった列車が動かなくなった以上、ここから徒歩で向かうしかないが、のんびり歩いているところを見逃してくれるほどミラは甘くない。

そのため、まずはミラを完全に戦闘不能にさせる必要がある。

いろいろと消耗している現状では分の悪い賭けになるが、それでもやるしかない。

 

(すぐそこは深い谷底。でも、ただ落とすだけじゃ足りない。気絶させた上で落とさないと。そのためには・・・)

 

頭の中で作戦を組み立て覚悟を決めたホシノは、盾をコンテナに突き刺しその陰でスモークグレネードを取り出してピンを引き抜き投擲した。

 

「同じ手は通用しないよ」

 

それを見たミラは、ホシノが投擲するのとほぼ同時にアブソリュートでスモークグレネードを撃ち抜いた。

すぐそばで起爆したスモークグレネードによってホシノは立ち止まらざるを得ず、その隙にミラの方から煙幕に乗じて接近する。

煙の中からホシノが現れる、その前にミラは空中に飛び上がり、ホシノがいた場所に向けて空中から両手のアブソリュートを発砲した。

赤雷を纏ったことでさらに威力を増した銃弾は、煙を吹き飛ばしながら()()()()()()()()()

晴れた煙幕の中に、ホシノの姿はない。

 

(やばっ、読み違えた!)

 

自らの失策に気が付いたミラは、ほぼ反射的に体を捻って頭上を見上げる。

そこには、月を背にしてショットガンを構えているホシノの姿があった。

ホシノにとってもスモークグレネードを投擲と同時に撃ち抜かれるのは想定外だったが、それでも起爆と同時に距離を詰めてくると予想していた。不意を突くために空中から攻撃してくるだろうとも。

だから、最初からミラに合わせてより高く飛び上がることだけを意識した。

起爆タイミングをずらされてしまったせいでギリギリになってしまったが、それでも読み勝つことができた。

ミラに回避は間に合わない。翼を動かすよりも早くホシノが引き金を引く。

咄嗟に腕を交差させて防御姿勢をとったミラに、ホシノはショットガンをありったけ撃ち込んだ。

ようやく直撃した銃弾は、ミラをコンテナに叩きつけてなお襲いかかりさらにめり込ませる。

全弾を叩き込んだホシノは、油断することなくさらに追撃を加えにいく。最低でも、ミラが動かなくなるのを確認するまで攻撃の手は緩められない。

貨物車両の上で横たわっているミラに馬乗りになったホシノは、装弾する間も惜しんで銃床でミラを殴り始めた。

 

「早く!そこを退いてよ!私は!あれを!止めないとっ・・・!!」

 

交差した腕を解くことが出来ず防戦一方のミラに、ホシノは半ば絶叫しながらも攻撃の手を緩めない。

ここまでくれば決着は時間の問題だが、ホシノは一刻も早く大オアシス駅に向かっているシェマタに破壊しなければならない。

今こうして戦っている間にも、大オアシス駅にたどり着いたスオウはシェマタでアビドス自治区を吹き飛ばすかもしれない。

その光景が脳裏にチラつき始めたことで、ホシノの表情には明確に焦りが見え始めていた。

何度か殴打を繰り返す内、とうとう銃床がミラのガードをすり抜けて鳩尾に突き刺さる。

衝撃が内臓まで届いた感触に、一気にトドメまでもっていこうとショットガンを振り下ろす腕がわずかに力む。

その針の穴にも満たないような隙を見逃さなかったミラは、ガバッと起き上がってホシノに抱き着いた。

突然の行動にホシノの思考が止まるが、ミラの身体から漏れ出し収束されていく赤い雷光を見て全身に悪寒が走った。

 

「まさか・・・!?」

「いつ以来かな、こうして自爆に巻き込むのは・・・!」

「っ、離して!」

 

咄嗟に離れようとするホシノを、ミラはさらに翼と足で組み付いて離さない。

必死に抵抗するも、ミラから離れることも赤雷のチャージを止めることもできず、とうとうミラの胸の中心から赤い雫が零れ落ち、

 

 

次の瞬間、ホシノの意識は赤い閃光に呑み込まれて闇に落ちた。




人の心を排除してる描写を書くときが楽しくなるの、あると思います。

余談ですが、ミラが翼まで使った全開のだいしゅきホールドをしたのはホシノが初めてです。
ヒナが羨ましがるかは・・・どうでしょう。ヒナはむしろミラをホールドする側なので。
状況が状況なので許すか、それはそれとして少しくらい妬きそうな気もします。
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