新年一発目の投稿になります。
「・・・!」
シェマタを破壊し、ようやくすべてが終わったと先生たちが一息ついた次の瞬間、空が禍々しい赤色に変わった。
「な、何が起きて・・・?」
「あっちで爆発が!っていうか、空が・・・」
「・・・!」
「これは・・・」
アヤネとセリカは突然の事態に狼狽し、シロコとノノミは嫌な予感を覚える。
すぐそばでは、先ほどまでシェマタを操作していたスオウが糸が切れた操り人形のように意識を失ってしまい、先生たちに協力したハイランダー生徒のノゾミとヒカリが介抱して安全な場所へと運ばれていく。
「先生・・・」
「ひとまず、列車砲は停止できましたが、今度は何が・・・?」
「も、もはや列車砲どころじゃなさそうだけど!?」
ホシノもシェマタも止まれば全て解決すると思っていた矢先の事態に混乱状態になるが、先生はもう一つのことが気がかりだった。
(ホシノ、ミラ・・・!)
一人で戦うことを選んで離れていったホシノと、そんなホシノを止めるために向かったミラ。
この場にいない二人の生徒の身を案じた先生は、状況を把握するために周囲を見渡す。
そして、砂丘の上にいた
「ゆめ・・・せん、ぱい」
誰かを名前を呟く、全身が影に包まれヘイローが粉々にひび割れた何者か。
あまりにも異質な様相に先生も言葉を失うが、シロコだけが気が付いたようにポツリと呟いた。
「・・・ホシノ先輩」
「あ、あれがホシノ先輩なの・・・!?」
「何が起きて・・・」
自分達が知っているホシノと明らかに違う姿にセリカたちは戸惑う。
だが、だとすればホシノと戦っていたはずのミラは、今どうなっている?
「ミラ!」
周囲を探すと、ホシノがいる場所から然程離れていないところでミラが倒れていた。
ミラがボロボロになっている姿を見るのは、これが初めてではない。
だが、“虚妄のサンクトゥム攻略戦”前のあの時はいくつかの銃創があったくらいだったが、今はそれに加えて全身の至るところに焦げ付いたような火傷を負っている。
先生の驚く声が聞こえたのか、気を失っているように見えたミラの目が開いて先生の方に視線が向いた。
「ぅ、ぐ・・・せ、んせい・・・」
「ミラ、大丈夫!?」
「ご、め・・・しくじ、った・・・」
絞り出した謝罪の言葉を聞いた先生の脳裏に、一瞬かつて見た悪夢が過る。
先生が見た光景ではヒナが腹部から血を流して倒れていたが、ここにいるのはミラで致命傷になるような怪我も見当たらない。
そのことに安堵の息を吐くが、どちらにせよ今はそれどころではない。
「て・・・ちょう・・・」
「先輩!」
「ホシノ先輩、しっかりして!」
セリカとシロコがホシノを引き留めるために立ち塞がる。
だが、ホシノは2人の後輩の言葉に反応することなく、銃口をシロコたちに向けて引き金を引いた。
「きゃああ!?」
放たれたのはショットガンの散弾とは思えないほどの衝撃波で、目の前にいたシロコとセリカだけでなく、比較的離れていた先生やアヤネたちにも余波が届いた。
ミラがなんとか意地で先生を翼を広げて守ろうとするが、ボロボロの体で離れた場所にいる先生を庇いきれるはずもなく、大きく吹き飛ばされてしまう。
ミラが弾き飛ばされ、先生は碌に受け身を取ることもできずに砂丘へと叩きつけられる。
もしこれがアスファルトなどの固い場所であったら、先生も危なかったかもしれなかったが、それでも段々と意識が遠のいていってしまう。
(ダメだ・・・私は何もできなかった・・・)
自分には、死者を蘇らせることも、過去を変えることもできない。
だが、そうでもなければホシノを元に戻すことすら難しい。
(・・・私は、どうすれば、良かったんだろう)
そんな後悔を抱えながら、先生の意識は闇へと落ちていった。
とうとう先生が意識を失ってしまい、誰もが立つことすら難しい状況の中、さらに状況は混沌に吞み込まれていく。
テラー化したホシノに呼応するかのように上空が暗雲に包まれ、その中から巨大な影が現れた。
石像のような顔と胴体に雷で形成された翼と両手を持つ異形の巨人。
“セトの憤怒”と呼ばれるそれは、ゆっくりとホシノと対峙し一触即発の空気を醸しだした。
「ごほっ、ごほっ・・・シロコ先輩」
「逃げ、ましょう・・・」
「シロコちゃん・・・」
セリカも、アヤネも、ノノミも、もはや満足に立ち上がることすら難しい。
いや、仮に立ち上がれたとしても、今のホシノには到底敵わないだろう。
だが、その中でシロコだけが、立ち上がってホシノと相対していた。
「・・・私が弱いせいで、こうなった」
かつて、記憶を失ったまま彷徨い、ホシノに拾われたあの日。
あの頃は今よりもやんちゃで、事あるごとにホシノに戦いを挑み、負け続けてきた。
もし、一度でもホシノに勝てるようになっていれば、このようなことにならなかったのかもしれない。
「でも、分かった気がする。今、ホシノ先輩を止められるのは私だけ」
根拠はある。
かつてアトラ・ハシースの箱舟で戦った、もう一人の自分。
あれと同じになれば、可能性は出てくる。
「アヤネも、セリカも、ノノミも、ホシノ先輩も・・・それに、先生も。絶対、助ける」
なぜなら、
「そのために、私はここに存在しているから」
次の瞬間、
まるで、シロコの意思に呼応するかのように、“色彩”が現れた。
このタイミングで現れた理由は不明だが、シロコからすれば渡りに船だった。
「私が・・・私が、止めないと・・・!」
シロコが吸い込まれるように手を伸ばし、色彩に触れようとした・・・その直前。
突如現れた手が、シロコの腕を掴んで止めた。
「・・・!」
「そんなものに、手を出しちゃダメ」
「ど、どうしてここに・・・!?」
思わぬタイミングで現れた予想外の人物に、シロコは驚きを隠せない。
だが、本当に驚愕したのはこの後だった。
シロコ*テラーが現れた直後、色彩はまるで行き場を失ったかのように遠ざかり、次の瞬間には倒れているミラの元へと転移した。
そしてミラもまた、そうなることが分かっていたように、あるいはそれを望んでいたように、色彩へと手を伸ばす。
「ミラ!?」
色彩に触れたらどうなるか、分からないミラではないはず。
その一瞬の混乱が取り返しのつかない遅れとなり、とうとうミラと色彩が接触してしまった。
(体が重い・・・意識も視界も、はっきりしないし・・・)
砂丘の上で仰向けになって横たわるミラは、視線だけでも動かして周囲を確認しようとする。
ホシノとの戦闘で受けた殴打のラッシュと最後の自爆ですでにボロボロだった身体は、ホシノがテラー化した際に放ったエネルギーの熱量とただの銃撃とは思えない衝撃の余波で完全に限界を迎えてしまった。
(あれが、反転したホシノちゃんか・・・)
このためにかつて黒服が周到な準備を重ねて懐柔しようとしていた訳だが、あまりの規格外に納得半分呆れ半分といったところだ。
あくまで観測が目的とはいえ、あんなものを生み出そうとした黒服は果たして正気と言えるかどうか。
(全身がヒリヒリする・・・あれだけの熱量を間近で受けたら、こうなるか・・・銃撃のダメージも、他とは比較にならない・・・)
テラー化特有の桁外れな戦闘能力の向上。
シロコの研ぎ澄まされたような“死をもたらす者”としての有り様も大概だったが、今のホシノはまさに“すべてを薙ぎ倒す災害”のようなものだ。
天災級の暴力など、そう簡単に手に負えるものではない。
あのホシノであれば、たしかにヒナを死に追いやれるだろう。
その考えに至ると同時に、頭の中で今の状況とかつて見た光景が重なった。
(これはまさか、あの時見た光景と・・・)
ミラがヒナの前から消えるきっかけになった、“ヒナが血を流して息絶えている”光景。
偶然と言うには、あまりにもシンクロしている。
あるいは、黒服の実験が失敗したことで先延ばしになった結末が今になって訪れたのかもしれない。
(もし、あれがまだ有効だとしたら、それが今だったってことか。でも、ここにいるのはヒナじゃなく私で、どうにか生きている)
すでに未来が2つ変わっているとしたら、まだ希望は残っている。
・・・だが、それすらすでに使いきってしまったのかもしれない。
ホシノに吹き飛ばされてから程なくして、上空に暗雲が立ち込めていき、中から雷鳴と共に“セトの憤怒”が現れた。
ミラは目の前に現れた巨人の正体など知らないが、ホシノのテラー化に呼応して現れたこと、暴れたらキヴォトスが崩壊しかねないことは直感的に理解できた。
もはや打つ手なしか。
そう思った次の瞬間、周囲が薄暗くなると同時に妖しい光に包まれた。
その発生源に視線を向けると、シロコの目の前に光輪とも穴とも形容し難い何かが現れていた。
まるで皆既日食のように見えるそれに、ミラは心当たりがあった。
(あれは・・・)
「まさか、色彩・・・?」
実物を見たことがあるわけではないが、文献から得た断片的な情報と、アリウスのバシリカで見たステンドグラスと特徴が一致している。
なぜこのタイミングで、とは思うが、考えられる要因は一つしかない。
(呼び寄せたのは、シロコか。けど、それだと・・・)
シロコが“恐怖”に反転してしまう。
テラー化は不可逆の現象。二度と元に戻ることはない。
それを望む人物は、この場にはいないだろう。それがホシノを止める唯一の手段だったとしてもだ。
だが、シロコを止めることができる人物もまた、この場にはいない。先生も含めてホシノの攻撃でダウンしてしまっている。
もはや、シロコを止めることはできない・・・ミラですら、そう思った。
だが、シロコが色彩に触れる直前、虚空から現れたシロコ*テラーがシロコの腕を掴んで引き留めた。
おそらくは、アトラ・ハシースの箱舟で何度も使用したワープだろう。プレナパテスもいないのにどうやって、という疑問は後回しでいい。
今はシロコ*テラーが援軍として現れたという事実の方が重要だ。
彼女がいれば、ミラが戦えずとも今のホシノと渡り合うことができる。
・・・だが、それでミラ自身が納得できるかは別の話だ。
(この目で見て、わかった。たぶん、あれは
確証と言えるようなものは、一つとしてない。
だが、神秘を捉える自身の眼が、色彩を制御できるものとして認識していた。
感覚のままに右手を上げれば、それを察知したかのように色彩が目の前へと転移してきた。
「そうだ・・・こっちにこい・・・」
ミラの意思に従うように、色彩が徐々に接近してくる。
色彩が近づくほどに、ミラの眼に色彩の情報が流れ込んでくる。
あるいは光の根元、あるいは空洞の奥、あるいはそれら全ての先にあるものを。
だが、それで得た情報などミラにとってどうでもよく、知ったことではない。
認識し制御下に置いたすべてを、ミラは現状の打破のために用いる。
「
ミラの手が色彩に触れた、次の瞬間。
巨大な稲妻がミラと色彩を飲み込んだ。
ホシノが放っているものに引けを取らないほどの熱波に、反射的に顔を覆う。
轟音と雷光は一瞬。
まさしく落雷のごとき刹那の中で、先生たちが雷が落ちた場所に視線を向けると、いつの間にか起き上がっているミラの姿があった。
だが、その見た目は大きく変わっている。
翼爪や角はより大きく、鋭くなっており、その先端はわずかに青みがかっている。
何より、ミラの額からは一本の角を模した青いヘイローが新たに浮かんでいた。
普通に考えれば“色彩”と接触したことで“恐怖”に反転したと考えられるが、それにしては明らかに纏う雰囲気が違う。
かつて対峙したシロコ*テラーや目の前にいるホシノ*テラーのような圧迫感はなく、だが目を離せないほどの存在感を放っている。
敢えて言うのであれば、あれが“神々しい”ということなのだろう。
「心配かけてごめんね。でもまぁ、私は大丈夫だから。いろんな意味で」
口を開いたミラから出た言葉は、不安定さとは無縁のテラー化したとは思えないほどに落ち着いたものだった。
ミラの身に何が起こったのか、シッテムの箱でシロコ*テラーを呼び寄せた先生にも見当がつかないが、それでも今のミラが自分達の味方であるという点に関しては断言できる。
いろいろと言いたいことも聞きたいこともあるが、それは全てが終わった後だ。
「・・・あなたは、暁ミラで合ってる?」
「そうだよ。まさか、こうして一緒に戦うことになるなんてね」
シロコ*テラーの問いかけに、ミラは軽く肩をすくめる。
ミラの変化はシロコ*テラーにとっても未知のものだが、都合のいいパワーアップであることに違いはない。
それぞれの役目を果たすべく、シロコ*テラーとミラは互いに一瞥してから戦うべき相手へと向き合った
「ホシノちゃんは任せるよ・・・私は、あっちの相手をするから」
「・・・ん」
Fの覚醒仕様は出さないと言ったな?あれは嘘だ。
いやまぁ、当初は本当に出す予定はなかったんですけど、アビドス3章を見て「この展開は出すしかねぇ!」ってなってしまいました。
こっちの方が面白いと思ったので後悔はしてません。
・・・思えば、投稿開始から2年以上、アビドス3章から1年半近くも経ってるんですねぇ。
振り返った時の時間の流れが早いこと早いこと。
というわけで、ホシノ*テラーvsシロコ*テラー & セトの憤怒vs覚醒ミラの大乱闘、はーじまーるよー。
これ結局世界が滅んだりしません?
ちなみに、『なんで“色彩”に触れてるのに反転しとらんの?』という質問に関してですが、設定資料のネタバレに引っ掛かりますので、あまり触れない方針にしようかなと。
強いて言うなら、白ミラと黒ミラが別人であることが関係しているとだけ。